第二一〇号(昭一五・一〇・一六)
   大政翼賛運動発足す
   総動員態勢の強化
   会社経理統制令について      大 蔵 省
   平安神宮西本殿故に近江神宮の御鎮座祭 内務省神社局
   金買上規則制定さる         大 蔵 省
   貿易保険一戸一口増加運動      逓 信 省
   蒋介石の新抗戦財源        外務省情報部
   ニュー・カレドニアの近状
   特集 新支那読本(一二)農業


大政翼賛運動発足す

 大東亜新秩序の建設を目指して、新日本が逞しい歴史
的巨歩を踏み出す大政翼賛会発会式は十月十二日午前九時
三十分から内閣総理大臣官舎大広間に於て総裁近衛内閣
総理大臣をはじめ、関係各閣僚、顧問、常任総務、総務、
参与、新体制準備会常任幹事、同補佐役党が出席、厳粛な
雰囲気の中に挙行された。松前翼賛会総務部長司会の下に
開会が宣せられるや、まづ総員起立して宮城を遙拝、国歌
「君が代」を合唱し、ついで近衛総裁座長席につき、紀元二千
六百年の紀元節に渙発された詔書を捧読、戦歿将兵の英霊
に対する感謝竝びに出征将兵の武運長久祈願の黙祷を捧げ
た上、一同着席、有馬事務総長より

この運動は全国民の運動であり、会は運動推進の中核で
ある。会の事務的方面については未だ完了してゐない
が、役員、構成員の銓衡に当つては各方面の人材を集め
一日も早く運動の完遂に向つて進みたい。

と同会が成立するまでの経過を報告、準備委員会に於ける
「誓」を繰返して述べ、ついで近衛総裁から別項の如き挨拶
があり、最後に

私はこの運動の本質を考へ本運動の綱領となるものは、
大政翼賛の臣道を尽すことにあり、これ以外に綱領
も宣言もない、大政翼賛の臣道を実践することに尽き
る。

と頭書事務的に予定された宣言、綱領、規約の発表は、これ
を取りやめ、意義ある発会式を閉ぢた。これによつて一億
同胞待望の大政翼賛会は、いよ/\本格的実践行動の発足
をなすこととなつたのである。

近衛総裁挨拶

 わが国は正に一大転換期に際会し、外に善隣との盟約を
固うし、内に新体制を樹立し、大東亜の新秩序を確立する
と共に、進んで世界新秩序の建設に邁進致さねばならない
時が参りました。
 政府は聖旨を奉戴し、現時の国際情勢に鑑み、高度国防
国家の体制完遂に対して全力を挙げつゝあるのでありま
す。高度国防国家の建設は、政治・経済・文化等の各部面に
於て過去に於ける一切の殻を捨て、新らしき目標に向つて
一億一心の協力体制を整備し、又国家機構の各部面をして
最も円滑なる有機的回転をなさしめることによつて始めて
可能となるのであります。
 現内閣成立以来国内を挙げて、新政治体制の実現に対し
絶大なる共鳴と協力を得ましたことは、真に感激に堪へま
せん。こゝに本日大政翼賛会発会式を挙げ、万邦無比の國
體に基づき世界に比類なき理念の上に、大政翼賛運動を本
会の推進によつて発足するに至りましたことは、真に御同
慶に堪へないところであります。
 申すまでもなく、今やわが国は、明治維新にも比すべき重
大なる時局に直面してをります。わが大政翼賛の運動こそ
は、古き自由放任の姿を捨てて新らしき国家奉仕の態勢を
整へんとするものであります。歴史は今やわが国に対し
重大なる時機の到来を告げつゝあります。大政翼賛運動の
将来は真にわが国家の運命を決するものであり、しかも本
運動の遂行は容易の業ではありません。われ/\は前途に
如何なる波乱怒濤起るとも必ずこれを乗切つて進んで行
かねばならぬのであります。本運動の発足に当り、私は
その推進的原動力となつてこの難事業の完成に協力せ
られる役員諸君に、衷心より敬意を表するものであり
ます。
 各位はこの重大なる使命達成のため、挺身これに当られ
大御心を安んじ奉り、忠誠の実を挙げられんことを切望し
てやまざる次第であります。
 最後に大政翼賛運動綱領については、準備委員の会合
に於ても数次真剣なる論議が行はれたことを承つてをりま
す。しかしながら本運動の綱領は、大政翼賛の臣道実践と
いふことに尽きると信ぜられるのでありまして、このこと
をお誓ひ申上げるものであります。これ以外には綱領も宣
言も無しと言ひ得るのであります。若しこの場合に於て宣
言綱領を私に表明すべしと云はれるならば、それは「大政翼
賛の臣道実践」といふことである。「上御一人に対し奉り日
夜それ/"\の立場に於て奉公の誠をいたす」といふことに
尽きると存ずるのであります。かく考へ来て本日は綱領宣
言を発表致さざることに私は決心致しました。このことを
つけ加へて明確に申述べて置きます。