第一〇九号(昭一三・一一・一六)
  支那共産軍の実情         陸軍省情報部
  殷賑産業労務者の銃後生活刷新運動    厚 生 省
  岳州攻略戦            陸軍省情報部
  敵空軍殲滅戦成る         海軍省海軍軍事普及部
  顛落蒋政権の動向         外務省情報部
  最近公布の法令          内閣官房総務課
  経済戦強調週間

 

殷賑産業労務者の銃後生活刷新運動
      --- 銃後生活刷新班の提唱 ---    厚 生 省

 広東攻略につゞく武漢三鎮の陥落によつて、今次事変は所謂長期建設の新段階に入つたのであるが、この新態勢に応じて、克く聖戦有終の美を挙げるためには、銃後国民各自が文字通り「勝つて兜の緒を締め」、愈々堅忍持久、不撓不屈の旺盛な精神力を以て、これを日常生活に具現し、物心両面に於ける生活の刷新を断行することが極めて必要である。時局によつて収入の増加を来した所謂殷賑産業関係者は特にその必要があるわけで、このほどこれら殷賑産業労務者の銃後生活刷新の具体的方策を樹立し、その物質的、精神的両方面にわたる銃後生活全面の一大刷新を図ることとなつたのである。

  一 生活刷新の必要性

 今次事変の勃発するや、全産業労働者は、聖戦目的達成の協力について万遺憾なきを期するため、挙国一致体制下に於て、銃の代りにハンマーを以て勤労報国にいそしみ、各自の職場に於て所謂銃後の守りを堅くしてゐることは、嘗て見られないほど高潮に達してゐる。殊に軍需労務者は残業、夜業等の労働も敢へて厭ふことなく、汗と油の結晶によつて、軍需資材の供給を確保し、国防産業の銃後戦士としての任務を果してゐることは、前線将兵の労苦にも譬ふべきものがある。
 しかし、仔細にこれを検討してみると、時局によつて殷賑を示しつゝある産業、中でも軍需産業方面に於て所得の著しい増加に任せて、動(やゝ)もすれば、その生活に好ましからざる傾向を招来してゐる事例を見出すのである。即ちその生活がともすれば奢侈放縦に流れ、収入増加の大部分を不必要な交際、酒食のために費消し、高額な賃銀を得ながら、尚ほ且つ負債に苦しみつゝあるものも少くない。また農山村出身の青年独身労務者たちは、遽(には)かに比較的高額の賃銀を得たため、知らず/\の間に遊離の巷などに足を踏入れ、その将来ある健康と身体とを害ふに至る者も屡々見出されるのである。
 殷賑産業、中でも軍需産業労務者は事変の遂行に直接関係ある