農民労働党の禁止
無産政党間題に関し前後数回に亙りて本欄に公にせし論策を読まれた諸君に取て、無産政党の成立並に其禁止
に至る最近の経過は甚しく意外と感ぜられぬ所であつたらう。吾人は始めから単一政党主義には反対した。殊に
しよ・つよ・つ
総同盟側に対しては寧ろ勇敢に脱退分離を決行すべきを懲漁した。果せる哉、十一月二十九日の綱領規約委員会
に於て総同盟は脱退を声明した。斯(して無産階級の政治運動は、吾人の希望の如く二つに分れてしまつたので
ある。余りによく吾人の予言通りに運んだので、二三の読者から、総同盟と私との間に何等かの連絡なきやを問
はれたが、私は総同盟の幹部に多くの友人を有するも、直接之等の問題につき語り合つたことはなく、間接にも
何の進言をもしたことはない。つまり大勢に基いた私の判断が事実の上に現れたといふに過ぎぬのである。
併し十二月一日やつとの事で成立した農民労働党が直ぐ政府の禁止する所となつたのは、私の全く意外とする
所であつた。準備委員会が、総同盟の脱退に対して、その敵手の労働組合評議会をも自発的に脱退せしめ、斯く
して相争ふ両チヤムピオンをのけて中立の第三者を以て結党の功を挙げたとは云へ、沿革の上から評議会派の勢
力が依然優勝たるべきは疑を容れなかつた。夫れにしても之を禁止するは決して適当の処置と思へぬが、併し所
謂共産主義なるものに附する為政階級の在来の解釈に依れば、禁止されるのが当然の運命であつたかも知れぬ。
私一己としては、禁止を以て甚だ遺憾なことゝはする。さりとて共産主義的の政党に謳歌するのでないことは言
ふまでもない。
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農民労働党の成立並に其の禁止に関連して、私は更に共産派と私共の立場との根本的相違点や、又無産政党に
ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ 】そのうち
対する政府の見解等につき大に論じて見たいと思ふことがある。其中総同盟側でも何等かの活動を始めるだらう
から、其時を機として再び読者の教を乞ふことにしやう。
〔『中央公論』一九二六年一月〕