二〇日本民族の地位佐藤正

 古代に於て十日を要したる距離は一日となり、時間的に益々縮小せられたる渾球は、今や月余にして一週するを得るの時期に達せり。若し現在大飛行試験中なる飛行機にして真に好結果を得るに至らば、其の結果は益々縮小せらるゝに至るべく、
彼(か)の十有余年に亙りて滞陣せるが如き持久戦は益々減じ、減に先年ありし数十万の
大軍を接して相搏つの日露戦役も僅(わづか)に一箇年の戦(たゝかひ)のみ。日と露と其の首都相離る数千里、然も其の戦ふや電火と行き石火と行きて到底古代人の夢想だも為し能はざる所、若し夫れ武器の鋭尚ほ且つ進み、交通機関尚一層進歩の域に至らば、恐らくは現代人の予想し能はざるの事実を見るに到るげきなり。此の事実は軈(やが)て吾人をして、過去数十年を費して進歩し発達し来りたる状態は将来に於ては其の数分の一を以て成就し得べく、其の時間的速度に於ては、到底過去の事実を以ては行ひ能はざる進歩を見るべきことを予想し得べきなり。

 

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