国民精神の統一
      帝国憲法、教育勅語、及び日本主義

 帝国憲法、教育勅語、及び日本主義。----吾人は是を以て明治思想史上の三大事実となす。帝国憲法は国法の大綱を示し、教育勅語は教育の針路を明にし、日本主義は国民道徳の本領を指示するを主眼とす。若し夫れ大日本帝国の國體民性に基きて国民精神の統一を目的とするに至りては、三者其の軌を一にす。
 つら/\惟(おもんみ)れば、大政維新の際、内外事態の激変につれて国論民心ともに定まらず、世は混沌の中に自然の戌行を待てる有様なりしが、幸に 聖天子上(かみ)にましまして賢良輔弼の翼賛を納れさせられ、天佑を保全し、大業を克復し、茲に新政の大本、百代の鴻謨を立てさせられ、天下の人心を率ゐて嚮ふ所を一にせらわたるは、洵に天地の祐沢、国家の慶事とこそ称すべけれ。畏れ多くも天神地祗を祭り、億兆臣民に誓はせ給ひしかの明治元年三月の五事の御誓文は、即ち是れ帝国百代の国是にして、明治思想の根源なり。
 然れども事物の発達には自然の順序あり、一正一反、さながら振子の

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