第三六三号(昭一八・九・二九)
官民に告ぐ 内閣総理大臣 東条英機
(国内態勢強化方策)
学校防空の重点
鳥取震災の教訓を生かせ
防空質疑応答 (一)
防空資材を克服した新工夫(頼母しい戦争生活例)
第二国民兵の規則改正 陸軍省兵備課
決戦下の軍人援護 軍事保護院
飛行機の構造(一) (航空常識講座第二回) 航 空 局
聖戦開始以来、政府は戦争遂行のため必要なる各般の施策
を実行し来りたるが、内外の現時局に鑑み、雄渾活溌なる作戦
に即応し、左記方策を断行して一層国内態勢の強化を図り、
以て聖戦目的を完遂戦とす。
国内態勢強化方策
第一、 国内態勢強化の目標を左の諸点に置く。
一、官民を挙げて常に今次聖戦の本義に徹せしむると共に、その
容易ならざる大業なることを覚悟せしめ、愈々必勝の信念を以
て、不屈不撓、盡忠報國の誠を致さしむ。
二、国力を挙げて軍需生産の急速増強を図り、特に航空戦力の躍
進的拡充を図る。
三、日満を通ずる食糧の絶対的自給態勢を確立す。
四、国内防衛態勢の徹底強化を図る。
第二、 国内態勢強化のため特に取るべき方途左の如し。
一、行政運営の決戦化を図る。
これがため、
(イ) 政務執行の敏速化の徹底を図る。
(ロ) 中央各庁業務を徹底的に地方庁に委譲すると共に、地方
行政の簡素敏活を図り、なほ地方行政協議会の機能を強化す。
(ハ) 予算の徹底的単純化を図る。
(ニ) 官庁事務の徹底的簡素化、なかんづく許可認可事項の整
理、特異重要企業に対する書類監督制の廃止、監督系統の簡易
化、決戦に不必要なる行政事務の廃止を徹底的に行ふ。
(ホ) 行政機構を整理し、その徹底的簡素化を図ると共に、決
戦行政遂行の態勢を整へしむ。
(ヘ) 作業庁の施設並びに人員の能率の徹底向上を図る。
(ト) 前各号に関連し、再び官庁人員の大幅縮減を行ふ。
(チ) 重要生産に対する軍、官発注の統一を図る。
(リ) 一層官紀の粛正を図り、これがため必要なる措置を講ず。
(ヌ) 官庁執務の決戦化を図る。
(註) 時間の絶対的励行、土用半休制の廃止を行ひ、且つ昼
夜を通じ、また休日といへども官庁の機能をして断続なく
運航せしむる如く措置す。
二、国民動員の徹底を図る。
これがため、
(イ) 一般徴集猶予を停止し、理工科系統の学生に対し、入営
延期の制を設く。
理工科系統の学校の整備拡充を図ると共に、法文科系統の大
学専門学校の統合整理を行ふ。
普通教育のために必要なる教員の確保を図ると共に、その採
用については広く適材を得るの措置を講ず。
(ロ) 徴集徴用の範囲を拡大普遍化し、特殊技術を掌る者以外
の除外例を撤廃す。
(ハ) 女子の動員を強化す。
(ニ) 速かに勤労配置の適正を図る。
(ホ) 定年制を撤廃する等、各職域における年齢の制限を撤廃
し、高齢者の活用を図る。
(ヘ) 第二、八、九項に基づく官庁等の整理によりて生ずると
ころの人員は、綜合的計画の下に、悉くこれを戦争遂行に参
与せしむ。
(ト) 義務教育八年制を引き続き延期す。
三、国内防衛態勢の徹底強化のため、特に左の方途をとる。
(イ) 国内防衛行政の統一的運営を図る。
(ロ) 国家重要の地区、軍事上重要なる施設並びに軍事上重要
なる工場鉱山に対し極力防空を強化す。
(ハ) 帝都及び重要都市の防衛を全くするために、これ等の都
市における官庁工場、家屋等に対し必要なる整理を行ふ。
これがため官庁は率先して措置を講ず。細目は別紙(次項)の
如し。公共団体、各種外郭団体、各種統制機関、統制会社等は
官庁に準じ、所要の整理を行ふものとす。
(ニ) 前号に関連し、速かに官庁その他の機構並びに人員の地
方分散の総合的計画を樹立実行す。
(ホ) 民間の企業整備を促進し、官庁の整理に準じて、帝都及
び重要都市における家屋店舗の整理を行ふ。
四、重要企業の国家性を経営上更に明確ならしめ、生産責任制を
確立せしむる如く諸般の措置を講ず。
五、海陸輸送の一貫的強化を図る。
六、租税及び国民貯蓄を更に強化し、徹底的に資金の戦力集中を
図り、その效果を最大限に発揮せしむ。
七、価格及び配給制度の徹底的簡素化を図る。
八、各種外郭団体は官庁に準じこれを整理し、及び業務の運営に
徹底的刷新を図る。
九、各種統制機関並びに統制会社等、生産第二戦部面に対し、徹
底的整理を行ふと共に、その業務及び事務につき、官庁に準じ
て徹底的刷新を行ひ、その人員を縮減す。
一、官設工場については、その業務を地方工場に移管し、これ
を廃止す。
二、方策第二項の二の(イ)号の措置に即応し、学校校舎の整理
を行ふ。
三、官庁事務の徹底簡素化に即応し、官庁庁舎の整理を行ふ。
四、帝都並びに重要都市に存在することを必要とせざる各種官
庁施設の地方移転を行ひ、その官舎を整理す。
これ等に関連して官庁庁舎の再配置を行ひ、防空設備良好な
るものに集中し、脆弱なる庁舎は、これを撤去疎開す。