昭和十四年


一月四日、近衛首相は政治姑の御儀より退出後、直ちに首相官邸に緊急閣議を粥き、遽に総辞職と決定、首相は全
牌僚の尉表を取纏め、午前十一時三十五分、宮中に参内、辞表を捧呈す。後継内閣に就きて御下問を拝せる湯浅内府
は、興津坐漁正に西園寺公を訪問、意見一致して直ちに辟京、九時八分拝謁仰付けられ、福相平沼男を適任とする旨
を奉答。五時四十五分男の親任式あり、七時牛閣僚の親任式を行はれ、首相平沼駐」郎、外相(留任)有田八郎、内
柏木戸至、蔵相石渡荘太郎、陸相(留任)板垣征四郎、海柏(留任)米内光政卜法相(留任)乗遽相鹿野季彦−
文相(留任)荒木貞夫、農相櫻内幸雄、南柏乗拓相(留任)八田嘉明、錬相前田米蔵、厚相廣瀬久忠、と定まり、平
沼首相は新聞記者囲の質問に答へ、

汰 日本政治の基調は萬民輔翼といふことにあり、国民は如何なる職業にあつても皇室を輔翼し奉ることが日本頼紳である。これを
j 基礎として農、工、商事その職業の如何に拘らずこの碑紳を蚤展させて行かねばならぬ0
と云ひ、翌六日夜、ラヂオにて同一趣旨を放逢す。近衛公は福相に任ずると共に国務大臣として内閣貝に列す。
一月二十一日午前、貴族院にて首相、外相、午後、衆議院にて首相、外相、蔵相の施政方針演説あり、首相は事欒
封虞策に閑し一切近衛内閣時代に決定せる大方針に擦り、微動だにせざることを明かにす。有田外相は日掲伊防共協
定の強化を望み、

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  今日国際間不安動揺の原因は素より複雑なものがあるが、要するに事賓不公正なる現状を其の俵維持せんことに努め、功利的頼
 紳に依り新興勢力の蚤展向上を阻害せんとすることが、其の重大原因たることは争ふべからぎる析である0
と云ひ、石渡蔵相は財政経済政策の大網を説明し、二箇年に亙る大規模の教学を樺績しっゝ十分に負捨に堪ふる我囲
の経済上の資力を明かにすると共に、公債消化、資金調達、壌替維持等の戦時財政経済政策が順調に遂行され、特に
重祀すべき封外貿易が昨年度に六千飴萬園の輸出超過を示せる事箸を指摘し、封外貿易の著るしき改善を明かにす。
 濠算縫合に於て首相の政治的信念、内閣の具鰭的政策に就いて論議され、二月二日、組合最終日に小川、大口両人
ょり南真の代表的質問を壊し、興亜政策、国防計董の根幹たる生産力輝充計茎、物動計董に関する具貯的説明を求め−
二日午後、三日午前に亙りて秘密合に内容を説明す。臨時軍事費追加濠算が相ひ次で提出され、務算委員合は合期中
殆ど達績して閑合し、興亜政策の輪廓が次第に明瞭となる。特に三月入日の委員禽にて青木企墓院総裁が委員の質問
に答へ、目下進行中の生産力靖充が昭和十六年度完成の暁に、昭和十三年の生産額を基準とし、

  普通攣ハ割、特殊鋼及鍛鋳鋼二倍、鋼彗ハ割、銃撃扁、鉄鎖石二倍牛、石蟹南、アル、、、ニウム数倍、マグネシウム十倍、銅
 入割、鉛九割、亜鉛七割、錫二倍、天飴揮蚤油三割、人造石油三十倍、天飴重油四割、人造重油九倍、無水アルコール十三倍、曹
 達準扁、苛性曹達四割、エ巣撃ハ倍牛、硫酸アムモニヤ四割、パルプ製耗用二割、同人絹用三十二割、金二割、工作機械二十六
 割、機関車三割、客車七割、貨車五割、自動車五倍、羊毛三十二割。
の増産が賛現し、日満支を通じて自給自足し得るもの、域鏡、石栄、軽金属、亜鉛、曹達、硫安、パルプ、鉄道車輌、
自動申、船舶等なる旨を説明し、国民の理解と協力を求め、七十四試合の大収穫と云はる。第七十四議禽の政府提出
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議案は務炒昇案十四件、
決算三件、事後承諾案六件、法律案入十九件にして、中に法律案八十九件は七十六覇禽の入十
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六件より更に三件を増し、本務算、追加第一改、同二毅を合せる一般合計務算合計四十八億囚官僚苗囲、随時軍事費
四十六億五官萬囲、総計九十四億九首五十飴萌囲の数字に上る。
 内山閣にて国民精神総動員運動の強化を必要とし、

  時局の現段階に経み、国民椅紳線動員運動をして虞忙新東亜建設に封虚すべき綜合図カの充貸費揮、囲家総動員態勢の親北に費
 せしむるため、この際民間機構たる中央聯盟の改組凍充を行ひ、其の機能の十分なる蚤揮を期待す軋と共に、政府との連繋を緊密
  忙し、官民一捜の拳囲貿鹿運動たるの賓を挙げしむるため、内閣に新たに官民合同の囲民椅紳線動員委員曾を置き、之が企董泣に
  指導の綜合一元他を期せんとす。

と云へるが、平沼内牌は八月二十三日、掲ソ不侵略條約の費表以来動格の色あり、l一十入日、蓮に絶辞職す。昨年の
夏近衛内閣に封して防共協定に一歩を進むる枢軸協定を結ばんと掲図より提議し衆針、五相合議に付議すること数十
回、本年六月五日、廟議決定、首相より内奏したるに、掲囲政府にて満足せず、平沼首相よりヒットラI総統に親電
を迭れるも歩み寄りに至らず、掲は既にソ聯と交渉を進めつ1ありたり。近衛梅相を始め重臣間の交渉頻繁となり、
機構首相候補として阿部信行大将を推し、二十盲夜、首相よサ閣僚に通知し、二十入日午前九時、欝職の臨時閣
議を開きて尉表を捧呈す。首相の談話中、

  今拘締結せられたる狗蘇不可侵條約により、欧洲の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたので、我が方は之に経み、後爽準備し爽
 つた政策は之を打切り、更に別途の政策樹立を必要卜するに至りました0
とあり、複雑怪奇の語が世の注意を若く。
 湯浅内府は近衛首相と華族禽館にて協観し、御殴場に西園寺公を訪問し、阿部大将を後植苗相とするに定め、同夜

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入時二十分、阿部が宮中に召されて大命を挿す。三十日、閣員名簿を捧呈し、同日午後親任式を挙行。首相乗外相陸
軍大将阿部信行、内相乗厚相小原直、蔵相乗企董院総裁青木一男、陸相陸軍大将畑俊六、海相海軍中将吉田善吾、法
相宮城長五郎、文相河原田稼吉、農相東商相伍堂卓雄、遽相乗鉄桶永井柳太郎、拓相金光庸夫。
 首相の談話に、

  複雑多攣を極めつ1ある国際現備に対しては、帝国淘自の立場を厳持し、自主的所信の遼行に邁進せんとするものであります。
撃明に、
 園捜の本義に徹し、外交を調整し、図防を強化し、産業を撮興し、銃後生活を確保する等、凡て国政の全般に釘り不断の努力を
 傾注すると共に、特に現下の重大時局に虚し、現内閣が堅き決意を以て共の具現に邁進せんとする嘗両の要務概ね左の如し。
とて、根本方針、支那事欒の虞理、綜合経済力の描充運用、囲家総動員鰭制の整備強化、諸制度の刷新遊に運用、に
就いて速ぶ。
 支那事欒以来、陸海軍最高指揮官は陸軍にて、北支最高指揮官は多田中将、寺内大将、杉山大将、中支最高指揮官
は松井大将、畑大将、山田中将、南支最高指揮官は古正大将、安藤中将、支那派遣軍絶司令官は西尾大将、支那流通
軍絶参謀長は板垣中将、海軍にて、支那方面艦隊司令長官は長谷川大将、及川中将、北支部隊海軍最高指揮官は豊田
中将、日比野中将、南支部険海軍最高指揮官は塵澤中将なり。
 十月二十七日、大本営陸海軍部より、
  我が輩は本二十七日午後五時三十分、陸海協力残敵を掃蕩し、武漠三鎮を完全に攻略せり。
と公表し、賓二十入日、参謀総長滋に軍令部次長は宮中に召され、

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i.題
  我陸海軍藩朝晩が緊密邁切に協力し、長途幾多の困難を克服し、遼に衆敵を孝雄して武薮攻略の目的を蓮成する忙至れるは、深
  く満足に思ふ。此旨賭兵忙中俸へょ。
との御言葉を賜はり、十日を経て十一月三日、漠口のパレス・ホテルに於て陸海軍最高指揮官は祀宴を拳ぐ。
 ノモンハン事件なるものあり。本年五月十一日、外蒙軍七、入十名がハルハ河を渡り、ノモンハン西南方パルシヤ
ガル附近に越境、我が警備険は之を撃退す。二十日よりソ聯側は連日満洲上空に爆撃を開始し、我が陸驚は之に封抗
して、三十一日迄に確晋に撃墜せるもの五十九機に上る。外蒙軍は六月十五旦剛後より再び越境し、二十七日、敵横
二官に上り、七月三日より大挙越境、我に於て確茸に五十三機を撃墜す。九月十六日、大本営陸軍部襲表にて、外交
交渉に入り、本日停戦するに意見の一致を見るとあるが、この間に注意すべきものあり、発動すべきに非ざりしと後
に知らる。
 昨年十一月二十五日、有田外相と駐日掲囲大使オットIとの間に臼掲文化協定に調印し、絶べて四條、初の二條に、

第一條 締約囲は其の丈北的関係を堅箕なる基調の上に樹立するため努力すべく、相互に右につき最も緊密なる協力を慮すべし0
撃一條 締約麟は前條の目的を達成するため、畢術、美術、普柴、丈皐、映彗無線放琴青少年運動、連動遊技界の方面に於て、

い四



 針。南図の文化牌俸を組織的に替地すべし。
とあり、本年三月二十入日、有田外相と駐日伊囲大使との間に日伊文化協定に調印し、内容字句まで日掲文化協定と
同じ。
 荒木文相は国民精神総動員委員禽にて決定せる生活刷新運動の苦行項目を報告し、各閣僚の賛成を求め、国民生活
要綱として、(一)早起動行、(二)報恩感謝、(三)大和協力、(四)勤労奉公、(五)時間厳守、(六)節約貯蓄、
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(七)心身鍛錬、と言ふが如きあり。第一期刷新墳目に (一)料理店、飲食店、カフェー、待合、遊戯場等の営業時
間短縮、(二)ネオンサインの抑制、(三)一定の階暦の禁酒、一定の場所の禁酒、(四)冠婚葬祭に件ふ弊風打破、
就中著移なる結婚披露宴等の廃止、(五)中元歳暮の潜答廃止、(六)服装の簡易化、とあり。常時の習俗に関して戒
むる所が知らるれど、世に閻と云ふところが行はれ、植成関係の間に多しとて物議を招く。
本年の物故者は、一月四日、陸軍大将町田経宇(批腎書家比田弁天釆(肘腎二十六日、帝国学士院長櫻井錠二(加腎
二月九日、前軍令部長海軍大将加藤寛治(凱十)。三月一日、劇作家岡本綺堂(l)。四月五日、ラグーザお玉(址針)。五
月三日、丸見屋社長三輪善兵衛(賦腎十入日、土方寧(ペ腎二十二日、朝比奈知泉(仙針)。六月七日、三上参次(講)。
二十七日、林権助男(幣)。七月十二日、服部宇之音(謡)。佐々木政音(訊腎八月一日、大谷尊由(箭)。十四日、黒
田長成侯(講)。十六日、原富太郎(講)。九月七日、泉鏡花(宗)。二十二日、棚橋絢子(撃)。朴泳孝侯(枇腎二十
三日、岡田三郎助(巾腎二月十七日、田中智寧(枇腎十一月二十九日、松村介石(ペ腎十二月十四日、小久保喜
七(加配

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