第三六五号(昭一八・一〇・一三)
学徒の徴集問答 陸 軍 省
南洋群島・南方諸地域における
在外徴集延期制度の撤廃等について 陸 軍 省
勝ち抜くための節電 逓 信 省
海陸輸送の一貫的強化 鉄 道 省
徴兵制実施と戦ふ台湾の実情
フィリピン独立の沿革
学徒の徴集問答 陸軍省
なぜ撤廃されたか
問 今般時局の要請に応へ、学徒の徴集延期の恩典が撤廃されましたが、それについて、まづ撤廃の理由からお話願ひたいと思ひます。
答 最近の時局の緊迫化に伴つて、こゝにます/\必勝の態勢を強化するために、軍としては皇軍の幹部要員、つまり陸海軍、特に航空の幹部要員を充足する必要があることと、併せて、学徒諸君の盡忠報國の熱誠に応へて、最も素質の優秀な、且つ素養の高い学徒諸君を今日の決戦に直ちに役立たせるやうにし、それによつて、皇軍の決戦完遂の力をいよ/\強化して、必勝の確信を固めてゆかうといふ意味から、徴集延期制度が全面的に撤廃されたわけです。
問 しかしそれについては、特例があるやうですが・・・
答 さうです。それはいま直ちに全部の学徒が軍隊に入つて、軍の戦力を強化すると申しても、軍としては、或ひは軍医も必要であれば、また技術関係の者も必要なのです。ところが、現在修学中の学徒諸君の技能は、明日から直ぐに軍医にするとか、軍の期待するところの技術将校とするためには、なほしばらく修学を継続させる必要のあるものがあるので、こゝに一部の特例を設けて入営延期といふ制度を設けたわけです。
問 さうしますと、従来の徴集延期と今度の入営延期の性質は異つてゐるのですか。
答 今度の制度で設けられた入営延期と従来の徴集延期とは、形の上においては同様で依然として学生の服を着て、今まで通学してゐた学校に今まで通り通ふといふことになるわけですが、しかし、その精神においては根本的な差違があるわけです。
それは今までの徴集延期といふのは、本人が志願して入つたその学校で完全に修学してゆくために、願ひによつて徴集されることを延ばされた制度ですが、今度の入営延期はさうではなく、つまり、本人が願ひ出るのでなく、国家が必要とする科目、必要とする学生について、軍に直ちに編入できる状態に置きながら勉学を継続させるといふ性質のものです。
即ち、これまでのやうに徴集を延期されてゐるのではないから、徴兵検査を受けて、いつでも軍に入り得る、時局の急転によつては、或ひは修学中でも直ちに軍に入り得る、さういふ状態において国家の要求するところの研究を継続する、といふ性質のものであるわけです。
それ故、非常に国家性が高度化されたわけで、これが従来の徴集延期と今度の入営延期との根本的な差違なのです。従つて、学徒諸君としては、入営延期をされる者も、召されて第一線に立つてゐる者と全然同じ気持で、いはば軍服を着て、軍の学校に入つて、次ぎに課せられるべき重大な任務を完遂するために、真剣な研究をするのだといふ気持でやらなければならないと思ひます。
入営を延期されるもの
問 お話でよく分りましたが、それでは軍の必要とする科目、つまり入営を延期されるものとは、具体的にはどんなものでせうか。
答 入営を延期されるものは、いま申しましたやうに、軍事上の必要に基づくものですから、
第一は理工科系統のもの(大学の理学部、工学部、大学の予科及び高等学校の理科、専門学校のうち工業に関する学科を教授してゐるもの)
第二は医科のもの(大学の医学部、医科の専門学校、薬学及び歯科の必要なものを含む)
第三は農科系統の一部(農芸化学、農林化学、畜産関係のもの)
第四は高等水産学校の船舶の運航に関する技術関係のもの
第五は普通教育の教員の養成に必要なもの(文理科大学、高等師範学校、師範学校、臨時教員養成所、実業教員養成所、青年学校教員養成所などのもの)
といつたものです。
しかしこの中でも必要な者は、随時軍に編入されることもありますし、またこれ以外のものでも特に必要なものは、入営を延期されるものもあります。
問 さうすると、これ等の科目や学校が、特に他の科目より重要であるからといふわけでせうか。
答 これ等の学校や科目を決めた趣旨といふものは、決して科目の軽重を考へて決められたわけではありません。国家の総力戦を完遂してゆくためには、或ひは思想戦といふことも必要で、さうすればその研究に従事する文科系統の者も、極めて重要な地位を占めることは、これは申すまでもないことです。
たゞ現在理工科系統のものは、