第四〇号(昭一二・七・二一)
 派兵に関する政府声明
 北支派兵に至る経緯       陸軍省新聞班
 軍機保護の必要性        陸軍省新聞班・海軍省海軍軍事普及部
 最近に於ける第二十九軍の不法事件 外務省情報部
 地方長官会議に於ける近衛内閣総理大臣訓示
 最近公布の法令         内閣官房総務課

  派兵に関する政府声明 (七月十一日) 

 相踵(つ)ぐ支那側の侮日行為に対し支那駐屯軍は隠忍静観中の処、従来我と提携して北支の治安に任じありし第二十九軍の、七月七日夜年蘆溝橋附近に於ける不法射撃に瑞を発し、該軍と衝突の已むなきに至れり。為に平津方面の情勢逼迫し、我在留民は正に危殆に瀕するに至りしも、我方は和平解決の望を棄てず事件不拡大の方針に基き局地的解決に努力し、一旦第二十九軍側に於て和平的解決を承諾したるに不拘、突如七月十日夜に至り、彼は不法にも更に我を攻撃し再び我軍に相当の死傷を生ずるに至らしめ、而も頻りに第一線の兵力を増加し更に西苑の部隊を南進せしめ、中央軍に出動を命ずる等武力的準備を進むると共に平和的交渉に応ずるの誠意なく、遂に北平に於ける交渉を全面的に拒否するに至れり。以上の事実に鑑み今次事件は全く支那側の計画的武力抗日なること最早疑の余地なし。
 思ふに北支治安の維持が帝国及満洲国にとり緊急の事たるは茲に贅言を要せざる処にして支那側が不法行為は勿論排日侮日行為に対する謝罪を為し、及今後斯かる行為なからしむる為の適当なる保障等をなすことは東亜の平和維持上極めて緊要なり。
 仍て政府は本日の閣議に於て重大決意を為し、北支派兵に関し政府として執るべき所要の措置をなす事に決せり。
 然れども東亜平和の維持は帝国の常に顧念する所なるを以て、政府は今後共局面不拡大の為平和的折衝の望を捨てず、支那側の速なる反省によりて事態の円満なる解決を希望す。又列国権益の保全に就ては固より十分之を考慮せんとするものなり。