国民歌を撰べ

 国民歌を撰べ、是れ民心統一に欠くべからざる也。一定の國體あり、一定の国民道徳あり、而して一定の国民歌なし。大典丕儀に際して国民の謳歌せむとするもの其れ何によらむとするか。『君が代』の歌、洋々太平の象あり。されど尚ほ沈静幽寂の格調あるを恨みとす。未だ生々的、進取的、尚武的大和民族の心血を鼓舞するに足らざるなり。吾人は国民的大抱負と国家的大理想とを発揚せる、更に雄大に更に壮烈なる国民歌を要す。
 歌人よ、楽家よ、眼を挙げて是の一大事業の卿等の頭上に懸れるを見よ。

(三十一年三月)