日本学問ノ方針


　日本人ハ如何ナル学問ヲナシタラバ宜カラント云フ問題ハ今日ノ如夕四
　海兄弟主義ノ行ハレゲル世ノ中二於テハ甚夕必要ナル問題卜思ハルーナ
　リ随テ之ヲ講究スルハ決シテ無益ノ策二非ザルヘク幾度ニテモ購のおだ
　巻繰返シ今モ未来モ同様二油断ナク寧者ノ意ヲ注クべキ虞ナラン論者或
　ハ日ハン是等ノ「ハ飴り注意セスト錐モ時勢二伴レテ自ラ定マルヘキ者
　ナレハ風ノマニ′1波ノマニ〈船ノ行来ヲ定メスシテ可ナテント然レ
　トモ之レ甚夕危フキ論ニシテ少ク思慮アル者ハ直チニ其不可ナルーヲ見
　出ス可シ果シテ然ラハ此題既ノ如キ雑誌二於テハ斯ノ如キ問題ノ討議ヲ
　始ムルモ最モ通常ノ「ナルヘシ
　抑モ官今ハ何事モ学問ノカニ依ラスンハ成立チ難キノ世ノ中ナレハ啓二
　文章上ノ、、、ナラス兵事二至リテモ学問ノ研究ヨリ生スル決果ノ優劣二閑
　り大工其勢力ノ度ヲ異ニスル辞合ナレハ武備アラントスルモノハ勢ヒせ
　事′′依ヲサルヲ得サルノ「トハナリヌ試二見ヨガ早艦銃砲其他戦争ノ要旦
　ハ皆畢術ノ研究ヨリ生シクル結果ヲ利用スル者ニシテ畢二腕力ヲ闘ハス
　モノニアラサルヲ借テ日本ノ畢間モ時勢二遅レテ昔シ風トハ趣キヲ異ニ
　セサルヲ得サルノ場合二立チ到り算術ハ商要人ノスル業ナリ杯卜云フ「
　モ最早一卜昔シノ事トナリテ今ハ早ヤ軍人政令杯二取リテモ敷革ハ樋メ
　テ必要ナル寧問ノ一尿素トナリ現二陸海軍ノ寧枚二入畢スルニ付テモ第
一工数寧ヲ心掛ケサレハ及第スル1能ハサルヲ見テモ知ルヘキナリ然ル
ニ犬ノ遺俸トヤラ云へル「ノアル故ニヤ書生ノ中ニモ敷革好キノ人物ハ
　極メテ稀レニシテ学校二於テ落第スル原因ヲ研究スルトキハ概ネ皆敷革
　二於テ好結果ヲ得サルモノ1如シ
　然ルニ西洋学問ノ精神トスル埋草二於テハ其精神トスル虞ハ全夕敷革ニ
　アリテ理学中二於テモ敷革ヲ應用スル「能ハサルノ畢科二於テハ未夕完
　成セサルモノト看傲ス位ノ詳ニテ夫ノ日本ノ昔風ノ学問二此スレハ雲泥
　零壊ノ遽ヒナリ是レ昔風ノ所謂学問卜今日ノ畢問トノ最モ趣キヲ異ニス
　ルノ鮎ニシテ将来其結果ノ大影響ヲ国家ノ命脈二及ホスヘキ要鮎ナリト
　ス其之ヲ附ス所以ノ者ハ西洋各国上父通シ彼レニ長スル虞アルヲ覚へタ
　ルニ基因ス即チ前二途フル如ク軍艦銃砲其他百般ノ製造工業等二至ルマ
　テ蓋ク理学ノ應用二出テタル者ニシテ所謂文明ノ利益ナル者ハ全ク之レ
　ニ外ナラサルナリ西洋卜交通シテ以来益ヲ受ケ又筈ヲ受ルモ皆此理学ノ
　應用ニシテ其他ノーニ至リテハ左程二感心スヘキ「ノ、、、エアヲス人事上
　二渉ル「ト雄モ理学ノ開ケタルョリ類推法二依リテ其精密ヲ附シタル詳
　合ナレハ是亦間接ニハ理学ノ結果・卜云フモ可ナラン郎チ百般ノ人事ヲシ
　テ複雑ナラシメタル原因ハ全夕理寧ノ結果ナレハ己二西洋卜交通シタル
　以上ハ勢ヒ其本根タル理畢ヲ根引キニシテ之レヲ日本二移植スルノ必要
　ハ云フマテモナキ謡シナリ左リトテ又数百年ノ習慣ヲ一時二排斥スル諾
　ニモ参ラサレハ只可及的趣キヲ攣スルノ外手段ナカルヘシ
　元来長ヲ取り短ヲ補7卜云フハ萬人一口ニ同意スルノ語ナレトモ長ヲ長
　シ短ヲ補フノ論モ亦極メテ必要ナル「ト余ハ深ク信スルナリ何方力長ヲ
　長シ短ヲ補フト云フヤ日ク我ノ最モ長スル鹿ヲ可及的増加シ我短鹿ヲシ
　テ割合こ減．少セシムルヲ云フナリ例へハ我二一尺ノ長所アリテ一尺ノ短
　所アリトスレハ其短所ヲ五寸二減セン「ヲ勉ムルョリモ寧日我長虞ヲシ
　テニ尺こ増長セシムルヲ云フナリ筍モ我ニシテ長スル虞ナクンハ将来資
　二望、、、ナキ場合二立至ルヘシ故二余ハ西洋ノ長ヲ探リテ我ノ短ヲ補フト
　同時二我ノ長ヲ長シテ我ノ短ヲ補フノ必要ヲ誼ク者ナリ然ラハ我二於テ
果シテ長トスヘキ虞アル乎日ク有り美術手蜃等ノ如キュ至リテハ業己二
彼我共二我日本人ノ得意ニスル虞タルハ能ク承知スル虞タリ故二此長虞
　ヲシテ彼レノ長ヲ採ルカ馬メニ損耗セシメサテン「極メテ必要ナリ
前二途フルガ如キ次第ナレハ我日本人ノ拳間ノ方針ハ我長虞卜彼レノ長
所トノ取り合セヲ最モ注意シテ計毒スルエアリ但シ鼓二途フル虞ハ専ラ
畢衝技蛮二輿フルーニシテ犬ノ人ノ人タル造ノ如キュ至リテハ世界萬園
　其揆ヲ一ニスヘキ筈ナレハ滋ニハ特二論セザレトモ是レトテモ或ハ多少
　ノ攣化ナキュシモアラサレハ猶他日ヲ待テ詳論ス可シ
　　　　　　　　　　　　　　　　（明治二十一年四月三日「日本人」第一競）