日本前途の国是は「国粋保存旨義」に撰定せざるべからず


人類は安楽を欲する動物なり、然れば労せんよりは寧ろ逸せんことを希
ひ、勤カよりは閑佚を嘉みし、辛酸よりは甘甜を嗜み、「楚水呉山行路
難」よりは「如髪大道到長安」の途程を取らんとするは、是れ人情に非
ずや、是れ人類の通性に非ずや、然れども安楽を博せんとせば利益を需
めざる可からず、利益を需めんとせば競争せざる可からず、競争せんと
せば勤労せざる可からず、然ればにや彼の十字街頭に奔走する者あり、
南畝石田に耕す者あり、額に汗して営々役々する者ありて、所謂利益な
る者は人類社会の求心力となるは、抑も所因なしとせざるなり、然り安
楽を博せんとするを以て利益を需むるものにしあれば、遠く人情の本源
を探求すれば、最少の勤労を以て最大の利益を博せんとするものならん、
最少の勤労を以て最大の利益を博せんとせば、各自が最特に長ずる処の
ものを撰択し、是を以て各自が専務の職業と為さゝる可からず、是に於
てか人類社会に所謂分業なる者創起し、分業創起して、而して交易なる
者創起せり
人々個々既に各自最特の長処あるが如く、邦国個々も亦最特の長処無か
る可からず
、彼英国は土壌

 

 

 

瘡痩なるも、其地形たる四囲皆な煙披茫々た
る海水を以て頓遠するを以て、完然たる商業の図と化成し、其図民の問
に、頓特殊なる国粋を胚胎蜃育せしめたり、彿人は南方温暖帯裡、花吹
ひ鳥鳴くの間に園を建つるを以て、一種特挽なる囲粋を胚胎饅育せしめ
たり、而して這般の所謂園粋なる者は所在園外物の感化に邁應して、障
約の間に胚胎饅育したる者なれば、語を易へて謂へは、這般は箕に天地
自然の至利至益なる虞を利用し、而して教生成長じたる者ならん
、、、、
人々個々の問に各自が最特の長虞あるを以て、所謂分業なる者起ること
、、、、、、
なれば、邦園個々も亦最特の長虞を以て分業せざる可からざるや知るぺ

し、借問す邦囲個々が最特の長虞とは如何、日く圃粋是れなり、眈に然
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り分業にして果して経済世界の眞理なり交易の起源なりとせば、「園粋
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保存」は郎ち経済世界の眞理に非ずして何んぞ、交易の起源に非ずして
、、、、、、、、
何んぞ、利益の本流に非ずして何んぞ、眈に経済利益の本源本流たれば
、、、、
印ち「園粋保存旨義」は賓に萬盲不朽の大原理なりと云ふ可き哉、眈に
然り然らば則ち予輩が居常大馨疾呼して「圃粋保存」の大旨義を奨説主
張する所因のものは、登に夫れ畢に彼の踏舞、慣装舞曾を借硯したるよ
り由衆したるものならんや、何んぞ彼の「貴族的急進開化」と「塗抹旨
義」の反動に因緑して這般の言辞を吐出する者ならんや、聞説らく彼の
「日本分子打破論者」は自由貿易旨義を主張する者なり、平等旨義を懐
抱する者なりと、然り而して「園粋保存旨義」に博浪沙の一撃を試みん
とする者は、最も何んの理由たるを知らざる也、「囲粋保存旨義」を打
破せんとせば、印ち分業の大原理を打破せんとする者なり、分業の大原
理を打破せんとせば印ち自由貿易旨義、苧等旨義を打破せんとする者な
。。。
り、何んぞ自家撞着の夫れ甚しきや、予輩は「閥粋保存」の至理至義な
。。
るを確信す、故に平等旨義を懐抱する者なり、故に調和旨義を懐抱する
。。。
者なり、故に改革主義を懐抱する者なり

論じ去り論し衆りて此虞に到れば、予輩は侶に「園粋保存」の経済利益

的なるを確知する者なり、眈に経済利益的なれば、印ち這般は賓に字内
。。
大勢の正流に順通する者なるを徽証すぺし、然り而して彼の「塗抹旨
。。。。。。。8。
義」と「日本分子打破旨義」とは経済利益的の本源本流に非ぎるを以で、
。。。。
日本最大敷の民人が最大季編は賓に這般の南旨義より湧出する者に非ざ

るや夫れ明か也、然らば則ち「塗抹旨義」と「日本分子打破旨義」とは
日本圃民より封すれば、眞個に無用の長大物と云ふも敢て誇大の言辞に
非ざるべき耶、香な彼等南旨義にして獣々屏息すれば夫れ可なり、然れ
ども彼等動もすれば瓢ち「園粋保存旨義」に抵髄衝突するの傾向あるを
以て、曹に無用の長大物のみならず、亦日本最多教民人が最大幸礪を湧
出する本漁本流を乾洞せんとする者なるを以て、萄も生命を日本囲土に
寄する者は、カの能ふ丈け及ぷ丈け之が排撃掃蕩の事に周旋せさるぺか
らず、蹴起せょ、三千八百萬の兄弟姉妹よ、卿等も亦日本園土に生命を
寄する者に非ずや、然り然らば鮒ち何んぞ自から挺進一皆を揮ひて、這
般雨旨義を日本囲土外に放逐騒除するの方策を講究せざるや、呼嗟卿等
が平生讃む虞は果して何んの書ぞ、卿等か李素喰む虞は果して何んの乗

呼嗟日本官代の事業は何ぞ其れ多々錯綜なる哉、外面を虚飾塗抹するの
「塗抹旨義」あり、日本の蕾分子を悉皆打破せんとするの「日本分子打
破旨義」あり、「折衷此較旨義」あり、「圃粋保存旨義」あり、「日本蕾

分子維持旨義」あり、然れは這般各挽の分子は個々相互に抵濁鮎齢しっ

あるを以て、日本園家の馬めに一定の連動を作為せず、為めに彼の哀

々たる三千八百萬の蒼生は杢しく這般各貌の旨義が勝敗を観望して、従

ふ虞を知らず、彼此奔走して徒らに園力を疲らし、殆んと中流に権を失

ひ暗夜に燈を滅したるもの如く、何を以て進まん乎、何を以て守らん

乎、眞個に各自が安堵する個虞を態見する能はざるなり、何ぞ夫れ哀憐

すぺきや、倍問す其病は何許より由衆する者ぞ、日く一定遠大の園是が
。。
確立せざる印ち是れ也、願ふに官代の多々錯綜せる日本紅合の状況は悉

く是れ西洋閲化の感化より由衆せる者なるを以て、「如何にして日本人
。。
民は這般西洋開化の感化を至利至益に應用すべきや」の問題も、亦予輩

が至大至急の注意を需用す可き一大研究に非ざるなきを得んや、甲は論
.

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して日く、西洋の開化を日本国へ輪入して日本圃の開化と南立せしめん
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とすと、然れとも予輩を以て之れを硯れば、這般南開化の分子は姶絡抵
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燭格闘して其問摩擦を生ずるのみにして、一定共同の運動を作為せず、
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縛た日本囲民の為めに不利不益なるは、予輩が多言暁言を要せざる虞な
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らん、且つ夫れ事々物々南岐に分別するを以て太だ経済的に非ざる事は、
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響へば是れ一人一個にして西洋服衣をも注文せざるぺからす、又た日本
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服衣をも注文せざるべからざるか如き不生産的なる者ならん、乙は靴ち
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論じて日く、西洋の開化を輸入し日本開化と抱合化合して、一種の開化
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を中問に掛起すぺしと、借間す此開化は果して強勃健全にして愈餞達し
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得ぺきや香や、予輩は賓に之が確答を為すに困しむなり、何となれば人
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種の太だ特殊なる者と相互に結婚して得たる虞の子孫は、生植力の甚だ
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薄弱なりと謂ふは、濁り多々の茸例あるのみならず、亦た今日腎家の唱
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造する虞なればなり、丙は日く、西洋開化の感化を以て日本在爽の嘗分
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子を打破し、悉く西洋的に攣化せしむ可しと、呼嗟這般一種の開化は果
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して日本人民の喜ふべきものなりや香や、這般は茸に生物寧、重寧、経
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済寧の原理に抵錮するものなるを以て、予輩は力を極めて之を排撃せん
。。
とするものなり、濁り「圃粋保存」の大旨義は郎ち西洋の開化を日本に
。。。
輪入するも之をして大樺を操らしめす、日本の開化を主とし西洋の開化
。。
を客となす者にして、語を易へて謂へば西洋の開化を輸入するも之をし

て日本的に同化せしむるものなれは、這般が濁り至理至義のみならず、

亦至利至益なるは予輩が農に暁々叙述する虞の如けんか、予輩は業眈に
〔塗抹主義」と「日本分子打破主義」とは原因結果の大法律か認許せさ
る虞にして、且つや生物寧の大法に背馳し、数理季の大則に達戻し、重
孝の大理に反封せる所以を叙述したりき、而て今や復た這般の雨主義か
至利至益ならざるを以て、日本最多敷の民人が最大辛頑を博取するの方

便に非ざることを微証したり、眈に然り「固粋保存」は天地自然の大法

律を至利至益に應用する者にしあれば、経済世界の大法律郎ち人類の性
。。。。。
情に恰好する者なるや明けし、印ち「圃粋保存」は祀合の大勢に順適す
。。。。。。。。。。
るものなるを以て、予輩は寮に日本前途の囲是を此虞に撰定せんことを

希望して措かざる也」
眈に然り予輩は「囲粋保存旨義」を以て日本前途の囲是を確定せんとす
る者也、然れ共如何せん彼の「塗抹旨義」と「日本分子打破圭義」の茎
泉は業眈に八十飴州到る虞に演充停播して、絶大の勢力を逗ふし、上下
貴購は畢りて這般南主義の感化に眩惑心酵しっあるを以て、予輩が眼
前今日に到り如何に孤憤するも、如何に大饗疾呼するも、業眈に時横に
晩る者の如く、縛た人をして王陽明が「不知日己過亭午、起向高棲撞
暁鐘」の句を吟詞するの感あらしむ、然れども「起向高棲撞暁鐘、伶多
昏睡正惜々、縦令日暮醍濁得、不信人間耳壷聾」なるを以て、這般が果
して磯に晩れたるや香やは問ふに由なく、奮然起ちて「圃粋保存」の大
義を絶叫する所以なり
覿よ彼の忌む可き怪むべき「塗抹旨義」は「日本分子打破旨義」と相携
へて、斯の美なる富士山下、琵琶湖畔、到る虞に横行揉蹄するに非ずや、
呼嗟三千八百萬の兄弟姉妹よ、卿等は資に日本の士女に非ずや、両て這
般を侍鋭しながら悟として厳みざる者は、日本士女として祉る虞なきや
香や、然れば斯秋に際し斯機に臨みては筍くも些の護園報圃の義気ある
ものは、相共に囲結して一大薫輿を組織し、切磋磨励して這般両薫輿を

日本囲外に放逐するの方策を講究せさる可からず、然り予輩は這般一大
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其輿を囲結せんとするも、是れに先ち漁め力の及ぶ丈け能ふ丈け「園粋
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保存主義」を日本囲中到る虞に演充俸播し、是を以て三千八百萬の兄弟
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姉妹が報囲の徳義心に訴へ、以て此旨義を個々の脳中に浸漸せしめんと

する者なり、然れば我「圃粋保存旨義」の薫輿は彼の烏散獣走するか如
き政篤汲の如くならしめず、彼の雲爛過眼、落花流水の如き政窯員の如
くならしめず、慣令四百里五百里の山河を践渉して到る虞に予輩か所論
を演説討議せざるも、慣令幾多の懇親合上に高談大論すること無きも、
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能く人々個々が精紳に閲入して、同気相求め同感相依るの瀬形的の一大

篤輿を囲結せんとする者なり、要するに我日本の時事は韓た頻繁にして、
観倉開殻の期限已に切迫して、憲法の蜃布も亦漸く近きにあらんとする
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を以て、窄皇亭八百苗の蒼生が安危隆替を負櫓す可き囲家の代議士に
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して、苗一にも彼の酒々たる「塗抹主義」若しくは「日本分子打破主
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義」の波瀾中に捲き込まるゝが如きものあれば、斯の堂々たる大日本囲
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の運命も、三千八百萬の蒼生が前途の位置も、亦責に何たるを知らざる

なり、呼嗟世上博愛の君子よ、予輩は言論を喜ぶ者に非らざるなり、「危
言買危綱」の彗口を詞んせざるものに非らざるなり、一身の利菩を耕知
せさる者に非ざるなり、然り而て自ら好みて身を挺んで、沼々たる世論
に抵培し、奮で「園粋保存」の大義を疾呼絶叫し、喜んで紛転の衝に首
り、以て百方董策し、鋭意大日本囲が普代の危急を救捧せんとする者は、
宣に犬れ徒爾ならんや、願ふに卿等も亦正理を愛する者なり、眈に然り
卿等にして果して正理を愛する者とせば、何んぞ起ち来りて以て「園粋
保存」の大義を庇輔賛巽せざるや、至誠の透ふる所日月と錐も猶ほ且貫
くぺし、卿等萱に何々か席躇せん哉、宣に何をか蹄躇せん哉
(明治二十一年五月三日「日本人」第三既)