陸海軍大臣と陸海軍参謀長・

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陸海軍参謀長たる国防及用兵の計量を掌k陸海軍の教育及訓練の事を
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監督し、大元帥に直隷し、唯幌の横務に参する者なり、故に此任に官る
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者の軍人たらざる可からざるや論なきのみ、之に反して陸海軍大臣は国
務大臣の一人として内閣員に列し、陸海軍の行政を掌る所の看たれば、
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 此の任に首る者は其の身分の何たるを問はず、一個の政事家たらざる可
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 からざるも亦た論なけん。
 参謀長たる既に純粋の軍人たるを要し、其職司とする所も亦純粋なる等
謀用兵の事に属す、故に囲防上の計董の如き、専ら兵略の得失に稽へ、
 其遺憾なきを期し、可香を献替すれば則ち足れり、『参謀部の計量前に
 は囲家の財政を見る可からず』との原則ある、畢責是れにこれ由るのみ、
 近くは軍備撰張に於て陸軍参謀次長が十二師囲を計蓋し、命は以て足ら
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 ずと潰し、更に幾師圃の新設を将来に企囲するが如き、吾人は寧ろ其の
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 事ふる所に忠なるを茅す可し、其の心術の如何の如きは暫らく之を問ふ
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ことを用ゐじ。
唯だ夫れ園は軍備の→のみを以て生存するものに非ず、内治の事あり、
外交の事あり、農工商の事あり、拓殖の事あり、教育の政あり、郵遽の
政あり、外は列園の形勢に察し、内は国力の程度に省み、善く其緩急を
計り、善く其軽重を較し、而して其の軍備を成飾し、国防の道を全くす
る、是れ陸海軍大臣の任務には非ずや、故に仮令参謀部長は濁人の所謂
『無限の軍備撰張計董』を建つるあるも、陸海軍大臣たる者は能く之を
制裁し、以て圃宜に合せしめざる可からず、之なければ園に陸海軍大臣
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の必要を見ず、而して我陸海軍大臣たる者は何時も常に参謀部長の下執
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事たるやの覿あり、斯くの如きは邁官なる国務大臣陸海軍大臣と謂ふを
得ん歎。蓋し我陸海軍大臣が何時も常に参謀部長の下執事となり、部長
の計量に封し、敢て或は支吾するあらず、唯々諾々として之が執奏者と
なるもの、其の由る所なしとせず、今の陸海軍たる其嘗初は久しく藩閥
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維持の道具たりしに外ならず、両軍の婿官たる由来薩長人士の墾断せし
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所なれば、大臣の資格を将官に限らん乎、薩長南閥は交る〈之を私門
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より出すの便あり、是に於てか強て両軍省に武官組織なる特制を設け、
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大臣たる者は婿官以外には之に任する能はざる事とせり、夫れ身軍人た
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れば軍備の損張を企望する固より人情の常たるなり、而して身将官たれ
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ば士卒の人望を得んと欲するも亦人情の常たるなり、今ま清官を以て大
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臣となり士卒の惹く企望する軍備携張の案に封す、之に従へば忽ち人望
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を収む可く、之に達へば直ちに人望を失ふ可し、斯かる場合に際合せん
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乎、一世の傑士に非ざる以上は、皆以て之に傭鵜す可し、今の大臣が参
謀長の下執事となる主として是れにこれ由らずばあらず。
耕する者ありていはく、陸海軍省は他の諸省と同しからず、其管掌する
所は皆軍事に直接の関係を有するが故に、之が大臣たる者は、身軍事の
経歴ある者に非ざれば、之を圭裁するを得ず、且つ身を軍人より起す者
に非ざれば、以て軍人を服するを得ず、次官以下に於ても亦然り、是れ
武官組織の己む可らざる所以なりと、若し此説に従へば農商工務大臣は
、身壌商工を経来りたる者ならざる可からず、返信大臣は親から郵便脚
 失敬造技師等を」履来りたる者ならざる可からず、其他の各省大臣に於て
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 も亦然らざるを得ざる可し、天下寧ろ此理あらんや。蓋し軍事の行政に
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専務の軍人を要するは其一部分に限れるのみ、若し其大臣をも軍人に非
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ざれば不可なりといはゞ、陸海軍参謀部長を以て直ちに大臣を兼ねしむ
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れば足れり、何ぞ放さらに大臣を特置するの要あらんや、又斯くの如く
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ならば、園に政事家なる者の必要なけん、彼の英彿両圃を見ずや、其の
園の陸海軍大臣たる者、必らずしも軍人に限らず、而して誰か南国の軍
政は大臣軍人ならざるが故に挙らずと謂ふ欺。
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故に今日に嘗りては、園に四人の陸海軍参謀長ありて一人の海陸事大臣
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あらず、軍政の園宜に合せざる真に故あるなり、自今軍備を正官ならし
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めんと欲せば、彼の武官組織制より改めざる可からず、之にして改まら
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ざる間は如何に軍備の適正を求むるも、畢真昼望たらんのみ。
                     (明治三十年八月十八日「日本」)