第二二一号(昭一六・一・一)
  事変第五年を迎ふ        内閣総理大臣公爵 近衛 文麿
  大政翼賛運動の進路       大政翼賛会
  大政翼賛会事務局各部局の解説
  支那事変の現況
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  日泰友好和親条約批准交換
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  前線から銃後へ         現地軍報道部提供
  お正月の野戦料理        陸軍糧秣本廠

大政翼賛運動の進路 

   国運を決する翼賛運動

 世界の歴史的転換期に直面し、八紘一宇の肇國の大理想顕現のため、巨大な国民的足跡を印して発足した大政翼賛運動はその多端な準備期を終へ、こゝに光輝ある二千六百一年を迎へ、いよ/\盛り上る国民的創意による澎湃たる大運動を展開することになつた。これが推進機関として設置された大政翼賛会も、その内容を整備充実し、それ/"\国民組織の各分野にわたつて積極的に働きかけてをり、また下情上通、上意下達を図るために設置された中央協力会議も旧臘十六日より三日間にわたつて臨時中央協力会議を開催し、劃期的成果を挙げ、本運動は新しき段階に入ることになつた。紀元二千六百年は光栄ある歴史の一齣であつたとともに、また日本の歴史がかつて経験したこともないほどの、未曾有の大難局に対内的にも、対外的にも直面した年であつた。新しき二千六百一年こそ日本が如何にこの時艱を突破し、光輝ある世界の道義的指導者としての地位を確立するか否かの岐路に立つ年であつて、かゝる意味で高度国防国家確立を目指す翼賛運動の進展如何に国運の成否がかけられてゐると言つていゝ。

   国民組織確立の急務

 いふまでもなく、大政翼賛運動の本質は新政治体制の確立であつて、その基礎は国民組織の再編成であらねばならぬ。新らしき国民組織は地域、職域の両面から再編成される原則とされるが、地域的にこれをみれば、地方における本運動の促進機関として設置されることになつた大政翼賛会府県支部は殆んど結成をみ、新らしき年とともに郡、市、区、町村の下部組織に向つてその整備の手を拡げ、順次部落常会、隣組等の最下部組織に向つて全国的な組織活動を展開しつゝある。かゝる国民組織の確立によつて、始めて万民翼賛の新政治体制が樹立されるのであつて、こゝに一億同胞の血汐は流れ合ふのである。更に職域的な横の組織の完備と相俟つて、本運動は漸くその軌道に乗るものといはなければならぬ。旧臘来の下部組織指導者訓練講習によつて、運動の本義を体得した全国各地の下部組織指導者が中心となつて、本年初期にはこの国民的組織の網が整備され、下情上通、上意下達の国民組織が確立されよう。
 下情上通、上意下達こそは本運動の根幹をなすもので、これがために大政翼賛会に中央協力会議が併置されてゐるが、大政翼賛会では先般の臨時中央協力会議の成果に鑑み、来る四月正式に中央協力会議を招集し、これを恒常化して、下情上通の真の成果を期待してゐる。

    右顧左眄せず邁進

 一方本運動の推進機関たる大政翼賛会も生誕以来二ヶ月半、その事務的活動に於ても漸く緒につき、その政治性格においても高度純化し、右顧左眄せず、運動促進に邁進する態勢を整へ、さきに掲げた実践要綱の実現に挺身協力することになつてゐるが、更に十二月廿四日を以て召集された初の翼賛議会は、わが国政治運営の今後の基準を決するものともみられ、その成否は最も注目されるところである。
 かくの如く、本運動竝びに大政翼賛会は新段階に入り、更に高度の積極的な展開が国家的に要請されてゐるが、現在日本が直面する内外異常の時局を打開するためには、更に幾多の困難がその前途に横たはつてをり、それを乗り越えてこそ、始めてこの国家的大事業が達成されるのであつて、その苦難の大なるが故にその光栄の大なることをも自覚して、勇躍挺身この大使命達成に邁進せねばならぬ年である。歴史の展開はこの軌道を邁進することによつてのみ可能であり、正に日本にとつて祖国の興廃のかゝつてゐる年であるといはねばならぬ。

                  --------- 大政翼賛会 ----------