対支借款団加入の是非



米国の発議により支那の借款を妄に引受くべき新銀行団を組学べきの案が獣に於て問題となつてから、
             やかま          すで
我国に於ても之に加入するを可とするや否やの問題が矢釜しく論ぜられて居る○政府の意見としては已に加入す
ることに決心したやうだが、民間には反対論がまだ〈相当に強いやうだ○併し如何に反対論が強いとしても、
一体日本表のカで共成立を妨げ得るや否や、又己に出来たものに我国独り加入せざるを得るや否や、と云ふ閑
寂になると、加入の是非を論ずる丈けが野暮だと云ふ感がないでは無い0要するに之が成立するものと決まれば、
                 だ
之に対する我国の態度に就いては尉祁論が無い0唯若し滋に此問題に就いて我々に兎や角講究するの余地ありと
                                  も
すれば、斯う云ふ団体が果して出来るか何うかの間苧ある0換言すれば斯う云ふ団体は今日の支那の為めに必
要であるか否やの点である0と云ふたら人或は斯ういふ団体の成立すると否とは支那が真に之を必要とするか否
かに依つて誉らないと云ふだらう0併しながら支那の利害を第二にして、各国の利害が第一であると云ふなら、
今日あ去ふ団体の新たに発生すべき理由はない0各国が銘々自国の立場のみを考へて居るのなら、現に我国で
も我国のみの立場を考ふるものが此企てに反対であるが如く、支那に特殊の利害関係を有する各国が固より共成
                                       h)し
立を希望する筈がないからである0然らば今度の新らしい企ての動機は、寧ろ主として支那の利益を計つてやら
うと云ふ事にありとしなければならない0其処で問題は一転して支那の為めに新借款団は必要か否かと云ふ事に
なる0単純な普通の理論から云へば固より無い方がい、0各国の自由競争に任かした方が、支那にとつて壷有
                                                   もと

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利な条件で借款の朝が開かるゝ道理である○併しながら之は近代国家の状態に於て初めて云ふ可き事であつて、
今日の支那の如く二三少数の野心家が陰謀を以て巧みに政界を撹乱し得るやうな所にあつては、本当の自由競争
は行はれない。或一国が或一派と結托し、利益の交換によつて互に助け合うと云ふ腐れ縁を結ぶといふ事は、之
まで余りに多く且つ余りに明白な経験を積んで居る。我日本が斯くの如き変態的政情を利用して得をしたか損を
         しばち  お
したかの実際問題は暫く之を措き、公平冷静に支那の為めを思ふ以上、借款上の形式的自由競争主義は断じて之
を採用すべきではない。斯く考へれば対支新借款団は一時の便宜として今日の支那に必要である。従来の自由競
争主義に特殊の利害関係を有するものは、支那でも外国でも新計画に反対して居るやうだが、我々は隣邦の健全
なる発達の為めに新借款団の成立を歓迎し、而して此明るみの中に於て正々堂々と日本の利権を支那に拡張する
〔『中央公論』一九一九年八月「小題小言九則」のうち〕
の途を講じたい。

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   いずれ