第六二号(昭一二・一二・二二)
 南京陥落に際して         近衛内閣総理大臣
 五十億円を超えたる預金部資金 預金部資金局
 首都南京陥落す (附)海軍用語解説  陸軍省新聞班 海軍省海軍軍事普及部
 アルミニウム工業の発展      商工省工務局
 新選挙法に依るソ連の総選挙   外務省情報部
 愛国行進曲成る          内閣情報部
 最近公布の法令          内閣官房総務課

愛国行進曲成る 内閣情報部

 内閣情報部に於ては国民精神総動員を機として、
国民歌「愛国行進曲」を作成することとし、先づ歌詞を
募集し、去る十一月三日其の結果を発表したが(週報
第五十六号参照)、それと同時に一等当選歌詞に対す
る作曲の募集規定を発表した処、応募された作曲は締
切迄に到達したもの実に九千五.百五十五篇の多数に
及び、締切後到達したものも合すると一万四百八篇の
夥しい数になる。
 此の約一万の応募者を地理的に区別すると、歌詞の
場合と同じく、本土はもとより朝鮮、台湾、樺太、満
洲に及び、東に支那に出征中の将兵からも応募があつ
た。勿論何と云つても東京の人が断然多く応募し、全
部の約四分の一を占めてゐるとは云へ、。地方からの投
稿も普く全府県に平均され、而も非常な田舎と思はれ
る様な土地からも相当多数応募されてゐることは注目
に価する。
 兎に角一万と云ふ想像もしなかつた多数の作曲が応
募されたことは、日本全国に音楽が如何に普及してゐ
るかを証明するものであり、一万有余の人が五線譜の
上に懸命に作曲したと云ふことは、日本文化史上特筆
大書すべきことと云へよう。
 之等熱誠のこもつた応募歌詞を各審査員に於て慎重
なる審査を重ねた結果、遂に左記の如く当選者と選外
佳作者を決定の上、十二月二十日に発表した。
 尚同時に曩に歌詞発表の際、都合に依り発表をしな
かつた歌詞の選外佳作者も発表した。又歌詞の二等当
選以下の内容も追て週報誌上に発表する予定である。
 以上の如き経過に依り、此の一等当選作曲の決定を
俟つて愈々待望の愛国行進曲が生れた次第であつて、
今後は之が普及徹底を図つて、全国民が挙つて此の意
義ある国民歌を和唱する日の一日も速かに来ること
を待望するものである。

愛国行進曲募集作曲当選者

一等 東京市麻布区今井町三 瀬戸口藤吉
二等 東京市豊島区長崎仲町二ノ二五七一 平岡照章
三等 千葉県君津郡木更津町元新地二九 山中シヅエ

選外佳作

東京市赤坂区霊南坂町七 大中寅二
東京市渋谷区隠田三ノ一七三 林 良夫
東京市日本橋区本町三ノ三本町アバート 飯田信夫
仙台市名掛丁七一 福井文彦

愛国行進曲募集歌詞選外佳作者

熊本市黒髪町坪井七四九 岩下雄二
熊本県下益城郡杉合村御舟手 梶原清麿
東京市神田区鍛冶町三ノ五小学生の友社 木山一朗
山形県西村山郡寒河江大字寒河江甲三一四一 井上助太郎
山口県熊毛郡三井村 山本槐二
東京市中野区大和町三八八山内方 久野淳三郎

愛国行進曲 内閣情報部撰定


見(み)よ 東海(とうかい)の
   空(そら)明(あ)けて
旭日(ぎよくじつ) 高(たか)く輝(かがや)けば
天地(てんち)の正気(せいき) 溌剌(はつらつ)と
希望(きぼう)は躍(をど)る 大八洲(おほやしま)

おゝ 清朗(せいらう)の
   朝雲(あさぐも)に
聳(そび)ゆる 富士(ふじ)の姿(すがた)こそ
金甌無欠(きんおうむけつ) 揺(ゆる)ぎなき
我(わ)が日本(につぽん)の 誇(ほこり)なれ

起(た)て 一系(けい)の
   大君(おほきみ)を
光(ひかり)と 永久(とは)に戴(いたゞ)きて
臣民(しんみん)我等(われら) 皆(みな)共(とも)に
御稜威(みいつ)に副(そ)はん 大使命(だいしめい)

往(ゆ)け 八紘(はつくわう)を
   宇(いへ)となし
四海(しかい)の人(ひと)を 導(みちび)きて
正(たゞ)しき平和(へいわ) うち建(た)てん
理想(りそう)は 花(はな)と咲(さ)き薫(かお)る

いま 幾度(いくたび)か
   我(わ)が上(うへ)に
試練(しれん)の嵐(あらし) 哮(たけ)るとも
断乎(だんこ)と守(まも)れ その正義(せいぎ)
進(すゝ)まん道(みち)は 一(ひと)つのみ

あゝ 悠遠(いうゑん)の
   神代(かみよ)より
轟(とゞろ)く歩調(ほてう) うけつぎて
大行進(だいかうしん)の 往(ゆ)く彼方(かなた)
皇國(くわうこく)つねに 栄(さかえ)あれ