ハーデイング成功の要因
昨年の米国大統領の選挙で共和党のハーデイングが予想外の大多数で当選したことは内外共に驚いて居る所で
いす ひと
ある。其原因の執れに在るやは米国の政情を研究して居る者の斉しく知らんとする所であるが、表面の事実から
云ふと、是は疑もなく民心が民主党を去つて共和党に傾いた事々語るものである。が併し新に多数の婦人の投票
だけ いわゆる
などが加つて居るので、どれ丈が新投票であり又どれだけが所謂民心の転移の直接の表現と観るべきかは、軽々
ニューヨーク
には断定することが出来ぬ。之に就て近着の紐育サン紙上にエール大学の経済学の教授アーヴイング・フィツ
シヤー樽士の研究が載つて居つたから、次に之を紹介して見よう。
よ
フィツシヤー教授は先づ最近三回の大統領選挙の実蹟に拠り、各州に於ける両政党の得票の転移を表示して居
る。之を左に転載するが、之を観るについては次の諸点を心得て置くの必要がある。(一)此表は共和党の優勢な
処から段々民主党の優勢になる順序に各州を並べてある。(二)区劃の大小は有権者の多少に比例して作られ一てあ
る。即ち図に示されてある通り、此意味に於てニュー・ヨーク州が最大で、ネヴアダ州が最小である。(三)共和
民主両党以外の得票は勘定に入れてない。又事実無視しても構はない程少数である。(四)一九一二年の共和党の
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ハーデイング成功の要因
昨年の米国大統領の選挙で共和党のハーデイングが予想外の大多数で当選したことは内外共に驚いて居る所で
いす ひと
ある。其原因の執れに在るやは米国の政情を研究して居る者の斉しく知らんとする所であるが、表面の事実から
云ふと、是は疑もなく民心が民主党を去つて共和党に傾いた事塞叩るものである。が併し新に多数の婦人の投票
いわゆる
などが加つて居るので、どれポが新投票であり又どれだけが所謂民心の転移の直接の表現と観るべきかは、軽々
ニューヨーク
には断定することが出来ぬ○之に就て近着の紐育サン紙1に子ル大学の経済学の教授アーヴイング・フィツ
シヤー博士の研究が載つて居つたから、次に之を紹介して見よう。
よ
フィツシヤー教授は先づ最近三回の大統領選挙の実蹟に拠り、各州に於ける両政党の得票の転移を表示して居
る。之を左に転載するが、之を観るについては次の諸点を心得て置くの必要がある。(一)此表は共和党の優勢な
処から段々民主党の優勢になる順序に各州を並べてある。(二)区劃の大小は有権者の多少に比例して作られてあ
る○即ち図に示されてある通り、此意味に於てニュー・ヨーク州が最大で、ネヴァダ州が最小である。(三)共和
民主両党以外の得票は勘定に入れてない。又事実無視しても構はない程少数である。(四)一九三年の共和党の
一九二ハ年
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得票はタフトとルーズヴエルトとのを合算してある。
右の表に見へてゐる真申の点線即ち一九一二年のは、大体一九〇八年のと同じである。そこで一九〇八年より
一九一二年までは大体同じ様な形勢で続いたが、夫れが一九一六年に至り著しく共和党の勢を減じたと云ふ事が
判る。最も著しく共和党の優勢を占むるヴエルモントが六四パーセントで、次のペンシルヴエーニアが五七パー
セント、最少の南カロライナが二パーセントになつて居る。
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三
さて前記の表の示す所に依り最近の形勢を概括的に説明すると次のやうな事になる。
H一九一二年の選挙に於て、民主党は従来の地盤を其佳維持せしに過ぎず、新に敵の地盤を侵略しては居ぬ。
かかわ
左れば其の得票も全投票数の四五パーセントで、依然少数党なのである。夫にも拘らずウィルソンの当選を見た
のは共和党が分裂してタフトとルーズヴエルトとに投票を割いたからである。
、〇一九一六年には民主党が著しく優勢を示すことになり、即ち五一パーセントを収めて多数党となつた。之
とつ ち
は崩壊せる進歩党の五分の一余を羅致し得たのが主たる原因の一である。
しかのみならす
⇔一九二〇年には旧進歩党系の脱走組の大部分は共和党に帰参した。加之民主党にして若干ハーデイング
かつ
に投票したものもある。是れ民主党が南北戦争以来未だ曾て類例のない三六パーセントと云ふ空前の少数に墜ち
た最大の原因であらう。
因
要
の
功
成
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次に、八六四年以来の選挙に於ける民主党の勢力の消長を表示して見よう。
年次
一人六四
一八六八
一八七二
一人七六
一八八〇
一八人四
一入八人
一人九二
一八九六
一九〇〇
一九〇四
一九〇八
一九一二
一九一六
一九二〇
当選者
リンカーン
グラント
グラント
ヘーズ
ガーフヰトルド
クリーヴランド
ハリソン
クリーパワランド
マッキンレー
マッキンレー
ルーズヴエルト
タフト
ウィルソン
ウィルソン
ハーデイング
(競争者)
(マクレラン)
(セーモア)
(グリーレI)
(チルデン)
(ハンコック)
(プレーン)
(クリーヴランド)
(ハリソン)
(プライアン)
(プライアン)
(バーカー)
(プライアン)
(タフト、ルーズヴエルト)
(ヒューズ)
(コックス)
民主党得票割合(百分率) 増減割合(百分率)
四五
四七
一四一四
五二
五〇
五〇
五〇
五二
四八
四七
四〇
四五
四五
五一
三六
二
三
八
二
〇
〇
二
四
一
七
五
〇
六
一五
之に由て観ても、今度程転移の甚しいのは空前の出来事だと云ふ事は分らう。
一九〇八年以来の形勢が順当な
かえ
ものであり、一九一六年の民主党の成功が特別な事情に基くものとし、夫れが一九二〇年に元の通りに復つたも
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のとするなら、六パーセント位の出入で了るべきであつた。夫れが十五と云ふ驚くべき数字を示したのだから、
世間の人が共意外なるに驚異の眼を見張つたのである。
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五
以上の事実を結果した原因は何処に在るか。世間では政局変転の民心の要求、ウヰルソンに対する嫌悪、国際
聯盟の不評判等から、婦人参政権の許容と禁酒法施行に対する不平との影響までを挙げる。之等はみな看逃す可
らざる要素であらう。併し予の観る所に依れば、次の諸点が特に吾人の詳細なる攻究に催すると考へる。
そそ
H永く政権を執つて居る者に対する自然的反感が物価騰貴其他の四年間の異常の出来事によりて一層唆られ
たと云ふ事実がある。在野党が代れば必ず面目を一新して不平を癒さるゝと限らないけれども多数の民衆は無反
省に変革を思ふ様になるものである。民主党没落の一主要原因を為した物価騰貴の趨勢が、偶終にも共和党の根
拠たる実業界の利得を多くし従つて同党の運動費を潤沢にしたと云ふ事情も併せ考ふるの必要がある。
アイルランドならげ
○外国種の市民の不平が最も著しく民主党を傷けた事も看逃してはならぬ。愛蘭併に独嗅諸国より来任して
けんえん ま イ タ nノ ア
市民となつたものが民主党政府に糠焉たるものあるは言ふを瑛たない。伊太利種もフィウメ問題について不平が
こぞ なかん】Tくドイツ
ある。之等は今度の選挙に於て挙つて共和党に走つた。就中独逸種がハーデイングを支持した関係は最も著しい。
されば、之等外国種市民の多い州ほど衛票の転移の程度が大きいのを見る。共和党の成功に寄与した原因中之が
一番著大なものかと思はれる。
むし
臼婦人参政権の影響としては寧ろ民主党に有利であつたやうだ。婦人の選挙権者は共和党よりも寧ろ民主党
の方に傾いて居つた。之れ恐くは(イ)民主党の方が余計に国際聯盟に同情ありと信ぜられし事と、(ロ)従来禁酒
法其他婦人側の主張を多く民主党が採用せし事とに因る者であらう。実際の統計から帰納して見ても、婦人参政
権の施行によりて著しく有権者数を増さぬ諸州(カルフォルニア、オレゴン、ワシントン、モンタナ、ネヴアダ、
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コロラド、イリノイ、ミシシッピI等)では左程でもないが其反対に著しく之を増加した諸州(ロードアイランド、
マサチユーセッツ、デラウエーア、ミネソタ、インデアナ、ニューハンプシヤー、ウエストヴアーヂニア、ノー
スダコタ、ニューゼルシト、オハイオ、オクラホマ、ノースカロライナ、アラバマ等)では、共和党得票数の増
率の割合は非常に少いのである。婦人の多数はハーデイングよりも寧ろコックスの方を支持したものと見へ溝
〔ママ〕
給ヨ酒法施行の影響は大したものがない。今度の憲法改正の結果新に禁酒となつた州と従前から禁酒を実行
して居つた州とを比較して見ると、両党得票の転移の計数上に何等著しい差異を示してゐない。
以上挙ぐる所を以て観ると今次の選挙の結果も亦特別の事情に由るもので、之を以て両党の関係は今後も永く
此割合で進むものと断ずることは出来ぬ。只如何に変るかは両党今後の策戦と其功績とによることは言ふを待た
ない。
因
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〔『国家学会雑誌』一九二一年六月〕