第三二〇号(昭一七・一一・二五)
   第三次ソロモン海戦と我等の覚悟
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   大東亜戦争日誌

第三次ソロモン海戦と我等の覚悟

 十一月十二日から三日間に亘り、またもソロモン海水域において、第三次ソロモン海戦の激闘が展開された。即ち、帝国海軍航空部隊は十二日昼間、ソロモン群島ガダルカナル島にある敵の艦艇、輸送船に対して攻撃を敢行、同日夜、戦艦を中心とするわが有力な攻撃部隊は、壮烈なる夜襲を決行して所在の敵艦艇、船舶の大半を撃破した。
 翌十三日夜、わが有力部隊は大胆にもガダルカナル島の敵航空基地に肉薄、巨砲の浴びせて敵飛行場とその施設に大損害を与へた。
 さらに翌十四日、増援せる敵機の猛烈な反撃を排除しつゝ味方輸送船団の護送を敢行したが、夜に入るに及んでガダルカナル島西北方において、戦艦二隻、大型巡洋艦四隻以上を基幹とする敵増援艦隊と遭遇激戦の結果、補助部隊の大部を潰滅せしめ、戦艦二隻に重大なる損傷を与へて、これを南方に敗走せしめた。
 以上の三日間に亘る第三次ソロモン海戦における綜合戦果は、撃沈、巡洋艦八隻(内新型三隻、内五隻は轟沈)駆逐艦四隼乃至五隻、輸送船一隻、大破、巡洋艦三隻、駆逐艦三隻乃至四隻、輸送船三隻、中破、戦艦二隻、飛行機撃墜六十三機、撃破十数機である。
 これに対してわが方にも、戦艦一隻沈没、同一隻大破、巡洋艦一隻沈没、駆逐艦三隻沈没、輸送船七隻大破、飛行機三十二機自爆、九機未帰還といふ尊い犠牲があつた。
 八月初旬の第一次ソロモン海戦以来、敵に与へた損害を通算すれば、撃沈、戦艦一、航空母艦四、巡洋艦二十七、駆逐艦一○、潜水艦九、掃海艇一、輸送船十七、計七十九隻、撃破、戦艦四、航空母艦四、巡洋艦五、駆逐艦一〇、潜水艦一、掃海艇一、艦型未詳三、輸送船六、計三十四隻、飛行機の撃墜破八百五十機以上といふ夥しい数に達してゐる。
 かゝる大損害を蒙りながら、敵が執拗な反撃を続ける所以のものは、ソロモン群島が戦局の現段階において最も重要な戦略的拠点だからである。即ちソロモン群島は、ハワイと濠洲とを結ぷいはゆる米濠連絡路の一部に当り、アメリカがこゝを失はんか、彼等の恃む防禦陣の一角が崩れ、米濠の連絡は遮断され、対日反攻の剣先はへし折られて、国民の米国海軍に対する信頼も根柢から崩れ去るに至るからである。
 さればこそ、敵はいかなる犠牲もかへりみず、死力を尽し、全力を傾けて反撃して来るのである。
 我が方としても、作戦基地からの距離の遠いこと、敵の陸上航空基地があること等の極めて不利な条件を冒し、断乎としてガダルカナル島に上陸を敢行してゐるのである。ソロモン群島の戦略的意義が失はれぬ限り、第四次、五次、六次のソロモン海戦が続いて行はれるであらう。
 戦艦二隻の外多数の艦艇を損傷し、飛行機二百六機を喪失したことは、帝国海軍としては未曾有のことである。われ/\は、かゝる小癪なる敵の攻勢を撃摧し、敵の一艦、一兵までをも撃滅しつくすために、一死奉公、護国の華と散りつゝある将兵の心を心として、一台の飛行機、一隻の軍艦でも多く造るやう、銃後の生産力の拡充に挺身せねばならぬ秋である。