国 民 錬 成 所 と は
ど う い ふ も の か


 紀元二千六百年式典と、奉祝会が行はれた式殿は、かねで政
府で企画してゐた国立国民錬成所の中心的な施設となる事にき
まつた。
 紀元二千六百年奉祝会では、曠古の祝典に際して、昂揚され
た国民の感激を永く記念するため、式殿の所置については、一
地方や一団体の占有物とする事なく、永く国家的な記念物とし
て保存したいといふ意向であつた。
 この奉祝会の意向が、丁度文部省が企てゝゐる国立国民錬成
所の主旨と一体になつて、ここに記念すベき式殿の所置が決ま
つた訳である。この国民錬成所は、国民の各層の指導者を訓練
する道場であるが、式殿を国民錬成所の道場としたのは.紀元
二千六百年奉祝の式殿を根本中道とも云ふべき修養殿として、
それにいろいろの施設を加へ、この道場に於いて身心の鍛錬を
行ひ「紀元二千六百年の国民的感激を、あの時一時の感激にと
どまらせず、永く之を持ち続けて、国民等しく皇運扶翼の道に
邁進しよう」といふ趣旨によるものである。かうして営ある式
殿は国民錬成所の根本中堂になる事になつたが、この事は記念
事業の意味を失はないと共に、併せて国民錬成の施設を実現す
る事になり、誠に意義深い所置と言はねばならぬ。
 さて次にこの国民錬成所についてのべると、文部省では国民
錬成所といふ修養道場の建設については.既に五六年前から研
究を進めて居り、現に学校の教職員に限つてこの国民錬成の事
業を実行して来た。
 即ち文部省の国民精神文化研究所では.中等学校の教職員を
始め、高等、専門学校、或は大学等の生徒主事や学生主事に対
して、國體観念の涵養や、国民の指導者としての人物の訓練を
行つて来たものである。
 ところが国民の先達となつて率先して模範を垂れる様な人物
は、啻に教育界許りでなく凡ゆる方面に亙つて必要な人物であ
る。そこで今回の国立国民錬成所が実現した暁には、この錬成
所の対象となる者の範囲を拡げて、教職員は勿論、青年の指導
者や産業労務者の指導者或は常会の指導者等を網羅して、全
国民に呼びがけ、身心の鍛錬を通じて、各界の指導者の国家意
識を昂めようといふ事になつてゐる。
 この国民錬成所に於けるいろいろの施設や修養、訓練の方法
等については、只今文部省で研究中であるが、根本中堂になる
式殿は祝日や祭日の儀式を始め、謹話、謹講、静座、静観等.
厳粛が行事だけに使用される予定である。
 そしてこの錬成所の運営に当つては、文部省が之を主管して
所長や責任の指導者を任命すると共に、文部省と各官庁との間
に連絡委員会を設ける事にならう。.

                   (十二月二十一日放送)