趣味ある旅行記
学者文人にして欧米に遊ぶものよ。吾人多くを望まじ、願はくは趣味ある一冊の旅行記を齎し来れ。欧米廻覧実記以来、旅行案内と政家年鑑との翻訳は寧ろ多きに過ぐ。願はくは吾人に示すに、自家の趣味と識見と批評とに本ける一大創作を以てせよ。グラーフ・フォン・シャックが『半世紀』、庶幾くは以て範とするに足らむか。 遙に想ふ、嘲風、晩翠、好在なりや、否や。 (三十四年十月)