(二) 我が御國體

國體とは何ぞや、我が御國體は建国の本体にして即ち其の大精神である、之を形に
見れば国の体様である、当今の学者は唯形のみに観て国の態様と称し之れを精神的
に見ぬものもあるのである、西洋各国の國體は或は左様に解釈して当を得て居るか
も知れぬが、吾人の謂ふ我が國體は之れを建国精神の本性として観る国とが我国民
性に起因する國體観念であると思惟するのである。
当今の外来思想に就ては我が國體に鑑み慎重なる考慮を要すべき重大事件であるが
我が国家的観念と外来思想に対する所見も述ぶるに先ち順序として我が國體を要説
するのである。其の基礎たる根本義を的確に陳述し置くは最も必要のことである。
即ち我が国家の主権は万世一系の天皇に在るところの御國體である。又此の御國體
は我が皇国の最高の道義であつて無上の権威である。此絶対の道徳権威には日本人
として日本に生れ来りたる我が国民は敬虔の信念を以て遵法しなければならぬ主一
のものである、予じめ利害関係を思索して此の絶対の道徳権威に服従すと云ふ様な
ものではない。実に皇国の尊貴として心霊的に遵奉すべきものである。此の御國體
を尊重する信念を確固にして常に心頭に奉持して居ることが日本帝国国民たるの人
格として最も肝要な事である。
我が大日本帝国は天地開闢の初めより絶対霊妙の神慮に従ひ多くの年所を経歴し、
崇高幽玄なる天祖の稜威を継承され、皇祖皇宗の神聖なる御遺訓に依り皇統連綿万
世一系の天皇を戴き君民一体忠愛一本の御國體にして敬神尊皇愛国は我が皇国の生
命である、皇祖皇宗の 天租の神意を奉じて君臣の大義と親子の至情とを以て天地
間に我が国家を創立されたるは、実に我が御國體の精華でありて万邦に冠絶する所
以も茲に存するのである。而して我が御國體は即ち我が国の道徳権威にして 皇租
皇宗の御遺訓を列聖相継がれ、其の大御心を伝紹され我が皇国を統治し給ふ天皇は
即ち祖神より一貫したる現人神に在しますのである。
此の如く天孫族の雄大崇高なる神慮に依り、神人合一の順路を経て、皇祖は天下を
統治すべき天子の天業を恢弘すべく、皇孫に詔し給ひ、豊葦原千五百秋の瑞穂の
国は吾が子孫の王たるべきの地なり宜しく爾皇孫就て之を治めよ宝祚の隆なる当
に天壌と倶に窮りなかるべし」と三種の神器を授け給ひし事は今茲に申す迄もなき
御國體の源である。故に我が国家は建国の精神たる國體に起因し、我が國體は神
人合一に依りて発生したる 皇祖皇祖の神威霊光とも称すべき霊の発顕なる稜威に
起因するものである。
即ち我が日本の國體は之を後世の学理に照しても、合理的に融合するのであるが、
建国の始めより幽玄崇高なる天祖の神慮に依り天子の天業の根本を定められ、天下
に君臨さるゝ根源の当初より確定せられたるものである。故に我が臣民が国家に尽
すは 天皇に尽すのである、天皇に尽すは国家に尽すのであつて即是れ 皇祖の
御延長たる天皇の御聖徳に報ずる所以である。其の感恩報謝の信念が國體に伴ふ日
本国民の根本思想でなければならぬ。
前述の如く我が國體の根源は実に精美なるものであつで、神秘的歴史の成果とする
も又之を心霊的、学理的に攻究するも、整然たる幽玄の思想を発露し、独特なる然
も神聖なる国家創造の組織の体を完成するのである。此の精美なる國體の下に
三千年来の歴史を有する日本国民が、吾人は 皇祖の霊位即ち天皇の聖徳に報謝す
る為め身命をも貢献し以て国恩に答へんとする観念を有するは日本人として自然の
至誠の発作である。我が帝国国民の統一精神は茲に有るので皇室を中心とする国民
性も之に帰一するのである。

 


【意味不明箇所】
日本に生れ来りたる我が国民は敬虔の信念を以て遵法しなければならぬ主一のものである