何処まで小人的なる乎
天下凡そ物の小さきを好むこと、我が国民の如きは無かるべし。彫刻は根附にあらざれば置物なり。書幅は扁額に非ざれば掛物なり。犬はマスチッフ嫌はれて狆コロ喜ばれ、八州の山河を前にして、人は盆栽に苦心す。文壇に歓迎せらるゝものは、十七字の俳句にあらざれば、百行以内の短編小説。新紙に人目を惹くものは『近事片々』に非ざれば端書集。小供芝居あり、小供講釈あり、小供相撲あり。我が邦人の嗜好は何処まで小人的たらむとする乎。
(三十一年十月)