選挙法の改正と
選 挙 区 制


 衆議院議員選挙法改正案は、十九日の臨時閣議で正式に決定
し、大選挙区を採ることになつたが、それではこの大選挙区と
はどいふものであらうか。
 選挙区とは選挙を行ふ地域のことであるが、この選挙区には
大選挙区と小選挙区、又は又中選挙区の区別がある。
 国が小さく、人口も又少い国では、全国を一つの選挙の区域
とすることも出来るが、人口の多い国では、この方法には選挙
上色々の困難が伴ひ、実際上には出来ないことである。
 従つて各国とも、一般に全国を多くの選挙区に分ち、選挙区
毎に一定の数の議員を選出する方法が採られてゐる。
 尚、余談になるが、昔は地域団体としての選挙区が自ら選挙
権を持つてゐたのであつて、個人は直接選挙に与つてはゐなか
つた。.個人が公民として選挙権を持つやうになつたのは、フラ
ンス革命から後のことである。
 さて、選挙区の分け方に上つて、大選挙区や、中選挙区、小
選挙区などゝ呼はれてゐるが、理論的には議員一人を選出する
だけの地域を、一つの選挙区とするものを、小選挙区といひ、
議員二人以上を選出する地域を、二つの選挙区とするものを、
大選挙区としてゐる。
 然し我が国では、各府県を一つの選挙区とするものを大選挙
区とし、一府県を幾つかの選挙区に分ち、各選挙区から二人以
上の議員を選出するものを、中選挙区といつてゐる。
 我が国の選挙区は、明治二十二年に、憲法発布と同時に制定
されたが、その後明治三十三年に第一回の改正か行はれ、更に
大正八年にその一部が改正され、越えて大正十四年に普通選挙
法による改正が行はれ、、更に昭和九年にこれに改正が加へられ
たのであるが、これが現行の選挙法である。
 明治二十二年に公布された最初の選挙法に於いては、小選挙
制を採つた。
 明治三十三年の改正選挙法によつて、この小選挙区制を改め
て、大選挙区制としたが、大正八年には再び小選挙区制が採ら
れ、大正十四年の改正によつて現在の中選挙区制となつたので
ある。
 ところで今回の選挙法改正案に就いては、大選挙区制が採ら
れることになり、選挙区は一つの府県を一つの選挙区とするこ
とになつたが、然し、東京府、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡
県、北海道では.二つから四つまでの選挙区に分たれることに
なつてゐる。

                     (一月二十日放送)