第三六九号(昭一八・一一・一〇)
   大東亜会議の意義
   日華同盟条約の締結        大東亜省
   帝国の外交方針と英米の戦争目的
   戦時行政職権特例の改正
   中央官庁の決戦機構
   大東亜戦争日誌

大東亜会議の意義


 大東亜戦争二周年に至らずして、大東亜諸国家の代表者一
堂に会し、大東亜戦争完遂と大東亜の建設を議す。宣戦の大
詔を拝したあの日に、誰が今日あるを予想し得たであらう
か。これ一に大御稜威の下、皇軍の善謀勇戦と銃後一億国民
の一心協力によることは勿論であるが、大東亜各国家、各民
族がまた新らしき東亜を建設せんとする熱意に燃え上り、
「大東亜のための大東亜」をもたらすべき東洋人たる自覚にめ
ざめて、或ひは米英に宣戦し、或ひは緊密に戦争完遂に協力
し、皇國と共に、大東亜隆替の運命を賭して蹶起したこと
が、今日あらしめた大いなる原動力であることを忘れてはな
らない。
 十一月五日、六日の二日間に亘つて帝国議事堂内で開かれ
た大東亜会議こそは、正しくかゝる大東亜の共同意志を表明
し、大東亜十億民衆の団結を、事実を以て全世界に向つて明
示したものであつて、東亜の歴史に、否、人類の歴史に初め
て見る盛観であり、全世界の視聴が挙げてこの会議に集注さ
れたのもまた当然である。
 相会する代表六名、帝国代表東條内閣総理大臣、中華民国
代表国民政府行政院長汪牙ハ閣下、タイ国代表内閣総理大
臣代理ワンワイタヤコン殿下、満洲国代表国務総理大臣張景
恵閣下、フィリピン国代表大統領ホセ・ベ・ラウレル閣下、ビ
ルマ国代表内閣総理大臣ウー・バー・モウ閣下のほかに、晴れ
の陪席者として自由印度仮政府首班スバス・チャンドラ・ボー
ス閣下を迎へて、会議は終始、最も真剣に、しかも極めて友
好的な雰囲気の裡に進められ、大東亜の家族会議の観を呈し
た。
 開会劈頭、帝国代表東條内閣総理大臣から、米英の非望を
剔抉し、帝国の聖戦目的を明確にし、さらに大東亜戦争の基
本方針を閘明する歴史的な演説があり、次いでイロハ順で、
各代表からそれぞれ本国政府の見解と抱負とが率直に、且つ
力強く閘明され、関係各国の大東亜戦争完遂の決意並びに大
東亜の建設、延いては世界平和の確立に対する理想と熱意と
は、完全に一致するものであることが確認されたのであつ
た。
 かくして会議第二日において「大東亜共同宣言」が提案され
たが、満場一致採択をみるに至り、堂々と中外に宣明された。
次いでバー・モウ・ビルマ代表立つて「自由インドなくしては
自由アジアなし」とインド独立について熱烈な意見を吐露す
れば、ボース首班、インド独立に対する支援を感謝し、「誓つ
て英国をインドより葬り自由インド一日も早く確立せん」
ことを閘明した。これに対し東條内閣総理大臣より、「帝国は
こゝにインド独立の第一階梯として、目下帝国軍において占
領中のインド領たるアンダマン諸島及びニコバル諸島を近く
自由インド仮政府に帰属せしむるの用意ある」旨の重大発言が
あり、帝国がいよいよインド独立のために全幅の協力をなす
決意を重ねて表明したのであつた。

大東亜共同宣言

 抑々世界各国が各々其の所を得、相倚り相扶けて万邦共栄の楽を
偕にするは世界平和確立の根本要義なり。然るに米英は自国の繁
栄の為には他国家、他民族を抑圧し、特に大東亜に対しては飽く
なき侵略搾取を行ひ、大東亜隷属化の野望を逞しうし、遂には大東
亜の安定を根柢より覆さんとせり。大東亜戦争の原因こゝに存す
 大東亜各国は相提携して大東亜戦争を完遂し、大東亜を米英の
桎梏より解放して、其の自存自衛を全うし、左の要綱に基き大東
亜を建設し、以て世界平和の確立に寄与せんことを期す

一、大東亜各国は協同して大東亜の安定を確保し、道義に基く共
存共栄の秩序を建設す
一、大東亜各国は相互に自主独立を尊重し互助敦睦の実を挙げ、
大東亜の親和を確立す
一、大東亜各国は相互に其の伝統を尊重し、各々民族の創造性を伸
暢し、大東亜の文化を昂揚す
一、大東亜各国は互恵の下緊密に提携し、其の経営発展を図り、
大東亜の繁栄を増進す
一、大東亜各国は万邦との交誼を篤うし、人種的差別を撤廃し、
普く文化を交流し、進んで資源を開放し以て世界の進運に貢献


 この宣言こそ、東條内閣総理大臣がいはれるやうに、大東
亜各国の戦争観及び平和建設の理念を全世界に向つて簡潔強
力宣布した大憲章であり、世界の歴史に新たなる一章が書
き下ろされたものである。
 これによつて、大東亜各国及び各国民にとつては、具体的
に、的確なる共通の目標が得られたわけであつて、お互に
大東亜建設の理念に対する理解を深め、共同の目標達成のた
めにどれだけか大きな力になるか測り知れないものがあるの
である。
 この大東亜宣言にもられた大東亜建設要綱は、要約すれば
一、共存共栄の原則 一、独立親和の原則 一、文化昂揚
の原則 一、経済繁栄の原則 一、世界進運貢献の原則
の五原則に要約される。これはとりもなほさず皇國の理想に
基づき、つねに帝国外交の基調となれるところであり、大東
亜建設に対する帝国の基本的な見解と一致することはいふま
でもないが、大東亜各国共同の使命及び世界平和確立の根本
要義に合致する共同要綱たり得るところに、大いなる意義が
あるのである。
 宣言の冒頭にもあるやうに、抑々世界各国が各々その所を
得、相倚り相扶けて万邦共栄の楽を偕にするのは、世界平和
確立の根本要義である。しかして特に関係深い諸国が、互に
相扶け、各自の国礎に培ひ、共存共栄の紐帯を結成すると
共に、他の地城の諸国家との間に協和偕楽の関係を設定する
ことは、世界平和の最も有效にして、且つ実際的た方途であ
るといはねばならない。
 大東亜の各国が、あらゆる点で離れ難い緊密な関係を有す
ることは否定し得ない事実であつて、かゝる関係に立つて
大東亜の各国が協同して、大東亜の安定を確保し、共存共栄
の秩序を建設することは、各国共同の使命であると確信する
ものであつて、こゝに共存共栄の原則は確立され得るのであ
る。
 この大東亜における共存共栄の秩序は、大東亜固有の道義
的精神に基づくべきものであつて、この点において自己の繁
栄のためには、不正、欺瞞、搾取をも敢へて辞せざる米英本
位の旧秩序とは根本的に異るものである。
 第二の「独立親和の原則」は、大東亜各国が互にその自主独
立を尊重しつゝ、全体として親和の関係を確立すベきことを
いつたもので、相手方の自主独立を尊重し、他の繁栄によつ
て自らも繁栄し、自他共にその本来の面目を発揮するところ
にのみ、この関係は生じ得るものである。帝国の中華民国に
対する関係をはじめ、大東亜各国に対する関係も、また相互
間の関係にも、この原則が生かされてゐることは事実が何よ
りも雄弁である。
 第三の「文化昂揚の原則」についてまづ考へられねばならぬ
ことは、大東亜には優秀な文化が存してゐるといふ事実であ
る。タイ国代表ワンワイタヤコン殿下は、その発言の中で、ア
ジアの原則に従ふ発展こそ真の文化であると、「光は東方よ
り、法律は西方より」といふ諺を引いたが、大東亜の精神文
化は最も崇高、幽玄なものである。今後これを長養醇化し
て広く世界に及ぼすことは、物質文明の行き詰りを打開し、
人類全般の福祉に寄与すること少からざるものあるは明らか
である。従つて、かゝる文化を有する各国が、相互ひにその
光輝ある伝統を尊重すると共に、各民族の創造性を伸暢し、
以て大東亜の文化をますます昂揚せねばならぬのは当然であ
る。
 第四の「経済繁栄の原則」は、大東亜の各国が民生の向上と
国力の充実をはかるため、互恵の下に緊密な経済提携を行
ひ、協同して大東亜の繁栄を増進すべきことをいつたもので
ある。大東亜は米英蘭多年の搾取の対象となつて来たのであ
るが、今後は経済的にも、自主独往、大東亜の人々の手により
開発し、相倚り相扶けて、その繁栄を期さなければならない
のである。
 かくの如くにして建設せらるべき大東亜の新秩序は、決し
て排他的なものではなく、広く世界各国との間に政治的に
も、経済的にも、また文化的にも、積極的に協力の関係に立
ち、以て世界の進運に貢献すべきを明らかにしたものが、第
五の「世界進運貢献の原則」である。
 口に自由平等を唱へつゝ他国家、他民族に対し、抑圧と差
別とを以て臨み、他に門戸開放を強ひつゝ、自らは尨大なる
土地と資源とを壟断して、他の生存を脅威して顧みず、世界
全般の進運を阻害しで来た米英の今までのやり方とは全く趣
きを異にしてゐるのである。
 米英が、アジアに対して過去において何をして来たか。彼
等は政治的に侵略し、経済的に搾取し、さらに教育文化の美
名に隠れて民族性を喪失せしめ、相互に相衝突せしめて、そ
の非望の達成を図つたのである。彼等の呼号する門戸開放
も、機会均等主義も、東亜を植民地視する根本観念に発した
ものであつて、実は彼等が東亜侵略の非望を遂げんがため
の便宜手段に過ぎないのである。そして彼等の平素唱道す
る国際正義の確立と世界平和の保障とは、畢竟、欧州におけ
る諸国家の分裂抗争の助長と、アジアにおける植民地搾取
の永続化とによる利己的秩序の維持にほかならないのであ
る。
 このことたる我々の眼前に示されてゐる事実が何よりの証
拠である。米英がいはゆる大西洋憲章によつて標榜せるとこ
ろと、現にインドに対してとりつゝある事実とを、彼等は如
何なる倫理によつてこれを調和しようとしても不可能であ
る。敵の与へたフィリピン独立の約束が如何に空虚なもので
あつたかは今更問はないとして、ケベック会談談につゞくモス
クワ会談が、如何に欺瞞と利己主義とに終始してゐたか、そ
の説くところの世界組織が如何に現実放れがしてゐるか、全
世界の心ある人々は、その欺瞞と偽装と迷彩こそ、彼等米英
の本性であることをすでに熟知してゐる筈である。
 たとひ敵側のなすところが如何なるものであるにせよ、帝
国は大東亜各国と相携へて、天地の公道を歩み、大東亜を米
英の桎梏より解放し、大東亜各国と協同して大東亜の復交興
隆を図るのみである。そして今や大東亜会議を契機に大東亜
諸国家、諸民族の結集は成り、万邦共栄の理想に向つて、大
東亜新建設の巨歩はこゝに堂々と発足したのである。

 時もよし、大東亜会議の真最中に、南太平洋上における赫
赫たる大戦果が相次いで大本営から発表された。帝国陸海軍
部隊は、ブーゲンビル島に上陸を企図して北上しつゝあつた
敵輸送船団群を発見、各所に出撃または邀撃して、五日まで
に大型巡洋艦以下艦船五十八隻以上を撃沈破し、敵機二百五
十機以上を撃墜したが、さらに六日の発表では、大中型空母各
一隻をはじめ、大型巡洋艦以下四隻を轟撃沈し、しかも我が方
の損害未帰還三機といふ輝かしい戦果を拡大したのである。
 この喜び、この感激、それはひとり我々の喜び、我々の感
激にとゞまらず、大東亜国家、十億の民衆の感激であり、
感奮にほかならないのである。

 南太平洋上に日米の決戦いよいよ苛烈壮烈を極め、敵の戦
略的焦躁、まさにわが出血戦術の求むるところでもある。この
決戦に次ぐこの決戦、ひとり前線の将兵にとゞまらず、我々
の血を沸かせ、肉を躍らさずにはゐられない。
 我々にはすでに大東亜の確乎たる戦略態勢あり、こゝに大
東亜の結集成る。「アジアは一つなり」と先人が喝破した至言
は今や現実となつて、アジア十億の総力を結集して、敵米英
の撃滅に邁進し、大東亜建設に向つて突進する日がつひに来
たのである。
 正義の向ふところ敵なく、究極の勝利は我に帰すべきは我
我の信じて疑はざるところ、我々に残るは完勝への突込み
あるのみ。この感激、この感奮を我々の実践に生かし、寸刻
を争ひ、生産の増強、戦力の拡充にあらん限りの力を捧げ尽
して、一機でも多くの飛行機を、一隻でも多くの艦船を前
線にくり出して、敵米英の非望を今こそ破推し、聖戦完遂を
期し、聖慮を安んじ奉らねばならない。
 時は来た。たゞ我々の総蹶起、総突撃あるのみである。