第四五〇・四五一号(昭二〇・七・二)
沖縄決戦は何を訓へたか 大本営報道部
戦時緊急措置法について
義勇兵役問答
情報局制定「国民義勇隊の歌」
最近の預貯金、保険の心得
義勇兵役法問答
光栄燦たる義勇兵
問 現行「兵役法」の他に「義勇兵役法」を必要とするやうになつたのは何故ですか。
答 皇國の隆替を決すべき大東亜戦争の現段階に即応して、真に一億国民を挙げて光栄ある 天皇親率の軍隊に編入し、各人その総力を最大限に発揮し、皇土防衛のための直接決戦参与、その他運輸、通信、築城、軍需品の生産補給、修理等の任務に服させる必要があり、そのためには現在の兵役法による十七歳乃至四十五歳の男子以外の帝国臣民中、その大部に対し、大東亜戦争の間の臨時立法として、新たな兵役義務を課する必要が生じたからです。
問 現行の「兵役法」とどんな点が特に違ふのですか。
答 主な相違点は次ぎの諸点です。
1
義勇兵役法第一条に「大東亜戦争ニ際シ」とあるやうに義勇兵役は皇國隆替を決すべき大東亜戦争に際しての特例であること
2
義勇兵役に服すべきものは老少の男子のみならず女子を含んでいること
3
六年の懲役又は禁錮以上の刑に処せられたる者でも刑の執行を終り又は執行を受くることなきに至りたるときは義勇兵役に服し得ること
4
義勇召集の方法が兵役法による召集に比し簡単迅速であること
5 義勇兵役法第七条の罰則が兵役法に比し軽いこと
6
右の外、兵役法以外の例へば給与、服制、刑罰等の点において一般軍人とは若干の差異が設けられてゐること
などです。
問 年齢制限外の者は志願することは出来ませんか
答 志願できます。国民義勇隊に加入されてゐる人で、年齢制限外の人は、男女を問はず奮つて志願されるやう望んでゐます。その方法は現在属してゐる国民義勇隊の幹部の人で、義勇召集担当者になる人があるから、その人に口頭で届け出れば良いわけです
義勇兵の任務
問 義勇兵の主な仕事は具体的にはどんなことですか、特に女子の場合は・・・
答 敵の本土進攻、その他空輸部隊の攻撃に当つては、直接郷土死守のため敢闘することは勿論ですが、一般作戦軍の後方において、現在の職場において軍需品の製造、補給、通信、輸送に挺身し、その他飛行場の復旧、陣地の構築等に任ずる事が多いと思ひます。 女子はその特性に応じ、右に掲げた総力戦的任務その他救護、看護等に任ずるのです。
問 それでは義勇兵の指揮者にはどういふ人がなるのですか、また訓練といへば竹槍とか銃剣術を想像する人が多いと思ひますが、その点は。
答 国民義勇隊の指揮者になつてゐる人が、そのまゝ国民義勇戦闘隊の指揮者となるのが建前です。
また訓練は軍人としての精神訓練、特にその職任を決死完遂し、万一の場合に臨んではその郷土を死守する精神を涵養することを第一義とし、現在の職任完遂に障碍を及ぼさない範囲内で零細な時間を活用し、直接戦闘に必要な訓練を行ふのですが、これも男女の別、与へられる任務に適応した課目について行ふのであつて、一律に竹槍や銃剣訓練を行ふことはありません。
問 召集の時、手心が加へられる場合があります。
答 次のやうな場合は予じめ召集を免除されます。
一、
疾病その他身体または精神の異常に因り、義勇召集に応じ難い者及びその看護または附添のため必要と認めた者
二、 法令により拘禁中の者
三、 学齢以下の幼児の母親にして必要と認める者
四、
妊婦産婦及びその看護または附添のため必要と認める者等
なほ次ぎのやうな場合は一時召集を免解除されます。
一、 本人疾病その他身体または精神の異常を生じた場合
二、
家族の死亡、疾病等のため後始末または看護のため必要ある場合
三、 空襲被害その他天災地震等に際会し已むを得ざる場合
四、
官公吏または法令に定むる議員等にして職務遂行上必要ある場合
義勇兵の組織
問 義勇兵の官職階級は
答 官は設けられずに一律に兵ですが、職階を設けてて幹部と兵に区分し、幹部の中には佐官待遇、尉官待遇、下士官待遇の人が出来ます。
右の職階には次ぎのやうな種類があります。
鉄道(通信)義勇戦闘隊司令 同副司令 同司令補
聯合義勇戦闘隊長 同副隊長 同隊長補
義勇戦闘隊長 同副隊長 同隊長補
義勇戦闘戦隊長 同副戦隊長 同戦隊長補
義勇戦闘区隊長 同副区隊長 同区隊長補
義勇戦闘分隊長 同副分隊長 同分隊長補
問 徴用されてゐる産業戦士や女子挺身隊員が義勇召集された場合の法的関係はどうなりますか。
答 義勇兵役法は国家総動員法に定むる徴用によつて妨げられることは無いのですから、徴用されてゐる産業戦士も当然義勇召集に応じなければならないのです。
しかし義勇召集されたために直ぐに徴用を解除されるといふことはありません。
問 召集された者は家庭から通へないのですか。
答 状況によつては家庭から通へることもあります。
義勇兵の恩典
問 召集された学徒は陸海軍の学校、上級学校に志願し、また女子は結婚することが出来ませんか。
答 陸海軍諸学校その他上級学校の志願、その他女子の結婚は別に制限がありません。しかし義勇召集を必要とするやうな情勢下にあつては事実上、上級学校の受験や結婚等は困難になることもあると思はれます。
問 給料、俸給はどこから支給されるのですか。
答 一般軍人とは違ひ、義勇兵としての俸給、給料、糧食は支給されません。義勇召集前に官庁、会社等から受けてゐた俸給、給料は停止されることはありませんが、しかし所属する戦闘隊が郷土を離れて行動する時は、糧食は官給とし、また本人の召集により家族が生活に困る場合は手当を支給されます。
問 本人が戦病死し、或ひは負傷した場合、一般軍人と同様に取扱はれるのですか。
答 治療、恩典、靖国神社合祀等は一般軍人と同様に扱はれます。
(陸軍省)