【北支事変に関する宣伝実施要領】(昭和十二年七月二十二日)情報委員会 
【職員名簿】(『内閣情報部要覧 昭和十二年九月二十五日』による) 
内閣情報部事務分掌  情報官事務分担表(昭和一二・一〇・一四現在) 
事務室事務分担表
   (一)昭和一二・一〇・一四現在
   (二)昭和一三・四・八現在 


 


【北支事変に関する宣伝実施要領】(昭和十二年七月二十二日)情報委員会 

一、一般方針 

一、今次事変は帝国の隠忍に拘らず支那側の不法暴戻に依り、今や拡大して真に重大なる決意を採り暴支を断乎膺懲せざるを得ざるに至れるを以て、深く国民の覚悟を堅めしむるとともに、世界の輿論を我が方に有利ならしむる如く導くこと。 

一、宣伝の重点は国内指導階級及び英米独伊に指向し将来事変の後始末に対処することをも考慮し、今次事変の実の意義を弘く認識せしむるに努む。 

 二、対内宣伝 

一、方針 

1 国論を統一し挙国一致の実を挙げ、今回こそは如何なる犠牲を払いても徹底的に支那を膺懲して之を覚醒せしめ、日支紛争の根本原因を芟除し、東亜永遠の平和を確保せんとする帝国上下の不動の決意を固め、之を対外的特に支那に反映せしむ。 

2 今事変の由て来る根底を充分に徹底せしむると共に、此の機会に支那問題の重要性を知らしめ、其の正しき認識を一般に与ふるに努むること。 

3 今事変は情勢の推移によりては第三国の介入し来ることあり得べく、又事変は相当長期間続くものと判断せらるるを以て、日本精神の発揚による国民の精神的団結を一層鞏固にし、盡忠報国、必成の信念を益々昂揚して、対手国の行う思想的宣伝謀略をして乗ずる罅隙なからしめ、今後財政、経済乃至資源の各方面に種々の困難に遭遇するも堅忍持久毅然として動かざる国内輿論を誘起し之を一時的興奮に終らしめず堅実不動のものたらしむること。 

 二、具体的宣伝の要項 

 1 帝国外交方針の基調は日満支三国の共存共栄に依る東亜の平和の確保にあることを闡明す。 

 2 支那側の排日、抗日、侮日及共産党の策動は日満支三国の共存共栄を阻礙(註=じやまだて)すべきものにして、今事変の根困亦実にここに存するを以て、帝国としては之が徹底的根絶をなすべき決意を有することを明にす。之が為過去に於ける国民政府及国民党其他の不信不法、排日抗日侮日の事実、排日抗日教育徹底の実状、共産党及人民戦線運動の現況を明ならしむ。 

 3 日支の関係、相互依存性の聞明 

 イ、日満支三国の依存性を諒解せしむること 

 ロ、北支は日満支三国提携共助の基地にして、其の安寧は帝国及満洲存立の為には勿論東亜安定を冀う帝国の常に至大の関心を有すること。 

 4 派兵の確乎たる目的の闡明。 

  支那中央政府並びに暴戻なる支那軍を膺懲し、反日分子の策動を根絶せしめ、従来の誤れる態度を清算せしめて真の日支提携実現の基礎を築かんとするに在り。 

 5 帝国の北支工作の目的と限度 

  帝国北支工作目的は北支の安定と赤化防止にあること、右実現に付ては帝国は領土的野心を有せざるは勿論、北支を第二の満洲国たらしめ、或は北支を占領し次で中南支を領有せんとするが如き意図なく、右の如き噂は全く為にせんとする誣言なることを認識せしむること。 

 6 中南支に於ける帝国の権益は、数十年来粒々辛苦の結晶にして、帝国の経済的発展上重要なる地位を占むるものなるところ今や支郡側の不法に依り其の存続を脅威せらるるに至れるを以て、帝国としては之が保全の為厳重公正なる措置を執ること。 

 7 支那の民族性、軍隊の素質、中央地方政府の特性等事変の将来性に関係あるものを充分に認識せしむること。 

 8 思想戦、宣伝戦、経済戦等に応ずる如く全国民の実践的運動を促進すること。 

 三、対外宣伝 

一、方針 

1 帝国は東亜永遠の平和を実現する為、必要にして且最も速に事態を収拾すべき處置を執るものにして、列国の関与は事態を拡大紛糾せしめ且列国の利権が却って脅威せらるるに至るべき所以を説明し、我方の行動に対し妨害を企つるものに対しては国を挙げて之を排除するも帝国の公正なる態度に対し正しき認識を有する列国とは飽くまで協力するものなることを知らしむ。 
2 事態拡大するのやむを得ざるに至りたる真相を聞明す。 
3 帝国の東亜に於ける現在の地位、政策を歴史的に説明し、帝国が侵略的、好戦的なりとする誤解を一掃することに努む。 
4 帝国は何等領土的野心を有するものにあらざるは勿論、列国の権益は之を尊重保護し又無季の支那民衆を決して敵視するものにあらざることを知らしむ。 
5 支那の排外的政策の阻止及容共政策の防遏は東亜の平和、列国の利権確保の為不可欠の要件なることを闡明すること。 
6 支那の本質並びに日支の特殊関係を闡明し、支那の安定、列国の利権確保の為には日本と提携するを有利とすることを知らしむ。 
7 列国の対支武器輸出は事態を速に収拾し、秩序を恢復する所以に非ざることを闡明す。 
8 支那の不法、不信行為並びに支那人の残忍性を具体的、印象的に宣伝すること。 
9 挙国一致の国内与論を海外に反映せしむること。 
10 事変久しきに亘るも我財政は充分之に耐え得ることを列国に宣伝すること。 

 四、対支宣伝 

一、方針 

 1 我が挙国一致の国論と政府の鞏固なる決意とを充分反映せしむること。 

 2 帝国の真意を充分に理解せしむると共に日本を措いて支那の安寧と繁栄は望み得ざることを闡明すること。

 3 排日抗日を支那統一の具に供せんとする南京政府の意図の誤れること及日支の将来に重大なる禍根を残すことを明にす。 

 4 支那の国力充実を過信し日本の実力を軽視したることを支那側に悟らしむること。 

 5 支那民衆に対しては、本紛争の重大化は支那の再興を中途にしてして挫折するものなること、排日抗日は蒋介石の支那統一の具なると共に共産党の支那赤化の方便にして、かかる策動に経ることの如何に不幸なる結果を招来するものなるかを充分認識せしめ、日本は無辜の支那民衆を敵視するものに非ざることを自得せしむ。 

 6 以夷制夷 政策は支那を国際管理に導く虞あることを認識せしむ。

 



 

 【職員名簿】(『内閣情報部要覧 昭和十二年九月二十五日』による) 

部長 横溝光暉
書記官 川面隆三
喜多長雄
西村直己
利光洋一
森 厳夫
(兼)内閣印刷局書記官  上条 勇
(兼)内閣紀元二千六百年祝典事務局書記官
   兼内務事務官
武若時一郎
情報官
       (内閣情報部書記官) 
川面隆三 
喜多長雄
西村直己
利光洋一
森 厳夫 
(常勤) 
企画院調査官 尾之上弘信 
外務事務官兼外務書記官 太田三郎
内務事務官 小貫 弘
大蔵事務官侯爵 伊達宗彰
陸軍砲兵中佐 清水盛明
陸軍歩兵大尉 多田督知
海軍少佐 佐藤豊三郎 
司法事務官 柳川真文
文部省社会教育官兼教学局教学官 原 元助
逓信省事務官 山岸重孝
鉄道省事務官兼国際観光局事務官  津田弘孝 
委員
内閣書記官 稲田周一 
内閣印刷局長 土星耕二 
内閣紀元二千六百年祝典事務局長 歌田千勝
法制局参事官 樋貝詮三
企画院次長 青木一男 
対満事務局次長 原 邦道
外務次官 堀内謙介
外務省情報部長 河相達夫
外務書記官 田代重徳 
外務書記官 市河彦太郎
外務書記官 矢野征記 
内務次官 広瀬久忠
内務省地方局長 坂 千秋
内務省警保局長 安倍源基 
内務書記官 清水重夫 
内務書記 加藤於丸
内務書記官 大坪保雄
内務事務官 富田健治
大蔵次官 石渡荘太郎 
陸軍次官 梅津美治郎
陸軍少将 町尻量基
陸軍歩兵大佐 原  守
海軍次官 山本五十六
海軍少将 野田 清
海軍大佐 保科善四郎
司法次官 長島 毅
文部次官 伊東延吉
文部省社会教育局長 田中重之
文部書記官 清水芳一
文部省体育官 岩原 拓
文部省教学局部長 阿原謙蔵
文部省教学局書記官 田中義男
農林次官 井野碩哉
商工次官 村瀬直養
商工省商務局長 新倉利広
商工書記官 豊田雅孝
逓信次官 平沢 要
逓信省電務局長 藤川 靖
逓信書記官 立花 章
逓信書記官 宮本吉夫
鉄道次官 喜安健次郎
鉄道省国際観光局長 田  誠
鉄道省国際観光局書記官 高田 寛
拓務次官 萩原彦三
警視総監 斎藤 樹
情報官
外務書記官子爵 本野盛一
外務事務官 山田芳太郎
内務書記官 内藤寛一
大蔵書記官 入江 昂
陸軍歩兵大佐 雨宮 巽 
陸軍歩兵大佐 河村参郎
陸軍砲兵中佐 唐川安夫
陸軍歩兵中佐 高島辰彦
陸軍歩兵大尉 竹田光次
海軍大佐 山崎重暉
海軍中佐 山本善雄
海軍中佐 柳沢蔵之助
海軍少佐 大前敏一
海軍少佐 扇 一登
司法書記官 船津  宏
文部書記官 朝比奈策太郎
農林書記官 湯河 元威
商工書記官 菱沼  勇
逓信書記官 安田丈助
鉄道書記官 平川 孝
拓務書記官 赤木親之
警視庁官房主事 村田五郎
大阪府書記官 長谷川透
参与 小林一三
従四位勲二等 藤沼庄平
正四位勲三等 片岡直道
従四位勲三等 芦田 均
勲四等 増田義一
緒方竹虎
大谷竹次郎 
高石真五郎
野間清治
古野伊之助

                     


    

内閣情報部事務分掌  情報官事務分担表(昭和一二・一〇・一四現在) 

情報官名 事務連絡
担当庁
分担事務
川面 各庁 一般事務総括、庶務会計一般
喜多 各庁 会議事務主宰、団体関係庶務総括、時局対処諸方策、雑誌関係
西村 各庁 国民精神総動員関係事務、地方情報委員会事務、情報量伝政策の研究調査
手光 各庁 時局対処方策(特に農林行政に付き)、情報宣伝政策の研究調査
各庁 会議事務、同報情報の編集、情報宣伝政策の研究
尾之上 各庁 同盟関係事務総務事務補佐、新聞査閲
太田 外務省 時局対処方策(特に外交に付き)、東京ガゼット編輯、映画政策
小貫 内務省 国民精神総動員関係庶務総括、週報関係時局対処方策(特に内務行政に付き)、新聞査閲
伊達 大蔵省 時局対処方策(特に大蔵行政に付き)、国民精神総動員関係
清水 陸軍省 時局対処諸方策、時局宣伝関係庶務総括、国民精神総動員関係 
多田 同右補佐、思想戦に対する研究調査、国防に関する基本的研究調査
竹田 陸軍関係庶務、陸軍関係の情報蒐集整理、その他全般の補佐
光延 海軍省 時局対処諸方策、国民精神総動員関係、国民教化宣伝庶務総括
佐藤 同右補佐、思想戦に対する研究調査
山岸 逓 信 省 時局対処方策(特に逓信行政に付き )、週報関係
柳川 司法省 時局対処方策(特に司法行政に付き)、情報宣伝法務関係研究
文 部 省 時局対処方策(特に文部行政に付き)、国民精神総動員関係
商 工 省 時局対処方策(特に商工行政に付き)、国民精神総動員関係
津 田 鉄 道 省 時局対処方策(特に鉄道行政に付き)、紀元二千六百年宣伝関係
拓 務 省 時局対処方策(特に拓務行政に付き)、外地
上条 宣伝出版の技術の調査研究、週報印刷普及関係
武若 紀元二千六百年関係




事務室事務分担表 (一)昭和一二・一〇・一四現在 

 

 

所掌事務
庶務班 事務室統括、人事処理、庶務一般、会議事務、回報電話事務、その他
文書収受、発送、回付、会計、自動車管理、用度、庁内取締り
調査班 地方情報委員会関係事務、各種情報整理、時局及事変宣伝資料事務
国民精神総動員、国民教化運動、紀元二千六百年に関する事項、図書管理
整理班 情報電報処理、新聞及通信整理、印刷処理
編輯班 週報編輯事務、各種宣伝資料編輯、翻訳、情報政策調査、各種宣伝資料編輯




 (二)昭和一三・四・八現在 

係別 所管事務
(第一事務室)
主任 庶務係
  川面書記官
部内事務の連絡統制、人事、予算、会計、用度、庁内取締
(第二事務室)
主任 情報係
  西村書記官
各庁情報の処理、情報電報の処理、新聞通信の整理
情報の印刷、配布、回報電話事務
(第二事務室)
主任 調査係
  利光書記官
調査資料整理事務
各種宣伝方策(時局対処、国民教化、国民精神総動員、紀元二千六百年)事務、各種図書出版物の整理、地方情報委員会事務
(第三事務室)
主任 宣伝係
  尾之上情報官
週報編輯
写真宣伝、写真週報編輯
宣伝冊子事務
各種宣伝実施
宣伝係の事務、連絡統制
主任 西村書記官
主任 森書記官
主任 森書記官
主任 尾之上情報官
主任 尾之上情報官

(三) 昭和一三・七・一〇現在

情報官事務分担表 (昭一三・七・一〇現在)


内閣情報部事務分掌規程(昭一四・六・二一) 

第一条 内閣情報部を左の組織に分ち事務を分掌せしむ 
  情報官室 
  第一課 (総務課) 
  第二課 (文化課) 
  第三課 (精動課) 
第二条 情報官室は左の事務を掌理す 
  一、政府の声明に関する事項 
  二、内外の情勢判断に関する事項 
  三、内外宣伝方策の企画に一関する事項 
  四、報道政策に関する事項 
  五、情報、報道及び啓発宣伝に関する各庁間の連絡調整に関する事項 
第三条 第一課(総務課) は左の事務を掌理す 
  一、情報部事務の統括に関する事項 
  二、人事に関する事項 
  三、文書の接受発送に関する事項 
  四、予算及び会計に関する事項 
  五、政府の声明等の起草に関する事項 
  六、内外情勢判断資料、宣伝方策資料の総合整備に関する事項 
  七、新開発表に関する事項 
  八、報道政策の実施及び調査に関する事項 
  九、同盟通信社に関する事項 
  十、新聞、通信、放送、映画、演劇、写真、その他文化統制の方策の樹立に関する事項 
  十一、各省連合時局問題研究会及び地方時局懇談会、その他講演事務に関する事項 
第四条 第二課(文化課)は左の事務を掌理す 
  一、防共思想戦に関する事項 
  二、思想戦に関する諸調査に関する事項 
  三、思想戦講習会に関する事項 
  四、出版物、放送、映画、演劇、音楽、写真、展覧会等に関する諸調査、並にこれらを通じての啓発宣伝の指導及び実施に関する事項 
  五、週報、写真週報、東京ガゼットその他定期及び不定期刊行物の編輯に関する事項 
  六、その他啓発宣伝実施に関する事項 
第五条 第三課(精動課)は左の事務を掌理す 
  一、国民精神総動員の企画に関する事項 
  二、国民精神総動員委員会の庶務に関する事項 
  三、国民精神総動員中央連盟に関する事項 
  四、国民精神総動員に関する各庁及び各種団体との連絡に関する事項 
  五、国民精神総動員の実績査覈(註=調べ考察)に関する事項 
  六、内外国民運動の調査に関する事項 
  七、その他国民精神総動員に関する事項 



  

 内閣情報部分課規程(昭和十五年六月一日施行) 

第一条 内閣情報部に左の四課を置く 
   第一課 
   第二課 
   第三課 
   第四課 
第二条 第一課に於ては左の事務を掌る 
   一、文書及び人事、会計に関する事項 
   二、事務の企画、連絡に関する事項 
   三、国民精神総動員に関する事項 
   四、他課の主管に属せざる事項 
第三条 第二課に於ては左の事務を掌る 
   一、内外報道に関する各庁事務の連絡調整に関する事項 
   二、各庁に属せざる報道事務に関する事項 
   三、新聞雑誌用紙統制委員会に関する事項 
第四条 第三課に於ては左の事務を掌る 
   一、国策遂行の基礎たる情報に関する各庁事務の連絡調整に関する事項 
   二、各庁に属せざる情報蒐集の実施に関する事項 
第五条 第四課に於ては左の事務を掌る 
   一、啓発宣伝に関する各庁事務の連絡調整に関する事項 
   二、各庁に属せざる啓発宣伝の実施に関する事項 
   三、週報ならびに写真週報編輯に関する事項 


極秘 

支那事変に対する宣伝方策大綱 計甲一八号(四次)/昭和一三・一・十七
内閣情報部

一、一般方針 

 一、本事変に際し帝国の庶幾する所は、飴く迄支那に於ける抗日勢力及赤化勢力を芟除し、日支の真の互助提携を齎らしむることにより東亜永遠の平和を確立せんとするに在ることを、凡ゆる機会に於て内外に閘明す。 
 二、帝国は過去半歳に亘り、應懲の師を進むる一方国民政府の覚醒を促したるも、遂に彼は我が真意を解せざるのみならず、却って愈々聯蘇容共の態度を露骨にし、更に英国其の他の列強の干渉乃至援助を頼みて長期抗戦の策に出でつつあるを以て、帝国政府は爾後国民政府を対手とせず、真に提携するに足る新興支那政権の成立発展を期待し、是と両国々交を調整して、更生新支郡の建設は協力せんとするものなることを内外に閘明す。 
 三、宣伝の重点は国内指導階級及英、米、独、伊、支特に米に指向す。 

二、対内宣伝 

 方 針 

  一般方針に基き左記に準拠して宣伝す。 

1 国論を統一し挙国一致の実を挙げ、今回こそは如何なる犠牲を払いても徹底的に抗日勢力を壊滅せ しめ、事変の根本的解決を図り日満支三国の提携を実現し、以て東亜永遠の平和を確保せんとする帝国上下不動の決意を益々鞏固ならしむ。 
2 今や蘇を始めとし其の他の諸国の支那抗日勢力援助の事実明瞭となり、事変は長期に亘るを以て、 武力行使と平行して思想戦、経済戦等各般に亘る戦争手段を強化し、国家総力戦の徹底的遂行に遺憾なからしむることの必要を認識せしむ。 
3 今次事変は躍進途上にある帝国が当然克服すべき難局の一段階にして、仮令武力戦一段落を告ぐとも日、支、蘇、英、米等を繰る国際関係は更に複雑且重大化すべき可能性あるを以て、日本精神の発揚による国民の精神的団結を一層鞏固にし、尽忠報国、必成の信念を益々昂揚して対手国及第三国の行う思想的宣伝謀略をして乗ずる間隙なからしめ、今後財政、経済乃至資源の各方面に種々の困難に遭遇するも、堅忍持久毅然として動かざる国内輿論を誘起す。(「国民精神総動員」運動に依る) 
4 支那側の排日、抗日、侮日及共産党の策動は日満支三国の共存共栄を阻碍すべきものにして、今次事変の根因亦実に茲に存するを以て、帝国としては之が徹底的根絶をなすべき決意を有することを明らかにす。 

 之が為過去に於ける国民政府及国民党其の他の不信不法、排日抗日侮日の事実、排日抗日教育徹底の実情、事変前よりの対日抗戦準備の実相、事変中に支那側の示したる根強き抗日精神の発露、共産党及人民戦線運動の現状、国民政府の聯蘇容共の事実等を明らかならしむ。

5 皇軍の占拠地域は治安維持、赤化防止等の為長期に亘り駐兵の必要なること及之と並行して、互助提携に必要なる諸般の建設的工作を行うことの必要及之等建設的事業は挙国一致東亜永遠の平和確立の聖業なりとの信念の下に遂行せらるべきことの認識を深めしむ。 
6 右各項の方針を宣伝するに際しては、我が国力は長期戦を遂行し所期の目的を達成するに足るの事実を認識せしめ、進んで銃後の後援を強化持続せしむ。 
* (具体的宣伝要綱は削除) 

三、対外宣伝 

 一、方 針 

 一般方針に基き左記に準拠して宣伝す。 

1 帝国は東亜永遠の平和を実現する為必要にして且最も速かに事態を収拾すべき処置を執るものにして、列国の干与は事態を拡大紛糾せしめ且列国の利権が却って脅威せらるるに至るべき所以を説明し、我方の行動に対し妨害を企つるものに対しては、国を挙げて之を排除するも、帝国の公正なる態度に対し正しき認識を有する列国とは、飽くまで協力するものなることを知らしむ。 
2 帝国は軍民一致、如何に長期に亘るとも、事変の根本的解決を敢行するの決意と実力あることを知らしむ。 
3 帝国の東亜に於ける現在の地位、政策を歴史的に説明し、帝国が侵略的、好戦的なりとする誤解を一掃することに努む。 
4 帝国は何等領土的野心を有するものにあらざるは勿論、列国の利権は之を尊重、保護し又無季の支那民衆を決して敵視するものにあらざることを知らしむ。 
5 支那の排外的政策の阻止及容共政策の防週は東亜の平和、列国の利権確保の為不可欠の要件なることを閘明す。 
6 支那の本質ならびに日支の特殊関係を閘明し、支那の安定、列国の利権確保の為には日本と提携するを有利とすることを知らしむ。 
7 列国の対支武器輸出或は財政的援助等は、事態を速かに収拾し秩序を恢復する所以に非ざることを閘明す。 
8 支那の不法、不信行為ならびに支那人の残忍性を具体的、印象的に宣伝す。 
9 敗戦に因る支那戦力の消耗、内部的動揺を暴露す。 
10 今次事変に於ける皇軍の武士道的態度及占拠地域明朗化の状況を知らしむ。
11 英米の共同戦線を構成せしめず、蘇を孤立せしむることを主眼とし宣伝す。 
* (旧9、10は削除) 

 二、具体的宣伝の要綱 

  各国に対する宣伝は前掲の方針に則り左記を考慮して行うものとす。

A 英帝国 
 (イ)帝国が東亜に於ける安定勢力たること、英国の東亜に於ける地位の変化せること及今次事変に対する我方挙国一致の決意を知らしめ、支那の赤化勢力を絶滅し帝国と協力するにあらずんば、英国の東亜に砕ける権益の確保は期し得ざるべきことを認識せしむ。 
 (ロ)英国の今次事変に於ける非違は率直に之を摘発し、英国の支那援助は却って彼に不利なることを具体的に説明すると共に、我方は断乎之を排除するものなることを強調す。
 (ハ)宣伝に当りては印度及各自治領をも重要視し、英本国の支那に有する権益の擁護に狂奔するの余
り国民政府を助け軽率なる行動に出づる於ては、却って英帝国に不利なることを強調す。
 (ニ)適宜英国の対印、対近東政策(特に対埃及)の歴史を想起せしめ、之に対応して我が公明なる対
支政策を閘明す。
 *(旧[ニ]は削除)
  B 米国
 (イ)米国の支那に於ける権益は充分尊重するのみならず、今後帝国の対支政策遂行に当り米国の好意
ある経済的協力は寧ろ歓迎するものなることを閘明し且米国が英、蘇の策動に致さるることの危険
性を徹底せしむ。
 (ロ)米国政府が今次事変の勃発以来執り来れる極めて慎重冷静なる態度を多とし、之を持続助長せし
むるに努む。
 (ハ)帝国の対支政策遂行に関する決意特に軍民一致の状況を認識せしめ、米国をして我が公正なる態
度を理解せしむ。
 (ニ)中立法の適用は事態の紛糾を導くものなることを宣伝す。
 (ホ)帝国軍隊の規律ある行動、武士道的態度及占拠地に於ける仁慈ある行為を宣伝す。
 * (旧イ、ロは削除)
  C 独伊
 (イ)支那に於ける人民戦線活動の状況及共産党の潜行運動を宣伝し、防共の意義を徹底せしむ。
 (ロ)独伊の支那に有する権益の保持の為には積極的援助を惜まざることを宣伝す。
 (ハ)独伊が今次事変に際し帝国に寄せたる好意を多とし、独伊との離間策を防止するに努む。
  D 仏国
 (イ)今次事変を利用し仏国人の対蘇認識を是正する為、支那に於ける排外運動の歴史及其の本質を聞
    明するに努め、日仏は東亜に於て協力すべき必然の運命に在ることを強調す。
 (ロ)特に仏国の資本階級に対しては、支那に於ける共産党の害悪を凡ゆる機会に於て認識せしむるに
    努む。
 *(「対外宣伝実施に当たりての注意」は削除)
 四、対支宣伝
   方針
 一般方針に基き左記に準拠して宣伝す。
 1 我が挙国一致の鞏固なる決意と我が国力就中財政は十分長期戦に堪うるものなることを反映せしむ。
 2 帝国の真意を充分に理解せしむると共に、日本と提携するに非ざれば支那は永遠に安寧と繁栄とを
   望み得ざることを閘明す。
 3 支那軍閥の暴政を暴露し、排日抗日を支那統一の具に供したる国民政府の政策の誤れること及斯か
   る政策を持続する限り、如何なる政権といえども徹底的に膺懲するものなることを知らしむ。
 4 真に帝国と提携するに足る新興政権に対しては、帝国は国を挙げて其の成立発展に協力すべく又帝
   国と提携せんとする者に対しては何人に対しても、進んで協力するの決意あることを知らしむ。
 5 支那が其の国力充実を過信し、日本の実力を軽視したる結果今次事変を全面的戦争に導き、自ら敗
   戦の惨禍を蒙りつつあることを悟らしむ。
 6 支那民衆に対しては今次事変が蒋介石及国民政府の誤れる政策の為全面的戦争となりたること、其
   の結果支那の再興を中途にして悉く挫折せしめ、敗戦の惨禍を嘗むるに至らしめたること、長期抗
   戦は何等日本の恐るるものに非ざること、第三国の援助又は干渉を期待しつつ長期抗戦をなすこと
   は結局支那を壊滅に陥るるのみなること、排日抗日は蒋介石の支那統一の具なると共に共産党の支 
   那赤化の方便にして、斯かる策動に躍ることの如何に不幸なる結果を招来しつつあるものなるかを 
   充分認識せしめ、日本は無辜の支那民衆を敵視するものに非ざることを自得せしむ。 
  7 欧米依存的以夷制夷政策は、徒に他国を乗ぜしむるの機会を与え結局支那分割の端を開き、東亜 
    の平和を永遠に攪乱するものなることを史実を挙げて認識せしむるに努む。 
  8 国民政府と其の支配下にある地方有力者又は民衆との間を離間せしむる如く宣伝す。 
  * (旧3を削除す) 
  五、宣伝実施に当りて注意すべき事項 
  1 対内宣伝は消極的、悲観的態度を避け、国民に自信力を与え、暗黙の中に国力の充実と長期戦に堪 
    え得るの実力あることを宜示す。 
  2 対内宣伝は自ら反映して直に対外宣伝となるに注意す。 
  3 支那に於ける共産党の活躍、害毒等は明瞭なる事実に付き、的確なる証拠を挙げて宣伝す、但し直 
    接蘇を刺激し其の親支反日的態度、極東軍備の増強を促進するが如き事なき様戒心を要す。 
  4 対外宣伝に当りては弁解的態度を避け、積極的に我方態度及客観的情勢を説明するに努む。 
  5 対外宣伝は政府ならびに有識階級に対するもの、一般大衆に対するもの等対象に応じて宣伝実施を 
    適応せしむ。 
  6 今次事変に於て我に好意的態度を持する各国に対しては益々友好関係を増進する一方、然らざる国 
    に対しては公正堅確なる態度を以て彼の蒙を啓くに努む。 
  7 現地に於ては正確なる客観的情報を速かに弘布す。 
  8 政府並びに有識階級に対しては主として在外帝国官憲より機会ある毎に説明を与う。 
  9 対外文化団体、宗教団体、貿易業者等の如き民間団体の協力を求め、宣伝題目は出来得る丈簡明に 
    して力強きものに限定す。 
 10 従来より我方に理解を有する諸国に対しては、此の際一層我方に対する理解を深めしめ、進んで彼 
   等をして我方に有利なる宣伝を為さしむる様指導す。 
 11 従来我方に対し無関心なりし諸国に対しては、今次事変を利用して我方に引き付ける様指導す。

         * 

 閣情調第六〇号 

 支那事変に対する宣伝方策大網修正の件 

             昭和十三年三月十九日内閣情報部長横溝光暉 

 一月二十四日付閣情調第一四号を以て送付の計甲第一八号(四項)支那事変に対する宣伝方策大綱左 
 記の通修正方常務部会に於て決定相成候條及御通牒候 

   記 

 五、宣伝実施に当りて注意すべき項中 

 3を左の如く改む(一〇頁) 
 3 支那に於ける共産党の活躍、害毒、蘇聯邦の対支援助及対日満不法行為等の事実を的確なる証拠を 
   挙げて宣伝す。但し故らに内外を刺戟せざる様留意す。 


秘 輿論指導方針綴 [参考資料]知識階級(所謂インテリ)の通有性  (昭和十三年十月八日) 

本編は森崎嘱託の起草になるものなり、啓発宣伝の対象としてのインテリにたいする一研究にして業務上の参考に資せんとするものなり


一、インテリの分類 

  1 性別 
  2 年齢別 老年期、壮年期、青年期 
  3 知識内容別/文学派的インテリ/科学派的イソテリ/美術派的インテリ/理工、化学派的インテ 
    リ/医学派的イソテリ/法政学派的インテリ 
  4 出身学校別/官立学校出身のインテリ/私立学校出身のイソテリ 
  5 階級別/高級インテリ/サラリーマン級イソテリ 
  6 地区別/都会地/農山漁村 
  7 貧富別/資本家型インテリ/無産派型インテリ 
  8 健康別/健康型/不健康型/肥満体型/頭脳体型 
  9 性格別/情熱的/微温的/無気力的/性格破産的/学者型(理論的)/実学型(実践的)/芸術家 
    型/文学青年型/積極型/消極型 

二、インテリに通有の病的症状 

 神経衰弱/過敏症/不感症/憂欝症/拒絶症/逃避症/恐怖症/懐疑症/寡黙症/餞舌症/興奮症/近 
 視症 

 三、インテリの通有性 

 一、理論的智識的偏重に発育す。 
 一、全体を見ず分科的局部的判断に堕し易し。 
 一、科学万能論的傾向を有す。 
 一、直観による体験または行的(註=修業的)体験を持たない。
 一、実践的体験を持たない。 
 一、批判的分析的でありあくまで懐疑的である。従って総合的建設的でない。
 一、信念的でなく常に浮動性を持ち、空想的であり浪漫的である。
 一、理論、観念の遊戯者である。 
 一、無理想無自覚無定見である。 
 一、智識的理論的ではあるが、創造的ではない。 
 一、自己を絶対とし、国家より遊離し自己の孤立的存在の可能なることを確信する個人主義者である。
 一、平和論者であり自由主義者である。 
 一、崇外的卑的思想である(註=崇外的内卑的思想か?) 
 一、国際主義的思想であり、社会主義的思想である。
 一、智能的特権階級たることを自認し自己陶酔に陥る。 
 一、社会俗衆の指導者たることを自信す。 
 一、文化上(精神上、文芸ないし科学上)の支配権は自己の掌中にあるがごとく考える。
 一、いわゆるインテリは「智識階級」という社会的特殊階級が存在するものと考え、これをもって、 
   「社会の特権階級」なるがごとき自負を有す。 
 一、 また、無産者、資本家、政治家、実業家、そのいずれの階級にも属さない文化的存在の階級たる錯 
   覚に左右され行動している。 
 一、さらに、政治家、実業家、資本家に対立すべき階級なりとの意識をもって、理論を構成し、実際運 
   動を展開する。 
 一、無産者階級に協力し、これを指導することに自己の前進目標を集中しているものがある。 
 一、小市民的存在を自覚し、自慰しながらも国民的自覚に奮起しない。 
 一、国家の積極的発展に対する熱意を欠き、国策に協力することを不見識のごとく考える者がある。 
 一、社会の歴史的諸運動における一種の原動力が吾等に存在するものと信じている。 
 一、インテリ集団内の一員という集団意識内に生活することに大なる自己満足を発見している。 
 一、智能階級至上主義、技能至上主義を標傍し、思想的社会運動の動因を構成す。 
 一、社会的階級打破を目標に進みインテリ独裁の社会建設を夢見ているものがある。 
 一、自負心強く団体精神に乏しく、奉仕的感謝的の観念に乏しい。 
 一、対社会的能動性を社会的指導性なりと考え、社会支配の観念にまで進む。 
従って、 
 一、あくまで自由主義的、個人主義的、社会主義的思想を有し、思想的に祖国を有しない者が多い。 
 一、国家観に対する絶対の信念なく、国家の歴史的、民族的発展に無関心である。 
 一、自己の歴史的民族的発展性を知らず国民的自尊心なし。 
 一、確固たる世界観なく、民族的理想を認識せず。 
 一、心理の探求はあくまで理論的であり、外形的であり自我意識強固にして他の意見を入れず。 
 一、功利的であり売名的である。 
 一、神を否定し宗教を否定す。 
 一、国際主義的世界観によって、自国の國體を分析す。 
 一、國體否定に進み共産主義思想を構成するに至る。

四、インテリの思想構成の内容 
 一、西洋文学の影響 
 一、西洋歴史の影響 
 一、西洋諸科学の影響 
 一、西欧哲学および思想家の影響 
 一、西欧の劇、映画等の影響 
 一、西欧社会風潮の影響 
  国内的には 
 一、先輩インテリの思想的影響 
 一、文芸書、科学書の影響 
 一、新聞論調(ゴシップを含む)の影響 
 一、文芸諸雑誌の影響 
 一、映画、演劇の影響 
 一、高等学校、大学の影響 
 一、学者、教授の影響 
 一、思想家、教育家の影響 
 かくて、「現存のインテリはさらに次代のインテリを養成す」 

 五、インテリの社会的発展性 

 (一)自由、平等、個人、国際、平和主義的インテリの思想は、これが資本家と結合すると、そこにイン 
    テリ的物質文明を構築し、外形美と虚飾をもって本能を充足し、大衆を魅了すると同時に、インテ 
    リ自らもその中に唯一の慰安と享楽を求むるに至る。 
 (二)インテリ的社会思想、文化はインテリ的享楽の社会風潮を生み、これが大衆の支持を得ると、時代 
    の勢力を作り、強力に作動するに至る。 
 (三)したがってインテリ的社会は単に本能の充足場と化し常に無目的である。 
 (四)社会の指導家を自認しながらも、その指導精神なく、単に為政者と資本主義機構の弊害に論点を集 
    中する。 
 (五)全体性を考慮せず常に国家を忘れている。 

 六、インテリを刺戟するもの 

  一、無自覚なる政治家の行動 
  一、無自覚なる政党の行動 
  一、無自覚なる資本家の行動 
  一、無自覚なる学者の行動ならびにその学説 
  一、無自覚なる思想家の煽動 
  一、無自覚なる教育家の行動ならびに学説 
  一、新聞雑誌の誤られたる論調 
  一、指導なき圧制政策 
  一、誤られたる指導精神 
  一、諸外国思想ならびに外国よりする思想戦工作 

 七、事変下インテリの動向 

 一、聖戦の本義を解しない。 
 一、聖戦行動に対してあくまで批判的である。
 一、事変下における自己の立場と責任とを理解せず。
 一、民族的感情の稀薄、有するもあえて理論的にこれを分析し無関心なる態度を採る。
 一、事変に対する感激なく、これに処する道を自覚せず。
 一、指導、協力共に不可能となる。 
  ただし戦線において一度民族の血に触れたるものは一変して、強烈なる愛国者となり、指導者となる 
  といわれている。(以上) 


  

極秘  東亜新秩序建設に関する宣伝方策大綱
       計 甲 二 三 号 /昭和十四年二月十七日 /内 閣 情 報 部 

本宣伝方策大綱は支那事変に対する宣伝方策大綱(四次)を改定せるものなり 

       一、 一 般 方 針 

一、帝国の冀求する所は東亜永遠の安定を確保すべき新秩序の建設に在り、この新秩序の建設は日満支三 
  国提携へ政治、経済、文化等各般に亘り互助連環の関係を樹立するを以て根幹とし東亜に掛ける国際正 
  義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を期するものなり、これ実に東亜を安定し 
  世界の進運に寄与する所以なることを内外に閘明す。 
二、東亜に於ける新秩序の建設は我が肇国の大精神に淵源しこれを完成するは現代日本国民に課せられた 
  る光栄ある責務にして不退転の決意を以て斯業の達成に邁進せざるべからず、之れが為必要なる国内諸 
  般の改新を断行して、国民精神の昂揚と国家総力の拡充を図るべきことを国民に周知徹底す。 
三、帝国は真に帝国と提携するに足る新興支那中央政権の成立発展を期待し是と両国国交を調整して更生 
  新支那の建設に協力するものなることを内外に閘明し特に支那国民に対して能く帝国の真意を理解し以 
  て東亜新秩序建設の任務を分担すべきことを宣伝す。 
四、列国に対しては列国が東亜新秩序建設に関する帝国の意図を正確に認識し東亜の新情勢に適応すべき 
  を宣伝す。 

       二、対 内 宣 伝 

一般方針に基き左記に準拠して宣伝す。 

1、東亜新秩序の建設は帝国未曾有の大業にして之が完成の為には国民異常の決意と国内に於ける政治、 
  経済、文教其の他万般に亘り所要の改新を図り以て国家総力の永続的発揚とを必要とす。就中肇国の 
  大精神に則り國體の本義を体し以て国民精神を作興し、総ての施策は帝国を核心として日満支一体の 
  目標の下に伸張するを要し、国民は進取、剛健、奉仕の気風を振起すべきことを強調す。
2、東亜の新秩序建設は 
 (イ)帝国を中心として新興満洲国を育成発展せしめ、更生新支那を建設して日満支を枢軸とする東洋 
   永遠の安定を確保すべき東亜の新協同体を結成するものなること。 
 (ロ)之が為長期に亘る建設的努力を必要とし幾多の難関あることを認識せしめ益々国論を一にして挙 
   国一致の突を挙げ上下不動の決意を以て堅忍持久すべきこと。 
 (ハ)右の如き難関なりといえども之を突破して建設が進むに従い東亜は明朗化せられ帝国亦一層安固 
   不動の地位を確保するに至るべく国民は明朗闊達なる気分を以てこの大任に当たるべきこと。
 の主旨を敷術徹底するに努む。 
3、国民政府壊滅の為には武力戦と並行して思想戦、経済戦等各般に亘る戦争手段を必要とするのみな 
  らず共同防共及治安確保の為今後長期に亘り駐兵の必要ある所以を認識せしむ。
4、列国特に英米仏蘇は国力の涵養と軍備の充実に真剣なる努力を払いつつあるのみならず此等各国は 

  

  

  

761 

   程度の差こそあれ帝国の意図する東亜新秩序建設に対し干渉又は防碍しっつありて国際関係は更に 

   複雑且重大化すべき可能性あることを認識せしむ。 

 5、支那事変の遂行と帝国の当面する国際情勢とに鑑み帝国は速に国力を充実し軍備の強化を必要とす。 

  之が為日満支一体の経済建設を行うは勿論総合的経済力の拡充を図らざるべからず。就中共の骨幹た 

  るべき生産力の拡充は急速に整備すること緊要忙して全国民非常の努力を必要とすることを知らしむ。 

 6、帝国は徒に第三国と事を構うるものに非ざるも我が国是の遂行に対する列国の干渉圧迫は断乎排撃 

  すべき国民の決意を撃固にし毅然として動かざる国内輿論の喚起に努む。 

 7、防共協定の重要性を認識せしめ防共精神を昂揚す。 

 8、国民政府は今後益々第三国に策動し其の支援を得て経済戦、思想戦及ゲリラ戦により長期抗戦を行 

  ぅべく帝国に好意を有せざる各国も亦各種宣伝謀略により帝国輿論の分裂を策し軍民一体、朝野一致 

  の長期戦態勢を破壊せんと努むべきことを国民に知らしめ斬る策謀に乗ぜらるることなく一路所期の 

  目的達成に邁進すべきことを強調す。 

 9、我国の国力は強靭なる底力を有することを具体的に例証し決して諸外国に於ける言説の如き貧弱な 

  るものに非ざることを知らしむ。 

  又現在の経済的諸方策の如きも単に支那事変に於ける武力戦遂行の為のみならず今後の国力を充実し 

  飛躍的発展の基礎を培養する所以なることを周知徹底せしむ。 

     三、対 外 宣 伝 

 一、方 針 

 一般方針に基き左記に準拠して宣伝す。 

 1、今次事変の如き事態の再起は帝国の存立上容認し得ざるものなり、帝国は東亜の新事態に適応し将 

 釆に対し今次事変の如き事態の再起防週に必要なる保障を確立せんが為東亜の新秩序を建設し以て東 

 亜永遠の平和を確保し世界の平和に貢献せんとするものなり、故に帝国は右の保障を犯されざる限り 

 列国との友好親善を望むものにして徒に排外鎖国の政策を執らんとするものに非ず、列国は帝国の真 

 意を正確に認識し東亜の新事態に適応すべきことを認識せしむ。 

 2、東亜安定の為赤化勢力の脅威に対し東亜諸国は共同して充分なる防衛措置を講ずる必要あることを 

 強調し之が為帝国は更生新支那の建設に協力し以て速に東亜を安定し支那民衆を救済せんとするもの 

 なること、列国としても支那に放ける赤化勢力の防衛には当然協力すべきこと及対蒋援助を継続し事 

 変の長期化を策するは世界赤化の禍害を増大する所以なることを宣伝す0 

 3、帝国が国防上及経済上支部と緊密不可分の関係にある所以、従って帝国は支那に於て飽く迄も特殊 

 の地位を確立せざるべからざることを宣伝すると共に帝国は列国の支那に於ける経済進出が日満支三 

 国の国防上及経済上の互助連環関係を阻害せざる限り之を歓迎するものなることを明にす0 

 4、列国が帝国の東亜新秩序建設に関する真意を認識せず帝国の意図する所に対し干渉妨碍を企つるに 

 於ては帝国は国を挙げて之を排除するの決意と実力とを有するも、帝国の公正なる態度に対し正しき 

 認識を有する列国とほ飽迄協力するものなることを知らしむ0 

 5、帝国は挙国一致如何に犠牲を払い如何に長期に亘るも東亜新秩序を建設する牢固たる決意を有する 

 こと、帝国は非常の底力を有し国力亦着々充実しっつあることを知らしめ第三国の経済的援助に侯た 

 ざれば新東亜建設不可能なりとするの誤謬を指摘し又帝国に対する経済圧迫の如きも何等効果なきの 

 みならず却って各国の不利益となるべきことを宣伝す。 

 6、国民政府が事実上全く一地方政権に転落し、その戦力の大部を喪失し大勢全く挽回の余地なきに至 

 りたることを強調し、列国の国民政府援助が最早や効果なきのみならず徒らに支邪を混乱に陥れ秩序 

  

  

  

762 

  を莱し却って列国の損失となるべきことを聞明し、帝国は抗日容共政権が存続する限り之が潰滅の為 

  必要なる一切の手段を壷すべきことを宣伝す。 

 7、新興支郵政権は真に東洋平和の大局に眼覚め帝国と提携せんとする支那民衆に依って維持せらるる 

  ものにして当然自主独立性を回復すべきものなること、臨時政府、維新政府、蒙彊政府ほ支那に砕け 

  る大部の重要資源、経済的勢力を其の支配下に収め逐日発展を遂げ其の基礎益々輩固となり支那民衆 

  亦福利を増進しっつあることを宣伝す。 

 8、支那に於ける共産党の活躍、害毒等の事実及蘇連邦の内情を暴露宣伝し以て蘇連邦の孤立を図ると 

  共に、英米に対しては機会ある毎に利害を指摘してその連携を強化せしめざることに努む。 

 二、各国に対する宣伝は前掲の方針に則り左記を考慮して行うものとす。 

 A、英国 

 (イ)東亜に於ける情勢の変化に伴い帝国の安定勢力たる地位は益々強化したること、英国の東亜に於 

   ける権益の確保は帝国と協力するに非ずんば期し得ざるべきことを認識せしむ。 

 (ロ)英国の今次事変に於ける非違は率直に之を摘発し英の対蒋援助は断乎排撃するものなることを強 

  調し、英国が趣く迄対蒋援助を継続するに於ては其の在支既得権益は自ら喪失するの運命に立至る 

   べきことを指摘す。 

 (ハ)英帝国内に於ける対日通商貿易に対する差別待遇の不当なることを指摘す。 

 (ニ)英国の対印、対近東(特に対挨及)等の植民地政策の歴史を想起せしめ、之に対応して我が対支 

   政策が道義的なることを聞明す。 

 (ホ)英国の功利政策、防共国離間、米国抱込等の策謀を指摘論難す。 

 (へ)印度及各自治領に対する宣伝を重要視すると共に、英国が単に支邪問題にのみ狂奔熱中すること 

   の危険なることを反省せしむるに努む。 

  B、米国 

 (イ)帝国の意図する東亜新秩序の建設は道義に立脚するものにして米国人の正義人道観と一致するも 

    のなることを宣伝す。 

 (P)米国の機会均等、門戸開放主義に対しては徒に之を論難刺戟することを慎み、東亜の新事態を実 

   際的に認識せしめ其の対日観を是正するに努む。 

 (ハ)帝国の対支政策遂行に当り米国の好意ある経済的協力は寧ろ歓迎するものなることを聞明し、且 

   米国が英蘇の策動に致さるる(註=まかせる・ゆだねる)ことの危険性を徽底せしむ。 

 (ニ)米国が極東の事態に関し中立法を修正適応せんとし又は対日輸出制限を行うが如きは米国として 

   は決して賢明なる策に非ざることを理解せしむ。 

 (ホ)最近迄公正なる態度を執り来りたる米国政府が漸次不公正なる態度に変りつつあるは、一部策動 

   者乃至英国等の宣伝の為に誤られたるものなることを指摘し孤立主義者の立場を強化するに努む。 

 (へ)米国の対日対支経済関係を比較し、日米貿易の断絶は米国民の不利益となるべきことを宣伝す 

 (ト)更生新支那の明朗化する実情、我軍の占嬢地に於ける仁慈なる行為を宣伝す。 

 (チ)支那に於ける英米宣教師の人道的活動は可とするも、その政治的言動がしばしば日支間の反目を 

   生ぜしむることあるを強調し其の博愛的使命に反するのみならず、支那民衆の困苦を救済する所以 

   に非ざることを宣伝す。 

 C、独伊 

 (イ)支那に於ける人民戦線活動の状況、共産党の潜行運動及共産軍の状況を宣伝し防共の意義を徽底 

    せしむ。 

  

  

  

800 

  国内報道機関と充分連絡協議の必要あり)。之が為各報道機関は、支郡向宣伝と内地向報道とを判然 

  区別して材料を準備し、且発表又は資料の提供をなす様留意を要す。 

 8、宣伝実施上、成るべく臨時政府、維新政府、蒙彊政府及各治安維持会等の名義及此等要人の利用に 

  努む。 

       やや 

 9、事変以来動もすればニュースに対する国民の信用度低下し、支那側及第三国側よりするデマに乗ぜ 

  られ易き傾向あるを以て、修飾せざる率直なる報道に努め、当局の発表に全幅の信頼を掛けしむる如 

  くするを要す。 

二十一章関連の参考資料 

  新聞指導要領其の三 昭和十四年四月二十六日 

  新聞記事取扱方針 

 支那事変は今や東亜に新たなる秩序を創設する建設的段階に進展せるところ、事変をめぐる内外の情勢は 

 極めて複雑にして、多岐多難、前途容易に楽観を許し難きものがある0国民は二人覚醒の下に決意を新た 

 にし、其の伝統的精神を振起して所期の目的貫徹に邁進せねばならぬ○この秋に当たり、新聞の国家に負 

 ぅ文化的使命はいよいよ重く、国家の期待また切実なるものあり0ここに各新聞の編集責任者に対し、記 

 事編集(記事の取材選択、配置按配、形式体裁等編集の全般にわたり)の基本方針として要望すべき点を 

 挙ぐれば左のごとくである。 

一、新聞は政治、経済、社会、その他各面においてH東亜新秩序建設の意義出時局の多難複雑性日 

 時局打開の諸対策牛走ッ精神の昂揚 につき国民の理解啓発を促すことを編集の根本態度とすべきこ 

 と。従って時局に即したる新たなる感覚(ニュース・バリュー観を新たにして)をもって紙面の作成に 

  当たるべきこと。 

 二、東亜新秩序の建設は時局処理終局の目標なるところ、時局に対する正しき認識は、この大業の意義理 

 解より発すると認めらるるをもって、紙面個々の記事は単独に、または集積総合して、内容的に左の趣 

  旨を周知会得せしむるよう編集すべきこと。 

  

  

801 

 倹V東亜の建設は我が肇国の大精神に淵源する帝国未曽有の大業にして、これを完成するは現代国 

  民に課せられたる最も光栄ある責務なること。 

 何新東亜の建設は帝国を中心として新興満洲国を育成発展せしめ、更正新支那を建設して日満支三 

  国の善隣友好互助連環関係を樹立し、これを根幹とする東亜国際正義の確立、共同防共の達成、 

  新文化の創造、経済の結合の実現である。 

 Hこれが達成のためには、軍事的にはたまた国内的に幾多の障碍が在る。すなわち外には長期抗戦 

  を呼号する国民政府、これを支援する第三国の策動、事変をめぐる列国の多角的な動向及び占領 

  地域の安定工作等の諸問題があり、内には軍需資材、経済資源、人的資材等の問題がある。しこ 

  うしてこれを打開克服するためには、総合国力の増強なかんずく軍備の強化、生産力の拡充、人 

   的および物的資源の統制的動員を必要とする。 

 Hすなわちこれがため国を挙げて長期に亘る建設的努力を必要となすをもって、ますます国論を一 

  にし自主独往の意気をもって挙国一致上下不動堅忍持久すべきである。しかしながらこれを突破 

  して建設成るにしたがい、東亜は安定し帝国の地位はいよいよ安固不動となるをもって、国民は 

  明朗闊達の気分をもってこの大任にあたるべきである。 

三、なお新東亜建設の途上には、左のごとき国際的複雑性存することを理解せしむべきこと。 

 訣走ッ政府は今後ますます第三国に策動し、その支援を得て経済戦思想戦およびゲリラ戦により長 

  期戦を行なうべきも、これが潰滅のためには武力戦と平行して思想戦経済戦等各般にわたる戦争 

  手段を必要とするのみならず、共同防共および治安確保のため今後長期に亘り多数の駐兵を必要 

   とする。 

  何列国特に英米仏蘇は国力の滴養と軍備の充実に真剣なる努力を払いつつあり、しかもこれら各国 

   は程度の差こそあれ、帝国の東亜政策を妨碍して我が国カの消耗を企図しつつあり、国際関係は 

    さらに複雑にかつ重大化せんとする可能性がある。 

 四、政府当今の施政施策は一に事変の処理−新東亜の建設−に集約さるるものにして、外は作戦の遂行、 

  外交の整備より、内は消費の節約、屑物の活用に至るまで、右大目的達成のために行わるるものなる 

  ことを、各記事行文の間において自ら会得せしめ、各人の職務ならびに生活をして国策の要求に適応 

  帰一せしむるの自覚を促し、進取剛健の建設的見解の滴養を旨とすべきこと。 

 五、生産力の拡充ならびに物資動員、物価調整およびその他の経済施策を報道するにあたりては、かか 

  る施策も畢境各人が物資の活用、消費の節約、貯蓄の実行、勤労の増進、体力の向上に務める時局認 

  識を、日常起居の上に具現実践して生活の刷新をはかるにあらざれば、成就せざる所以を内省せしめ、 

  これに背馳する社会現象に関する報道は、その匡正をはかることを主旨として記事を作成すべきこと。 

  なお各種経済施策については、わが国の現状に照らし長期にわたり統制の必要なる所以を自ら会得せ 

 しめ、いたずらに眼前の事態に拘われ悲観的見解を抱かしめず、寧ろわが国の経済力には強靭なる底 

  力あるを示し、難局打開に信念光明を与うるよう取扱うべきこと。 

 六、支那大陸における復興建設および開発に関する報道は、戦況戦事に関する報道と共に、国民の時局 

 認識昂揚に資するのみならず、国民の関心を大陸に指向するの効果大なるをもって、今後も引き続き 

  この種ニュースは政治面に、経済面にまた社会面に活発に掲載すべきこと。 

 七、外来ニュースの取扱いに当たりては、まずその報道源泉たる英米仏が、わが新東亜建設ないし日独 

 伊の連繁を阻害するため、わが国に対し外交上経済上圧迫妨碍を加うべきことを示唆し、その他各種 

  の宣伝謀略を用いて我が輿論の分裂をはかり、軍民一体、朝野一致の結束を破壊せんとし、あるいは 

  

  

802 

 防共枢軸の離間を策する意図をあるいは含むべきをかんがえ、下記各項の趣旨に則して予め十分の検討 

 を加えたる上これを掲載すべきこと。 

 対外関係論評または国際問題の解説を行なう場合は、概ね左記の趣旨を包摂すべきものとす。 

  ∽帝国はいたずらに第三国と事を構うるものに非ざるも、我が国是の遂行に対する列国の干渉圧迫は、 

   断乎排撃する国民の決意を撃固にし、毅然として動かざる輿論の確立を必要とする。 

  何帝国は更生新支那の建設に協力して、速やかに東亜を安定し支那民衆を救済せんとするものなるが、 

   列国にして対蒋援助を継続し事変の長期化を策する時ほ、いたずらに支那を混乱に陥れ、秩序を乱 

   し、却ってその不利益を来すならむ。 

  H帝国は国防上経済上支那と緊密不可分の関係あるをもって、支那においてあくまでも特殊の地位を 

   確立せざるべからず。しかれども帝国は列国の支那における経済進出が、日満支三国の国防上およ 

   び経済上の互助達環関係を阻害せざるかぎりこれを歓迎するものなると共に、列国の在支権益の擁 

   護は帝国と協力するに非ざれば不可能である。 

 (二)以上の外独、伊、英、仏、米、蘇、支に閑し留意すべき点を分別すれば左のごとくである。 

  A 独伊 

   防共協定の重要性を説き、我が東亜政策に対する防共陣営の好意を多とすると共に、欧州における 

   独伊の立場に対し我が方の好意および支援を示し、防共諸国間の親善緊密を謳歌す。 

  B 英仏 

   川東亜における情勢の変化に伴い、帝国の安定勢力たる地位はますます強化したること、英仏の東 

    亜における権益の確保は帝国と協力するに非ずんば期し得ざるべきことを認識せしむ。 

   吻英仏の今次事変における非違は率直に堂々これを摘発し、その対蒋援助は断乎排撃するものなる 

  ことを強調し、英仏があくまで対蒋援助を継続するにおいては、その在支既得権益は自ら喪失す 

   るの運命に立至るべきことを指摘す。 

  伽仏国については東亜に関するかぎり、英国に追従するの賢明ならざることを主張すO 

  C 米国 

 仙帝国の意図する東亜新秩序の建設は道義に立脚するものにして、米国人の正義人道観と一致する 

    ものなることを説く。 

 拗米国の機会均等、門戸開放主義に対してはいたずらにこれを論難刺戟することを慎み、東亜の新 

   事態を実際的に認識せしめ、その対日観を是正するに努む0 

 伽最近まで公正なる態度を執り来りたる米国政府が、漸次不公平なる態度に変わりつつあるは、一 

  部策動者ないし英国等の宣伝のために誤られたるものなることを指摘し、いわゆる孤立主義者の 

   主張を支持するに努む。 

 D 蘇連邦 

  蘇連邦の対支援助および対日満不法行為等の事実を指摘し、我が朝野の不満を表明するとともに、 

  蘇連邦の日満支に対する思想的領土侵略は、帝国の断じて容認し得ざるものなることを開明すO 

  E 支那 

  山容共抗日の国民政府ほあくまでその潰滅を期す。 

 拗帝国と支那とは共存共栄の必然的関係にありて、支那は帝国と提携するに非ざれば、永遠にその 

  安寧と繁栄とを望み得ざることを理解せしめ、これがため日支両国は善隣友好、共同防共、経済 

  提携の実を挙げざるべからざることを強調するとともに、帝国は進んで新支邪建設のために積極 

   的に協力するものなることを主張す。 

  

  

803 

   伽帝国の更生新支那建設に関する真意は、支那をして従来の半植民地的の地位より脱し、完全なる 

    自主独立を回復せしむるに在り、すなわち在来の政治的経済的姪楷を排除して、真に独立国たる 

     の面目を回復せしめんとするものなることを認識せしむ。 

   袖欧米依存的以夷制夷政策は、いたずらに他国をして乗ぜしむるの撥会を与え、結局支那の植民地 

    化および分割の端を開き、東亜の平和を永遠に撹乱するものにして、なかんずく蘇連の対支政策 

    と帝政権の容共政策は支那を蘇連の属領と化し、赤化により将来永く民衆を塗炭の苦に陥らしむ 

     るものなることを説く。 

 入、以上の方針態度は、家庭欄および小説に至るまで新聞の全面に浸潤せしめ、各面に矛盾撞着なかるべ 

   きこと。 

 秘・昭和十四年十一月入日 

 『新 聞 指 導 要 領 其の六』 

欧州戦争勃発に伴う新聞記事取扱方針 

   主 旨 

政府屡次の声明の通り、帝国は欧州における事態の推移如何にかかわらず自主邁往あくまで支那事変処理 

 を第一義とし、専ら東亜新秩序の建設に邁進するものなるをもって、さらに民心を鼓舞緊張せしむるとと 

もに、将来起きることもあるべき国際政局の変転を我が東亜政策に適順せしめんためには、急速に総合国 

力を強化拡充するの緊要なるを認識せしめ、外に対しては新東亜建設に対する帝国不動の決意をさらに徹 

底せしめ列国をして東亜の新状勢に即応せしむるよう建設的なる国論の振起昂揚に努力するの妻あり、し 

 たがって記事編集上注意すべき点左のごとし 

一、欧州情勢に関するニュースを偏重せざること。 

   欧州戦争勃発後の新聞は戦争関係の外来ニュースを不相応に優遇する傾向があるところ、現下帝国 

   の内外には重要問題山積して国民の切実なる関心と不屈の努力忍耐が要望さるるこの際、妄りに国 

   民の視聴を外に転ぜしめるときは列国の圧力後退、戦時景気の台頭等を待望して他力本願の弊風を 

   発し国民精神の弛緩を誘致する惧あるをもって欧州関係記事に対する興味本位の取材態度を是正し 

   事変処理の完遂に必要なる当面の重要問題の取扱いに重点を置くこと 

2、 外電の裡に潜む宣伝色をよく吟味すること。 

  

  

804 

    欧州戦争関係諸国の日本獲得工作は、戦争の展開につれ、相当さかんに行なれわつつあるに鑑み、 

    外来報道の裏に潜むべき宣伝色に対しては (米国系電報についても同断)特別の注意を払い、こ 

    れを無批判に受入れ欧州戦争不介入の帝国の立場を拘束するがごとき結果を来さざるよう注意す 

      ること 

 三、対外関係記事は概ね左のごとき態度をもって取扱うこと。 

   H欧州戦争に関しては帝国は進んでこれに干与する意なく、したがって交戦国何れの側にも偏せ 

     ず自主無碍の態度をもってその推移を狭祝するものなることを知得せしめ (ただし帝国が戦乱 

                                 きざ 

     の拡大または長期化を希求し居るがごとき印象を治さざるよう注意すること) 列国(なかんず 

     く英、蘇、米) にして帝国との国交調整を図らんとせば、まず東亜の新事態を認識し帝国の根 

     本国策たる東亜新秩序建設に協調的態度を執るべきことを強調すること 

   出主要列国別要領 

    潔p国及仏国に関しては、東亜における帝国の地位を充分認識し、その援蒋感度を拗棄して 

      東亜新秩序建設に対し協調的態度を執ることが帝国との国交調整の前提なることを特に強調 

       寸ノる 

      なお仏国に関しては列国のいわゆる援薄物資が専ら仏印を経由して輸送さる実情を時に応じ 

      て暴露する 

    何米国に関してはその対日態度が近来特に積極且露骨になりつつある実情を念頭に置き、米国 

      の非友好的措優に対しては我が国民的感情を率直に披涯し、米国の胴喝的態度に対しては、 

      裁然たる態度をもって臨み、帝国の不動の決意の前にはかくのごとき米の態度は、対日干渉 

      ないし挑戦と映ずべきことを指摘してその深甚なる反省を促すこと 

    H独伊に関してほ帝国との友好関係が依然持続せらるべきことを念とし、我が東亜新秩序建設 

      政策に協力せしむること 

    H蘇遵に関しては同国が、欧州戦争への介入およびノモンハソ停戦協力成立等により我国に対 

       にわか 

      し遽に協調的態度に転換したりと臆断することなく、却って蘇遵ほ今次戦乱を利用して国力 

      を増大し、我に対するその圧力ほ増強さるべきことを知らしむ。他面また蘇連に対して過度 

      の刺戟を与うることはこれを避けるとともに我より進んで国交調整の希望を披湿せざること 

    健骰曹ニ南洋諸国との関係につきては、経済的に有無相通の関係にある点を指摘し、列国の疑 

      惑深きに鑑み、帝国の南進政策は単純なる経済関係に過ぎざる点を特に強調すること 

   Qなお交戦各国の戦時態勢強化の状態、国民生活の状況その他国家総力戟の実相等は我が国民精神 

     の緊張に資する意味において社会面ないし家庭欄等にて紹介すること 

   備  考 

  支那新中央政権に関連する方針は追てこれを定む 

  

  

       ☆ 

  

   『新 聞 指 導 要 領 其の七』秘昭和十五年一月十日 

 支那新中央政府成立に関する新聞記事取扱方針 

 支郡新中央政府成立問題について世上頻りに歪曲せられたる情報流布せられ、ために国民の疑惧不安す 

 くなからざるにつき本件に関する新聞記事の取扱については、右のごとき臆測誤解を払拭して新政府樹 

 立に対する挙国的支援の輿論の作興をはかることを旨とし 

  

  

805 

 H新政府は帝国と真に提携して東亜新秩序の建設に邁進せんとするものなること 

 出新政府は中華民国国民政府の法統を継承する正当政府たるべきこと 

 ○新政府の成立は事変処理上の一階梯たるに過ぎざる旨を理解徹底せしむるとともに 

 竃{問題に関連せしめて、この際特に東亜新秩序建設の意義を再認識せしむること 

 を基本的態度として左記諸項に留意しこれが編集に当たるべきものとす 

  「江精衛を中心とする新中央政府は真に帝国と提携して共に新東亜の建設を分担せんとするものなる 

   をもって(新政府成立の経緯および政治形態等については随時現地機関ないし支那側より情報の提供 

   あるべし)帝国としてはその成立発展に全幅の協力を与うべきものなる旨を理解せしむるに努むるこ 

      と 

    ただし新政府の成立はあくまで支那側自体の自発的創成に係り我方の工作により樹立せらるるもの 

   なるがごとき印象を与えざるよう厳重注意すること 

  二、江精衛の率いる国民党は防共親日を基本方針として、重慶政府の「抗戦建国」に対抗し「和平救国」 

   の実現のため、改組再編成せられたる純正国民党なることを知らしむること 

  三、三民主義は純正国民党により孫文の素志たる亜細亜の更正復興を理想としてその本然に還元せられ 

   たる旨を明瞼にならしむるに努むること 

  四、荘を中心とする新中央政府は中華民国国民党により組織せられたる国民政府の法統を継承する正当 

   政府なることを周知徹底せしむること 

   (註)なお新政府は名称を国民政府と呼称し、首都を南京に置き国旗に青天白日満地紅旗(重慶側と 

    識別を明かにするため、その上部に「反共和平」と表示せる三角大形黄地布を付す)を採用せんと 

    するものなるが (本件については追て現地の公報をまって解除せらるべき処)、このことは新政府 

  が民心を把握収潰してその基礎を肇固にし、かつ重慶陣営の切崩および第三国との調和に資するも 

  のなるをもって、我方としては現実に即し、これを容認せる次第なるにつき本件記事の取扱につい 

   ては叙上の趣旨を含みて無用の刺戟ないし誤解を与えざるよう注意すること 

 五、新中央政府との間に規制せらるべき日支新関係は(その具体的内容は事態の進展に応じ公式発表あ 

 る外適時情報の提供あるべし)日支百年の親善、東亜永遠の安定を期する帝国の大乗的精神に立脚す 

  るものにして、東亜新秩序建設の具体的展開の基礎工作たることを会得せしむると同時に新国交関係 

 具現にともない日満支の経済結合および帝国国防の強化ならびに我が国カの伸張に資することの大な 

  るを会得せしむるに努むること 

 六、新政府の成立は帝国の事変処理工作に一進展を画するものなることは勿論なるも、重慶側の長期抗 

 戦に対してはあくまで之が壊滅を図らざるべからざるをもって直ちに時局収拾の全面的解決と見るべ 

 きにあらず、しかも新政府発達の途上にはなお幾多の難問題あるべく、また日支新関係をめぐる国際 

 関係においてはすでに相当の摩擦存在する実情なるをもって、さらに総合国力を強化充実して強力日 

 本の建設に邁進すべく国民は毅然たる態度をもって長期持久堅忍不抜の覚悟を固むるの要ある所以を 

  適時会得せしむるよう努むること 

 七、東亜新秩序建設の意義については大要左の趣旨に基きその敷術徹底を図ること0 

 東亜における新秩序の建設は、我が肇国の大精神に淵源し、支那事変遂行の根本目的をなすものなり0 

 即ち日満支三国は相携えて政治、経済、文化等各般に亘る互助敦陸の関係を樹立し、これを根幹とし 

 て東亜における国際正義の確立、共同防共の達成、新文化の創造、経済結合の実現を図り、もって東 

  亜永遠の安定を確保し、世界の進運に寄与せんとするものなり 

 入、注意事項 

  

  

806 

 H江精衛の人格、識見および青年層における声望ならびに同志の団結力および活動力等、江政権 

  の強靭性に関する報道の紹介に努め、その一面の脆弱性に付てはなるべく触れざるよう留意する 

    こと 

 出江または江派の言説にして万一帝国の方針に背馳すること甚しきものありたる場合は適宜これを 

  駁論しその反省を促すべきこと 

 8江精衛の呼称についてはなるべく「兆銘」を避け「精衛」を用うること 

本書の内容が此の鐘の形式に於て発表せ 

れることは防諜上厳に慎むべきものと寸 

 二十四章関連参考資料 

    新聞指導方策について(昭二九・二・一三) 

 阿部内閣は新聞に倒されたとの評が高い0昨今の新聞紙面の傾向を見て、新聞人の心理動向を察するに、 

 彼等は政府の民論に対する威圧は漸く後退を釆たしつつありと断じ、政府の施策や態度方針等をいわゆる 

 「言論自由」の見地から縦横に批判論議せんとし、その国内国外におよばす影響にはほとんど介意せざる 

 ごとき実状にある。この時に当たって新開記事の指導統制は極めて喫緊かつ重要なる政務であり速かに実 

 施すべき重大案件といわねばならぬ。 

 過日、某有力新聞社の政治部長が「この時局においてわれわれは新聞の任務はよく承知している、政府 

 の諸公が事変以来絶えず新聞の協力について懇談さるる意図は充分諒解しているが、今日の新開の営利を 

 主とする横構ではあのような紙面を作らざるを得ないのだ」と述懐した事実がある0この述懐は現在の新 

 聞の国策協力の限度を暗示するとともに政府に対しその言論対策の方向を示唆していると思う0すなわち 

 政府は事変以来−時には国務大臣自ら立って、新聞編集幹部を招致して−常時編集部面の人々と接触して 

 新聞の時局協力に出来得る限りの努力を尽して新聞の指導を続けて来た0また検閲当局の取締においても・ 

 極めて高度の権限を発揮して、時局の推進に障碍をなす記事の淘汰に努めて釆ている0その結果新聞の編 

 集態度は相当程度変化し、事変前にしばしば存したるがごとき悪質有害の記事はかなり整理せられ、時局 

 への協力態度を示す観を呈してはいるが、事実は依然根底においては興味本位に走り真の協力は今日にお 

  

  

807 

 いても容易に期待しえない実情にあることほ周知のごとくである。しかのみならず、一朝、政府の圧力 

                                        や ゆ 

 が減じその威信が問題とならんか、昨冬阿部内閣末期において見たるがごとき椰稔(註=からかい)嘲笑の 

 記事が相次いで現われ検閲権をもってしてもいかんともなしがたい形勢を馴致すること必定である。こ 

 の若き経験は従来歴代内閣が常に味わったもので、今次事変に入るも依然たるものが存する。 

  しこうして最近の新聞人は、政党勢力の挽回気勢と議会における論戦の自由とに刺戦せられて、再び 

 旧来の自由主義的立場に猛然復帰せんとする意欲にあることが看取される。まことに警戒すべき趨勢 

 (註=世の中のなりゆき)と言わねばならぬ、一方又、国民生活に対する時局の重圧は事変二年有半を経て日 

 常生活に参透し、ことに経済統制物資不足から来る国民一般の不平不満をいよいよ刺戟しっつある。し 

 たがって彼等新聞人がこの際を期して、興味本位自由主義的観念をもってこの深刻な世相を誇大かつ悲 

 観的に報道しもって政府攻撃を結果するごとき傾向はいよいよ濃厚化しっつある。 

  かくのごとき現下の新聞の傾向をこのままに放置することの如何に危険であるかは阿部内閣当時の実 

 例を挙ぐるまでもあるまい。 

  しからば、真に新聞をしてこの重大時局に即応する編集を終始維持せしむる方法は如何というに、回 

 答はや卦方策を出で得な吋と信ずる 

  一、新聞の道義的協力を需むる方法 

   この方法が今日現に相当の効果を挙げつつあることほ万人の認むるところであるが、今日の新聞社 

   が商業主義の「営業」に立つ以上、冒頭述べた某政治部長談に徽するまでもなく、その「時局協力」 

   は今日既に飽和点に達しているものと見ざるをえない。先般浅間丸事件で政府首脳の三大臣が、二 

   十一日会と懇談を遂げたにかかわらず、その直後、報知がいわゆる訓令問題の暴露を敢えてし、国 

   民があのような筆陣を張ったことに鑑みるも、一度困難なる政治問題に当面すれば「懇談」による 

  新聞指導の効力の如何に微弱なるかを知り得よう。 

 二、法律的手段による方法 

 新聞紙法を適当に改正し、ないし総動員法第二十条を発動することは、この目的に寄与する有効な 

 皐段たること勿論であるが、現下の政治情勢下においては、はるかにその実現は慧得ないと 

   思う。 

 三、行政的措置、すなわち検閲取締の強化による方法 

  この方法には自ら限度があるのみならず、これを強行すれば諸種の副作用を発生するので良策とは 

   言いがたい。 

  阿部内閣末期当時の現象がこの間の事情を雄弁に証している〇 

 四、新聞の営業部面を攣肘する方法 

 編集陣営の老が如何に時局認識に徴し、国家的自覚を有していても現在の新聞がこの程度の紙面し 

 か作成出来ないゆえんのものは、新聞の本質が売ることを第一義とする商品であるからである、す 

 なわち編集担当者が常に営業担当者の撃肘を受くるからである0営業部面の発言は紙面の方向を決 

 定するほどの威力を有っている。したがって新聞対策の「鍵」は新聞の「営業」を押さえることで 

  あらねばならぬ。 

  (イ)幸いここに新聞用紙供給の国家管理制度が現存する0現在商工省においてはこの用紙問題を 

   単なる物資関係の「事務」として処理しているが(企画院、内閣情報部においても若干これに 

   参与してはいるが)もしこれを内閣に引取り政府の言論対策を重心とする「政務」として処理 

   するならば、換言すれば、政府がこれによって新聞に相当の睨みを利かすこととすれは新聞指 

   導上の効果は相当の実績を期待し得ると信ずる0その具体案は、内閣に新聞用紙管理委員会 

  

  

  

808 

      (内閣書記官長を委員長とし、内閣情報部長、企画院第四部長、内務省警保局長、商工省繊維局 

     長を委員とし、内閣情報部において庶務を司る) を設置し (必ずしも官制を要せず)、商工大臣 

      は右委員会の議決を経て各新聞社に対する用紙配給量を決定することとする。 

    (ロ)営業部面撃肘の第二の方法は新聞社収入の半額以上を賄う広告収入に容晩(誌=くちばしを入れる 

      こと)する途を拓くことである。同盟通信社創設の目的をここに再現せしめて、同盟と電通との 

     一体的運営を実現して (電通の株式の半数は同盟の所有に属している) 各新聞に対する広告の振 

     当広告料金 (一行分の単価評定等) その他につき同盟の発言権(同盟を通じて行なう政府の支配 

     カ) を獲得せしめ得れば政府の新聞に対する睨みはさらに強化される。群小新聞に対する統制カ 

      のごときはほとんど絶対的といってもよかろう。 

      しこうして同盟電通の一体的運営については現に若干の工作が進捗中で、政府の方針が確立すれ 

     ば本年末にはその実現を見よう。 

  これを要するに、現下の情勢下においては、新聞に対し有効な指導を行使し得る方法は新聞の「企業」を 

 撃肘する方法以外にはないのであるから右二方法を実施すれば新聞対策は応急策としておおよそ目的を達 

  成し得ること必定である。 

                                                 以 上 

 三十一章関連参考資料 

  新聞垂丁…薫令(抜粋)(昭和十六年十二月十三日・勅令第千古七号) 

第一条 国家総動員法(昭和十三年勅令第三百十七号に於いて依る場合を含む)第十六条の三の規定に基 

 く新聞乍業の開始、委託、共同経営、譲渡、廃止または休止に関する命令及び新聞事業を行なう法人の 

 目的変更、合併または解散に関する命令、同法第十入条の規定に基く新聞事業の統制を目的とする団体 

 の設立等に関する命令及び当該団体に関し必要なる事項ならびに同法第十入条の三の規定に基く新聞事 

 業の譲渡または新聞事業を営む会社の合併に付いての租税の軽減に付いては本令の定むる所に依る 

第二条 本令に於いて新聞事業と称するは時事に関する事項を掲載する新聞紙の発行を目的とする事業に 

 して命令を以て定むるものを謂う 

第三条新聞事業を開始せんとする者は主務大臣の許可を受くべし新聞事業主その事業の委託、共同経営、 

 譲渡、廃止又は休止を為さんとするとき亦同じ 

 新聞事業を行なう法人の目的変更、合併又は解散の決議は主務大臣の認可を受くるに非ざれば其の効力 

 を生ぜず 

 第一項の許可及び前項の認可に関し必要なる事項は命令を以て之を定む 

第四条 主務大臣新聞事業の整備の為必要ありと認むるときは命令の定むる所に依り新聞事業主に対し事 

 業の譲渡もしくは譲受又は会社の合併を命ずることを得 

 前項の場合における譲渡又は合併の条件は当事者間の協議に依る其の協議調わず又は協議を為すこと能 

 わざるときは主務大臣之を裁定す 

  

  

  

809 

  前項の協議は主務大臣の認可を受くるに非ざればその効力を生ぜず 

 第五条 左の各号の一に該当するときは主務大臣は当該新聞事業主に対し其の事業の廃止又は休止を命 

  ずることを得 

 一前条第一項の規定に依る命令又は同条第二項の規定に依る裁定に従わざるとき 

  二 第六条の規定に依る団体の定款又は統制規程に違反したるとき 

  三 当該新聞事業の運営が国策の遂行に重大なる支障を及ぼし又は及ぼすの虞あるとき 

  前項の処分は予め警告を為したる後之を行う 

 第六条 主務大臣は命令の定むる所に依り第入条の規定に該当する者に対し新聞事業の綜合的統制運営 

  を図りかつ新聞事業に関する国策の立案及び遂行に協力することを目的とする団体の設立を命ずるこ 

  とを得 

 第七条 前条の規定に依る団体は其の目的を達するため左に掲ぐる事業を行う 

  一新聞紙の編集その他新聞事業の運営に関する統制指導 

  二 新聞事業の整備に関する指導助成 

  三 新聞共同販売その他新聞事業に関する共同経営機関の指導助成 

  四 新聞記者の登録並びに新聞従業老の厚生施設及び養成訓練の実施 

  五 新聞用紙その他の資材の配給の調整 

  六 新聞事業の向上に閑し必要なる調査研究 

  七 その他本団体の目的を達するに必要なる事業 

 第入条 第六条の規定に依る団体の会員たる資格を有する者は左に掲ぐる者にして主務大臣の指定する 

   ものとナノ 

  一新開事業主 

 二 新聞事業主に対し報道事項の供給を為すを目的とする事業その他新聞事業に関係ある事業の事業 

  主 

 第九条(以下略) 

       ☆☆☆ 

  言論、出版、集会、結社等臨時取締法(昭和十六年十二月十入日/法律第九十七号) 

 第】条 本法は戦時に際し言論、出版、集会、結社等の取り締まりを適正ならしめ以て安寧秩序を保持 

 することを目的とす− 

 第二条 政事に関する結社を組織せんとするときは命令の定むるところに依り発起人において行政官庁 

  の許可を受くべし . 

 第三条 政事に関し集会を開かんとするときは命令の定むるところに依り発起人において行政官庁の許 

                                     せんこう 

 可を受くべし但し法令を以て組織したる議会の議員侯補着たるべき者を盆衡するための集会及び選挙 

 運動のためにする集会並びに公衆を会同せざる集会は命令の定むるところにより発起人において行政 

  官庁に届出づるをもって足る 

 第四条 公事に関する結社または集会にして政事に関せざるものといえども必要ある場合においてほ命 

  令をもって前二条の規定に依らしむることを得 

 第五条 屋外において公衆を会同しまたは多衆運動をせんとするときは命令の定むるところにより発起 

 人において行政官庁の許可を受くべし但し命令を以て定めたる場合はこの限りに在らず 

 第六条 法令をもって組織したる議会の議員議事準備のため相団結するものについては第二条の規定を、 

 議事準備のため会同するものについては第三条の規定を適用せず 

  

  

801a 

 第七条 新聞紙法に依る出版物を発行せんとする者は命令の定むるところにより行政官庁の許可を受く 

   べし 

 第入条 行政官庁必要ありと認むるときは第二条乃至第五条もしくは前条の規定による許可を取消しまた 

  は第三条もしくは第四条の規定により届出でたる集会の禁止を命ずることを得 

 第九条 出版物の発売領布の禁止ありたる場合において行政官庁必要ありと認むるときは当該題号の出版 

  物の以後の発行を停止しまたは同一人もしくは同一社の発行に係る他の出版物の発行を停止すること 

   を得 

 第十条 第七条の規定は前条の規定に依る停止の命令に違反して発売または領布するの目的をもって印刷 

  したる出版物は行政官庁において之を差押うることを得 

 第十一条 第二条の規定(第四条の規定に基き依らしめたる場合を含む) に違反したる者は一年以下の懲 

  役もしくは禁錮または千円以下の罰金に処す 

 第十二条 第三条の規定(第四条の規定に基き依らしめたる場合を含む)または第五条の規定に違反した 

   る者は六月以下の懲役もしくは禁錮または五百円以下の罰金に処す 

 第十三条 第七条の規定に違反したる者は一年以下の懲役もしくは禁錮または千円以下の罰金に処す 

 第十四条 第九条の規定による停止の命令ありたる出版物を発行したる者は六月以下の懲役もしくは禁錮 

   または五百円以下の罰金に処す 

 第十五条 第十条の規定による差押処分の執行を妨害したる者は六月以下の懲役もしくは禁錮または五宙 

   円以下の罰金に処す 

  第十六条 前三条の罪には刑法併合罪の規定を適用せず 

  第十七条 時局に閑し造言飛語をなしたる老は二年以下の懲役もしくは禁錮または二千円以下の罰金に 

  処す 

 第十入条 時局に関し人心を惑乱すべき事項を流布したる者は一年以下の懲役もしくは禁錮または千円以 

  下の罰金に処す 

     付 則 

 本法施行の期日は勅令をもってこれを定む(昭和十六年十二月十九日勅令第千百七十七号言論、出版、集 

 会、結社等臨時取締法は昭和十六年十二月二十一日より之を施行す) 

 本法施行の際現に存する政事に関する結社(第六条前段の規定に該当するものを除く)または第四条の命 

 令施行の際現に存する当該命令に係る公事に関する結社については命令の定むるところによりその存続に 

 付主幹者において行政官庁の許可を受Jベし 

 第入条の規定は前項の許可に、第十一条の規定は同項の規定に違反したる老に之を準用す 

 集会または多衆運動にして第三条または第五条の規定により許可または届出を要するものに付ては本法施 

                 すなわち 

 行後三日以内に行なうものに限り偽従前の例に依る 

 本法施行の際現に正規の手続きを経て新聞紙法に依る出版物を発行する者は第七条の規定に依る許可を受 

 けたる者と見傲す 

          も 

  

80b 

 三十五章関連・参考資料 

一決湖制塵ハ出詞指適¶】力駕叩要綱(昭和十九年十月六日・閣議決定) 

 一、方針 

 輿論指導は国体護持の精神を徹底せしめ敵悔心を激成しもって闘魂を振起することを目的とし国民をして 

 知らしむべし侍らしむべしの方針に則り特に輿論生起の根源を衝きて之が適正を期す。 

 二、要領 

  (一)輿論指導の内容については左の各項を重視するにその対象に応じ適宜取捨按配するものとす。 

   (1) 国体に対する信仰の喚起昂揚 

    (イ)祖先より継受せる国体への信仰を喚起昂揚し君民一体の精華を発揚す。 

    (P)皇土防衛の国体護持上絶対緊切なる所以を強調す。 

   (2)宣戦の大詔の御趣旨の徹底。 

    戦争目的を宣揚し戦争完遂が皇国の自存自衛のため絶対に必要なることを徹底す。 

   (3)決戦的戦局認識の徹底 

    戦局危急皇国の興廃を岐つべき一大決戦に直面せることを一層強く知らしめ之に対処して国民総戦 

    闘の決意を固めしめ活発に実践せしむ。 

   (4)究極における必勝確信の具体的基礎の明示 

    (イ)必勝の確信並びに之が方途に閑し具体的事実を教う。 

    (P)最後まで国民各自職分を忠実に奉公し粘り強く戦い続けたる国が紙一重の差にて勝つ所以を 

     解明す。 

  (ハ)我に天祐神助あり我に備えと地の利あるをもって総ての人的物的国力を戦力化して一億協力 

    大和魂をもって戦う時は必ず敵を破り得る所以を解明す。 

  (1こ外窟に対し挙国総厭起して戦える結果は仮令一時危局に直面するも必ず之を突破せる歴史的 

    事実を示し国民的確信を強化す。 

  (5)敵に対する敵悔心の激成 

  米英指導者の野望が今次戦争を誘発したる事実を解明し且つ米英人の残忍性を実例を挙げて示し殊 

   に今次大戦における彼らの暴虐なる行為を暴露す。 

  (6)敵国内情の苦境の暴露 

  敵国の政治情勢及び思想の悪化、国民生活の低下、経済の逼迫、道義の類廃等を暴露報道す0 

  (7)決戦的戦時生活下における気分の明朗化 

  国民生活の低下に伴い之に堪うるの心構えを強からしむると共にこの間に処しなお明朗なる気分を 

  保持せしむる如く国民相互に信頼と友愛とをもって協力し道義昂揚の雰囲気を醸成す0 

 (二)福論指導の方法に付いては対象を的掛に把握し特に指導者層に重点を指向し徹底を期するものと 

  し左の諸項に留意す。 

  (1)報道宣伝は国民の忠誠心を信頼し事実を率直に知らしむ、殊に戦況(空襲を含む)の発表は率直 

   且つ迅速に之を為す。 

  (2)報道宣伝行事等に付いては機宜を捉うること及び国民の感情に即せしむることに特段の工夫を 

   凝らす。 

  (3)民間より自発的に起こる戦争完遂上有益と認めらるる国民運動的行事は之を活発に行なわしむ0 

  

 

80c 

   (4)大政翼賛会その他の外郭団体の相互調整及び活用をはかると共に宗教団体を一層活用す。 

   (5)必要に応じ政府の発言者も国民に呼び掛く。 

   (6)国民の声を活発に上通せしむるための措置を講ず。 

  (三)輿論指導を活発ならしむるため防諜及び言論集会の取締方針等に付き必要なる再検討を加え之を 

   刷新す。 

 (四)輿論指導を効果あらしむるため特に左の諸点に留意す。 

   (1)誤れる平等観を国民に植え付くることに困り共産主義思想の温床を作るが如くすることなから 

    しむると共に特定の職域に従事するものの歓心を買うが如きことは之を避く。 

   (2)国民生活を不必要に圧迫せざる如くし指導を要せざるものは之をその発意に任ず。 

   (3)社会各界の指導者層は自ら深く反省し、大衆をして必勝の信念に疑惑を生ぜしむるが如きこと 

    は日常の言動においても深く戒心すると共に軍官民一致団結を阻害するが如き諸現象は急速に之を 

    排除す。 

   備考 

   戦争完遂上抑制すべき言論特に国体に対する信仰を動揺せしめ、軍事外交上の機密保持に支障を生じ、 

   もしくは国内分裂を招来するが如きもの又は厭戦和平的なるもの等に対しては厳重なる取締を為すも 

    のとす。 

三十八草関連参考資料 

 国民士気昂揚に関する啓発音一伝実施要領(昭和二〇、七、情報局) 

    第一宣伝方針 

一、本宣伝は沖縄戦局の我に不利にして敵空襲の激化並びに本土決戦なるの秋軍官民を挙げて断乎戦い 

                       おこ   しれつおうせい 

  抜くべき決意の下、七生尽忠、一人もって国を興すべき蛾烈旺盛なる戦意を昂揚するに在り 

 二、本宣伝においては左の諸点を強調徹底サ 

 イ、今や本土決戦必至にして皇国の存亡を決するの秋なり 

   来るべき本土決戦こそは皇国の存亡を決する決定的戦なり 

                            みち 

   本土決戦に敗れんか皇国他日の計をはかるべき途絶対になし 

  我が国民は一人を残さず惰性による無関心い安易感を断乎排除し全生活、全精力を挙げて本土決 

  戦に勝つの一点に集中し、如何なる危急困苦にも敢然耐えぬくべき決意を囲むべし 

            せんめつせん 

  ロ、本土決戦をして大朝滅戦たらしむべし 

   この決戦によ♪我は敵の大兵力を一挙に報滅し去り最後の勝利獲得の好機たらしめんために一億 

  結束して必死敢闘すべきなり 

 ハ、本土決戦に際し皇国民たるの自覚と希持を遺憾なく振起すべし 

  本土は神霊鋲まります父祖伝承の地なり、断じて敵の揉欄を許さず。敵来らば釆よ、その時こそ徹 

  底的に撃砕すべしの気概を振起し、個々の生死を超越し、身を皇国に奉悠久の大義に殉じ、帝国の 

  光栄と歴史を守りぬくべきこと 

  

  

  

80d 

 ニ、国民戦争の本義に微すべし 

  本土決戦とならば一億国民一人残らず戦列に加わる、国民義勇隊結成の所以もまたここにあり、伍 

   整々一糸乱れず生産に防衛に死力を尽くすべし 

      第二 宣伝の内容 

         しんこちノ 

 一、敵の本土便意時期は切迫せり 

   沖縄地上作戦の終結の次に来るものこそは必然敵の空襲激化に続いての上陸作戦による本土便意 

    なり 

    而もその時期たるや数旬乃至数ケ月の近きにありと観ずべし 

  二、本土戦場化必至なり 

                     ども 

  洋上及び水際に敵を撃砕すれ共、まずかれらの敵兵力の上陸も亦必至と考うべし、従って本土の一 

                             きら      あ 

  部は敵兵に揉欄せられ全国土は敵の猛砲爆撃に壊され本土は挙げて戦場となるべし 

  三、本土作戦の有利なる点次の如し 

  イ、本土決戦は大軍集中及び補給の点に有利なり 

   我が方は所要の地点に故に数倍する兵力を迅速に集中且つ之に対する補給も故に比し遥かに容易 

    なhノ 

  ロ、我は日本的特攻兵器の活躍に期待する所大なり、敵の空爆による航空機の減産は止むを得ずとす 

   るも戦場近接に伴い実動機数の増加は急激に上昇するのみならず、特攻基地は無数に整備せられあ 

   りて同時常続的攻撃の可能なるを知るべし 

  ハ、敵米英の北仏上陸の場合は、その根拠地として目鼻の間に英本土あり、我が本土上陸に際して敵 

   はかかる近接根拠地を有せず、洋上長途の補給に敵の欠点あり 

 ニ、我が本土には数百万の陸海軍精鋭部隊あり、その背後には更に数千万の義勇戦闘隊健在サるあり 

 四、戦争紬棄は国体の破壊、日本民族の滅亡なり 

 イ、我が国体を離れて我が国民は存在せず、日本人に降伏なし 

 P、敵の野望は我が国体を破壊し我が国民一人残さず殺汲もしくは奴隷化し皇国を地上より抹殺する 

   に在り 

 ハ、戦争紬棄は国民一部にのみ死と奴隷化をもたらすに非ず、如何なる階層、如何なる立場を問わず 

  一人残さずかかる悲惨なる運命に導くべし 

 ニ、降伏後のドイツの現状よりもはるかに苛酷なる条件下に置かるべし 

 五、敗戦的思想の徹底的払拭に努むべし 

  イ、徒らに敵の物量におびえるは誤りなり 

  P、旦糾の空襲被害その他の状況により我が戦力を過少評価するは誤りなり 

  ハ、敵陣にも苦悩の色濃厚なり 

 ニ、重要生産施設の疎開復旧も着々進捗しあり 

 六、戦争は意思と意思との闘争なり 

 イ、戦争は全精力を集中し右顧左晒(註=周囲をJかがっていて態度決定が出来ぬこと)するなく、遮に無に突 

  き捲くり押し捲くり、最後の一瞬まで頑張りぬく方が勝つ、本土決戦は我等に課せられたる未曾有 

  の大試錬なり、これに耐えて耐え抜く場合我等は勝つ、戦局急迫の余り「どうともなれ」の気持ち 

  が微かにでも動くとき我等は敗る、強靭、不屈、精神的にも肉体的にも徹底的に頑張り通し貫き通 

   すべし 

 ロ、欧州戦線における「スターリングランド」「ダンケルク」を見よ、前者に在りては「ソ」連が実に 

  

  

80e 

   千数百万を戦没せしめつつもその強固なる意思と団結により最後の土壇場において、破竹の勢いに 

        ● 

   て無人の野を行くが如き独逸の大軍を一挙に押し返し、究極の利を占めたる好適例、後者は敵英の 

   大軍が仏国戦場にて一敗地に塗れ、独空軍の縦横無尽なる猛爆に曝されつつその本土正に危殆に瀕 

   せるにかかわらず英国民は幼老男女を問わず見事なる秩序を保ち、属せず擁まず遂に独逸を屈伏せ 

   しめたる山天例を冷静に考察すべし 

 七、我が国と「ドイツ」は根本的に異なる 

  イ、吾が国は万邦無比なり 

  P、「ドイツ」は軍隊三百万の捕虜を出だせる事実に比し、わが皇軍将兵悉く特攻隊なり 

  ハ、「ドイツ」の指導者はその信念と態度に欠くるところあり 

 ニ、サイパン、硫黄島、沖絶何れにおいても我が官民は常に皇軍と一体協力し来りたり、「ドイツ」に 

   その例を見るを得ず 

 入、敵の思想謀略の激化を厳戒すべし 

  イ、敵は同時に我が国民の戦意の低下、軍官民離間等を狙い、伝単(註=宣伝ビラ)、放送等あらゆる手 

   段による思想謀略を激化せしむるは当然予想せらるるも、我は皇国民たるの自覚に徹し、その企図 

     は さい 

   を破推すべし 

  ロ、和平希望の思想及び戦争傍観的態度は敵謀略の乗ずべき間隙なり 

 九、我々は一に戦うのみ 

  畏くも第入十臨時国会に賜りたる勅語において、 

     なんじゆうしゆう          しんい      かんく  わか もつ            かいこう         こいねが 

  「爾有衆ノ忠誠勇武二信侍シ共二難苦ヲ分チ以テ祖宗ノ偉業ヲ恢弘セムコトヲ庶幾フ」と仰せられた 

       かしこ                  が しんしようたん 

  る御聖旨を畏み、我が国民は如何なる難苦にも堪え、臥薪嘗胆(註=薪の上に寝て、苦い胆をなめて復讐のた 

  めに恨みを持続させた中国春秋時代の呉王夫差の故事)、一人の戦争傍観者あるなく軍官民真に一致結束、一切の 

  不平不満を排除し、もって各職任において決死体当たりを敢行すべし 

      第三 宣伝の対象 

  地方の実情及び対象により宣伝の手段、内容、時期等を考慮す即ち、 

 一、国民一般を対象とするもの 

  二、指導者層を対象とするもの 

  三、各職域現場を対象とするもの 

 四、沿岸地区、地方地域等の区別 

 五、被占領地域と然らざる地域の区別 

   等を考慮す 

       第四 宣伝の方法 

 一、新聞の利用(新聞社に企画せしむ) 

 二、放送の利用(放送協会に企画せしむ) 

  三、刊行物の利用 

 四、映画の利用(啓発宣伝映画の作製) 

 柏‥胴鰯硝化[贈f紺兼\媚粥約の職域現場、農村) ■ 

  七、講演会、座談会の開催 

  入、口伝報道隊の活用 

 九、街頭宣伝の利用(伝単その他) 

 一〇、国民義勇隊、学徒報道隊の活用

 一一、その他 

 

      第五 宣伝実施に当たり執るべき措置 

 一、関係各方面の思想を統一し宣伝指導を根本的に一致す 

 二、戦局の実相並びに見透し等は能う限り迅速率直に発表す 

 三、宣伝資料は頻繁迅速に編纂、配布す 

 四、世論指導、宣伝実施が如何に浸透徹底しつつあるや絶えず考査、査察し次の企画施策に資す 

 五、民意の暢達、国民思想動向の正確なる把握に関し特段の創意工夫をなす