大町桂月編纂 日本国民性の解剖 東京 日本書院発行
序
己れを知る者は賢也。世に処して誤らず。これ一個人として然るが、一国民として発展を遂ぐるにも、亦此理に洩れむや。昔漢学全盛の時代には、自ら東夷と称したる大儒もありき。明治以後は一転して、欧米の後塵を拝し、人種上到底比較にならずと思ひたるものも少なからざりき。然るに一躍して支那に勝ち、再躍して露国に勝つに及び、俄に自惚れ出して、世界一等国と自称するに至れり。何ぞ自信なきの甚しきや。一個人としても、一国民としても、自惚れては必ず堕落す。さればとて自ら見限りては滅亡の外なし。苟くも発展を遂げむには、自信なかるべからず。而して博く愛し、深く考へて、始めて確乎たる自信あり。余茲に日本を解剖したる諸名家の言論を集め、我国民をして国民としての確乎たる自信を有せしめむとす。されど己れを知るのみにては不可也。己れを知ると共に、他を知りて始めて完全なる発達を遂ぐるを得べし。固より此書のみにて十分なりとには非ず。此書に先づ己れを知れ。なほ進んで他を知れ。少くとも英米独仏を知れ。此書はその先づ己れを知るの資に供せむとする也。
大 町 桂 月
日本国民性の解剖
目 次
| 一 | 日本の研究 | 侯爵 | 大隈重信 |
| 二 | 日本人の性質 | 文学博士 | 三宅雪嶺 |
| 三 | 国民性と櫻花 | 伯爵 | 徳川達孝 |
| 四 | 日本人の特色 | 海軍中将 | 佐藤鐵太郎 |
| 五 | 日本趣味の特長 | 法学博士 | 河上肇 |
| 六 | 日人の婦人と欧米の婦人 | 文学博士 | 幣原坦 |
| 七 | 比類なき国風 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 八 | 簡易生活に堪ふる国民 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 九 | 日本民族の特性 | 佐藤正 | |
| 十 | 日本の福の神とビリケン | 前田不二三 | |
| 一一 | 國體の精華と民族の特質 | 法学博士 | 穂積八束 |
| 一二 | 国民一般の特性 | 侯爵 | 大隈重信 |
| 一三 | 健忘性の国民 | 文学博士 | 建部遯吾 |
| 一四 | 美点に程度あり | 文学博士 | 三宅雪嶺 |
| 一五 | 犠牲的精神 | 法学博士 | 志田ナ太郎 |
| 一六 | 準備なき国民 | 男爵 | 牧野伸顕 |
| 一七 | 愛国的精神と志士の心理 | ||
| 一八 | 西洋の家屋と日本の家屋 | 理学博士 | 遠藤吉三郎 |
| 一九 | 西洋の器具と日本の器具 | 理学博士 | 遠藤吉三郎 |
| 二〇 | 日本民族の地位 | 佐藤正 | |
| 二一 | 日本人は悲観的民族なるか | 佐藤正 | |
| 二二 | 日 本 魂 | ||
| 二三 | 日本人の欠点 | 杉浦重剛 | |
| 二四 | 小胆な日本人 | 嘉納治五郎 | |
| 二五 | 新聞紙の欠点 | 男爵 | 後藤新平 |
| 二六 | 政治家の大欠点 | 杉浦重剛 | |
| 二七 | 武士道 | 文学博士 | 藤岡作太郎 |
| 二八 | 進取的国民としての一大弱点 | 侯爵 | 大隈重信 |
| 二九 | 日本の酒と欧米の酒 | 前田不二三 | |
| 三〇 | 公の礼儀を忘れた国民 | 理学博士 | 穂積陳重 |
| 三一 | 日本の強み | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 三二 | 優劣は時の問題 | 文学博士 | 三宅雪嶺 |
| 三三 | 虚言は日本の宝 | 哲学博士 | 元田作之進 |
| 三四 | 洋服と日本服 | 理学博士 | 遠藤吉三郎 |
| 三五 | 同化力を善用する国民 | 侯爵 | 大隈重信 |
| 三六 | 悪口を言ふ風習 | 哲学博士 | 元田作之進 |
| 三七 | 日本の長所短所 | 杉浦重剛 | |
| 三八 | 日本特有の文化 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 三九 | 潔癖なる国民 | 哲学博士 | 元田作之進 |
| 四〇 | 日本食と洋食 | 理学博士 | 遠藤吉三郎 |
| 四一 | 自国卑下の悪風 | 文学士 | 野上俊夫 |
| 四二 | 日傘と洋傘 | 前田不二三 | |
| 四三 | 自然文学と国民性 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 四四 | 遠大なる志望なき国民 | 代議士 | 古谷久綱 |
| 四五 | 日本人の美化力 | 哲学博士 | 元田作之進 |
| 四六 | 日本の家族制度 | ||
| 四七 | 日本人の簡易生活 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 四八 | 日本人の子煩悩 | 哲学博士 | 元田作之進 |
| 四九 | 農村生活の美点 | 侯爵 | 大隈重信 |
| 五〇 | 手袋と帽子 | 前田不二三 | |
| 五一 | 欧米の酒手と日本の茶代 | 文学士 | 小林照朗 |
| 五二 | 祖先崇拝の国民性 | 文学士 | 笹川臨風 |
| 五三 | 日本人の自然美観 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 五四 | 日本人の風雅 | 貴族院議員 | 徳富蘇峯 |
| 五五 | 男性的なる日本の風景 | 農商務大臣 | 仲小路廉 |
| 五六 | 国民性と海洋趣味 | 文学博士 | 幸田露伴 |
| 五七 | 日本のお香と西洋の香水 | 前田不二三 | |
| 五八 | 植民的発展を忘れた国民 | 法学博士 | 松岡均平 |
| 五九 | 茶の趣味と日本独特の渋み | 前田不二三 | |
| 六〇 | 雛祭と端午 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 六一 | 日本の剃刀と西洋の剃刀 | 前田不二三 | |
| 六二 | 同情心なき国民 | 哲学博士 | 元田作之進 |
| 六三 | 人口率の優秀 | 内閣統計官 | 二階堂保則 |
| 六四 | 産業界の欠陥 | 農商務大臣 | 仲小路廉 |
| 六五 | 経済上の欠乏 | 法学博士 | 神戸正雄 |
| 六六 | 不完全なる交通機関 | 法学博士 | 小林丑三郎 |
| 六七 | 得意の航海業 | 法学博士 | 神戸正雄 |
| 六八 | 科学研究を忽せにする工業 | 工学博士 | 阪田貞一 |
| 六九 | 素養ある技術家の欠乏 | 工学博士 | 阪田貞一 |
| 七〇 | 外人の日本趣味と日本人の外国趣味 | 理学博士 | 遠藤吉三郎 |
| 七一 | 日本に対する世界思想の変化 | 侯爵 | 大隈重信 |
| 七二 | 英人の観たる日本武士道 | ロンドンタイムス | |
| 七三 | ドイツの日本観と我が国民の皇室観念 | 文学博士 | 芳賀矢一 |
| 七四 | 日本人の衣食住 | 法学博士 | 津村秀松 |
| 日本人研究について | 大町桂月 | |
| 日本人の一大欠点 | 大町桂月 |
| 大正十五年三月十八日印 刷 大正十五年三月二十日発 行 (日本国民性の解剖) 大正十五年三月廿三日再版印刷発行 金壱圓五拾銭 大正十五年三月三十日三版印刷発行 |
|||
![]() |
編者 大月 桂月 | ||
| 東京市麹町区麹町三丁目二番地 編者兼発行者 福田滋次郎 |
|||
| 東京市神田区西小川町二丁目六番地 印刷者 青木音吉 |
|||
| 東京市神田区西小川町二丁目六番地 大成社 |
|||
| 発行所 | 東京市麹町区三丁目二番地 電話四谷五八六三、振替一二〇八六番 |
日本書院 | |
| 日 本 書 院 歴 史 書 類 | |||
| 矢荻富橘著 | 支那馬賊裏面史 | 二 圓 | 送料一九 |
| 樋口麗陽著 | 大日本裏面史 | 一 圓 | 同 一五 |
| 同 | 大日本国辱史 | 一圓五十銭 | 同 一五 |
| 野中春洋著 | 世界大革命史 | 一圓五十銭 | 同 一七 |
| 藤森花影著 | 幕末明治裏面史 | 一 圓 | 同 一五 |
| 町田柳塘著 | 滑稽日本史 | 一圓六十銭 | 同 一五 |
| 樋口麗陽著 | 日本危機米禍来る | 一圓五十銭 | 同 一五 |
| 井上昌基著 | 新戦術の研究 | 一圓五十銭 | 同 一三 |
| 水谷次郎著 | 日本英雄史蹟 全四冊 | 五圓四十銭 | 同 二〇 |
| 樋口麗陽著 | 嗚呼日本未来記 | 一圓五十銭 | 同 一七 |