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女は所詮女

       人見 絹枝

「女性の幸福への道」こんな御質
問をうけてからもうかれこれ十日
にも成るのに私しの頭には一寸も
まとまつたことが浮んで来ませ
ん。
 女と名のつく私ですが、まだ女
はどうしたら幸福になるだらうか
といふことを、考えたことは無い
のです。毎日/\忙しく暮して居
るこの現在行つて居る忙しい毎日
の仕事が一番私しには幸福な様で
それ以外には別に幸福に成りたい
とも又成つて見たいとも考えた事
が無い位でありますからことに他
の人々の幸福感等はわかりませ
ん。
 「女性の幸福」と云つて見まし
ても今の様に女子か奥様で無くて
外様に成つては一体どこが幸福な
のか各自各様にその幸福の道を求
めることと、私しは思うのであり
ます。此の間年末の買物に久し振
りに三越に行つて見ました。大阪
の町を歩いても、東京の浅草を歩
いても美しい吸ひつけられる様な
あでやかな着物を身につけて、こ
ろげる様なフェルト草履をはいた
今様の私し位の年の人をよく見ま
すが矢張私しは二ケ月振りに来た
三越の中で、幾十人か着物の陳列
棚の前に貴金属品の前に立つてゐ
るこの種の人等を見ましたが、此
の人々は又此の人々で女性の幸福
への道は私しなんかの到抵[ママ]察しら
れぬ所を求めていらつしやる事と
思つた。
 私しの恩師二階堂トクヨ先生の
様に一生女子体育の道に男も従ひ
えぬ仕事に先生の幸福はひそまれ
ても居るのでしやう。
 こんな事を考えていたら十人が
十人共同じ女性とは云へその幸福
な道のたどり方は異つてゐるのは
よくわかつてゐますが私しは今度
三ケ月許ロシヤ、ポーランド、英
国、フランス、スエーデンと相当
多くの国の女性につき合つて見ま
したが一度も外国の婦人をしらぬ
私しにはよく洋行帰りの「人等が
日本の女子はしつかりやらねばい
くじがない、何の役にも立たな
い」ことをよく云つてゐらつしや
るものでその通りだ!位に考え
てゐましたがその感じがむしろ反
対位に成つたのです。
 むりに日本の女が外国の婦人を
一から十迄まねる必要はない様で
す。外国の婦人に大いに真似をさ
してやりたいものも日本の女は多
くもつて居る様に思はれます。先
輩の人等の中にも男女平等をよく
唱えていられる様に思ひますが私
しはこの意味から云つて無理にア
メリカ等の思想を入れて男女平等
を唱える必要は無いかと思ひま
す。たゞおことわりは重々してお
きますが私し一個人の考えで今年
やつと二十を一つ超した者の云ふ
ことであること丈をおふくみ下さ
る様に……
 私のやつてゐる運動競技の方で
も私しの趣味上からこぢつけて云
つて見まして男子が十六歳にも成
れば力の方では決してどんな女で
も勝てないのです。
 十六歳に成つた許りの男の子だ
と思つてもホップ・ステップ・ジ
ヤムプの如きは楽に私しの十一米
六二五位を破つて居ます。体力に
ともなつて智力の方でもたまには
男子をしのぐ才能を持つ女性もあ
りますが男女の同年輩の者を比べ
て見ましたら決して同じと云ふこ
とはないだらうと云ひます女学生
と中学生の同じ二年生でもたしか
に智力の働きは平等のものではな
い様です。
 女は女らしく。……私しはこの
言葉を今の人々はとりちがえて考
えて居るのではないだらうかとよ
く考えさゝれます。それは運動等
を盛にやる、それを女らしくして
置けと云はれる人もありますが私
しは女が運動したから女らしく無
い……とは云はれぬだらうと思ひ
ます。
 むしろ女の身女の智力で無理に
男子の中に出シヤバラなくても
いゝと思ふ。女らしく無い女が多
くないでしやうか……私しはよく
考えて見るのは昔しからもつて居
た日本の女性の美しい情緒……そ
れから生れる美しい女性の幸福が
次第にすたれてその幸福感が他に
うつつて行く様に思はれますがそ
の為にかえつて現代の女性の心に
みにくい情緒が働いてきたない跡
を新聞の三面に出してゐるのでは
ないでしやうか。
 運動場であんなにあばれ廻る私
しが此の様な事を云ふのは大変お
かしく思はれますが私しは昔しか
ら日本の女性のもつ美しい優しい
女らしい幸福をいつまでも保つて
ゆきたいと思う主義の者です。
 先帝陛下の大喪に合つてもあま
り平常と変らぬあのうき/\した
今の女学生等を見ると私しは腹が
立つ様に成ります。
 運動競技の方でも決して日本の
女子は真実味のない実に浮調子の
選手の多いのは今の「女」と云ふ
ものゝ心を現しているものではな
いでしやうか。
 男子の人等の心それも又昔しの
人等とちがつて、変な、どこに天
皇陛下の臣かと思はれるたましい
のぬけた様な人をよく見ますがせ
めて女子丈でも十分その足どりを
しつかりふみしめて進んでゆきた
いものです。
 夫を助け、子を育て、大黒柱を
よりかためよく小さい時分に家の
後を継ぐ姉に祖母が教えて居たこ
の言葉を忘れもしませんがこの三
つを正しく守つて、心に何の不満
も持たず、何事も善意に世の中を
わたつて行つたら又私し等女性は
その幸福が浮んで来るのではあり
ますまいか。まだ/\日本の女子
があまり大きな野心のもとに男子
の間にたちまじる女らしくない女
をよして心根の固い何事にぶつか
つても崩れれぬ精神をつくることが
何よりも女性の幸福への路にたど
りつく所ではないでしやうか。
 私し自身修養の途にある若い者
の事とてその道をいろ/\とさが
してゆく所ですから以上の考えは
たゞ私の頭にうかんだことをかき
つらねたにすぎませんからよろし
く皆様の御考へをあふぎ一面無作
法の点をおゆるしあらんことをお
ねがひするところであります。

         『改造』二年二月号



婦人雑誌と性慾記事
コムマーシヤリズムの
一表現

        山川 菊栄

 ピー〈ドンノ\とはやしたて
る苗太鼓の音に誘はれて、群がり
集まる裏町の子供を柏手に、飴屋
が清じて見せるのは非芸術的な踊
り(↑)にきまつて居り、歌つて
聞かせるのは野卑な歌にきまり、
一銭二銭の銅貨をひきかへに売り
つけるのは、粗悪と非衛生の見本
のような代物にきまつてゐるのは
いふまでもない。誰もあんな踊り
や、あんな歌を、すぐれたものだ
とも、子供のためになるものだと
も思ふ者はあるまいし、あんな食
(81)
随筆・エッセイ