日本教育原論
並二日本教育論卜云フハ我国人lニ如何ナル教育ガ通常ス可キヤニ付云
フ所アラントスルナリ両シテ其之ヲナスニハ先ヅ我日本国ノ地位ヲ考へ
ザル可カラズ印チ其地理上ノ置位及ビ政治上ノ地位ニシテ大工国民ノ幸
浦二影響ヲ及ボスべキコーナリトス第一其地理上ヨリノ位置ヲ考フルト
キハ我日本国ハ細長形ノ島国ニシテ正帝ノ気候二占位シ而シテ英気候ハ
琉球小笠原島ノ温暖ヨリ北海道ノ寒冷二到ルマデノ欒化アリ地味二於テ
モ肥饅瘡由ノ別アリ山数多タシテ平原少ナシ随テ此園二住スル人民ハ衣
食住ノ施設皆此気象下地理トニ相嘗セザルヲ得ズ而シテ其政治上ノ地位
二於テハ其版圏ノ小ナル鮎ヨリ之ヲ見レバ世界強国ノ間二立ツハ頗ル困
難ナル景況ナシト云フべカラズ然レドモ其政体上二於テハ所謂祭政一致
ノ制度ハ単純平易ニシテ国内ヲ統轄スルニ便宜ナルハ蓋シ世界廣シト雉
ドモ未ダ其此ヲ見ザルーコロナリ滋二祭政一致卜云フハ印チ宗教卜政治
卜一途二出ヅルノ謂ニシテ古来欧州諸国ノ歴史二徴スルモ宗教ノ為メニ
政治上二大奨乳ヲ生ジタルノ例ハ資二枚章二追アラズ然ルニ幸ニシテ我
国二於テハ今来古往未ダ曾テ宗教ノ爵メニ全国一般ノ普ヲ被ムリタルコ
トアルナシ是レ即チ上古祭政一致単純ノ制度ヲ以テ圃ヲ建テタルノ結果
エアラズシテ何ゾヤ中古以後支那ノ文物ヲ輸入シ人民ノ思想ヲ欒縛シ悌
敦ノ俸衆二因リテ宗教上ノ好尚ヲモ攣化シタリト雄ドモ所謂畢純平易ノ
制度二到テハ未ダ曾テ其精神ヲ失ハズ人民本二報ユルノ心魂央モ止ムコ
トナカリキ概シテ之ヲ云ハバ国民ノ心ヲ圃綜スルノ機関其宜シキヲ得ル
ヲ以テ所謂甚大モ其志ヲ奪フべカラズトデモ云フべキ嵐象ヲ養成シタル
ナラン而シテ之ヲ政治上二思考スルモ小国ニシテ大圃ノ間二接シ其権利
ヲ破テントスルニハ質二必委ノ一事一′シテ今日貌囲ヲ維持ゼ/トスルノ′
ハ賓二妖タべカラザルノ精紳ナリ斯ノ如タニシテ戌り立チタル一種特別
ノ精神ハ世俗ノ所謂大和魂ナルモノニシテ我国風ヲ為スノ最要原素ナリ
共産史上ノ沿革ヲ見ルニ支那ノ文物印度ノ俳数等ノ輸入アリタルニモ拘
ハラズ依然トシテ存シ以テ今日二到レリ然ルニ近来二到リテハ西洋ノ文
物制度等ノ輸入アリタル以来本ヲ捨テ、未二走ルノ徒往々世二現ハレ出
デ我囲固有ノ最要原素二就テ疑ヲ容ル、モノアルニ到リタルハ深ク自ラ
厳ミザルノ弊卜云ハゲルヲ得ズ試ミニ世界萬園ノ中二就テ筍クモ一国ノ
体面ヲ存スル図工於テハ必ズ一種特別ノ風ヲ存スルノハ誰モ承知ノコーニ
テ膏二其風ノ天然二存スルノ、、)ナラズ何レノ国民モ皆カヲ壷シテ之ヲ養
成維持セント欲スルハ亦争フべカラザルノ事賓ナリ而シテ其之ヲナスハ
必ズ之ヲ為スノ理由ナカルべカラズ其理由ナタシテ斯ノ如ク英国風ヲ維
持セントスルモノ「期セズシテ其趣キヲ同フスルノ理アランヤ眈二斯ノ
如キノ理由アルヲ以テ余ハ日本教育ノ基礎印チ日本人タルニ必要ナルノ
教育ヲ施スノ尿素ハ古来日本人二特有ナル精神ヲ保存スルニアリナス或
人ノ歌工
数島の大和心を種として
よめや人く異国のふみ
トアリ其調ハ俗ナリト錐ドモ頗ル余ノ心ヲ得タルモノトス而シテ之ヲ養
成スルノ方法二到リテハ種々アルべシト錐ドモ曹二理屈ノ、、、ニ依ラズシ
テ感情二依ルコト頗ル多ケレバ貌ヲク我国ノ歴史(地理)文章等二幼少
ノ頃ヨリ慣熟セシム可シ故二見童二慣熟セシム可キ佳諺ヲ始メ小季ノ讃
本及ビ其他小畢校用ノ教科書等二到ルマデ其精神ニハ常lニ別途ノ原素ヲ
含蓄スルヲ日本教育ハ最要鮎ナリトス斯ノ如ク説キ出サバ或ハ尋常ノ因
襲者流ノ如ク見傲サル、カハ知ラザレドモ決シテ然ルニアラズシテ外国
ノ風俗文物制度ヲ習熟スレバスル程二益々此事ノ必要ヲ感ズルナリ斯ノ
02
如ク日本固有ノ原素ヲ極メテ幼稚ノ頃二於テ養成シ漸次成長スルニ随テ
智育徳育体育ノ権衡ヲ失ハザル棟二方針ヲ向ハシムルハ一般ノ教育家卜
敢テ抵括スルトコロアラズ然ルニ今日我日本二於テハ徳育ノ鮎二於テ其
基礎ヲ定ムルニ付キ頗ル困難ナル事情ナキュアラズ西洋諸国ノ如キュ到
リテハ宗教ノカヲ借リテ道徳ヲ維持セントスルノ風流行シ支那二於テハ
伶ホ郁魯ノ飴響二依ルト錐ドモ我国ノ如キュ到リテハ其中間二立チ殆ン
ド其利別二苦ムガ如キ有様ナリトス之ヲ古来ノ歴史二徴スルニ我国二於
テハ先キュ述べタルノ理由アルニヨリ中等以上ノ祀合ヲ宗教ノカニテ左
右スルハ甚ダ難ク郁魯ノ敦ニテハ欧米諸州ノ関係上二不都合ヲ来シ到底
何レノ方へモ圃易ヲ上ゲ難ケレバ余ハ琴二種ノ新主義ヲ掲出セント欲
スルナリ尤モ並二新主義卜云フモ敢テ余ノ造作二出デタルニアラズシテ
唯東西古今ノ諸説ヲ折衷シタルニ過ギズ印チ琴−余ガ菅丁起草セシ論文
ヲ掲出シ以テ其大意ヲ示サントス
人事モ亦物理ノ定則ヲ離レズ
大凡天地間ノ事物二就テ之ヲ見ルニ人事程複雑ナルモノハナキガ如クナ
ルヲ以テ世人動モスレバ人間ノ間二行ハル、事件ハ他ノ道理ヲ以テ之ヲ
推スコト能ハザルガ如クニ思考スレドモ我輩ハ其必ズ然ル可カラズシテ
他ノ現象卜其厨ヲ一ニスルモノタルコトヲ論締セント欲スルモノナリ
我輩ガ特工学−物理ノ定則ヲ人事二應用セントスルモノハ所謂勢力保存
論是ナリ革ソ此勢力保存論ハ常時物理学者ノ守本尊トスル所ナレドモ之
ヲ横張スレバ何事二付ケテモ應用シ得べキヲ以テ几ソ天地問二行ハル、
事件ハ几テ之二包有スルヲ得可シト信ズ扱此勢力保存論ヲ澄明スルニハ
一二ノ例ヲ琴壷グ可シ例へパ石ヲ取リテ之ヲ星根ノ上へ上ルニハ相首
ノカヲ要スべシ然ル巾己二之ヲ上ゲタル後ニハ何時三ノモ之ヲ保支セル
モノヨリ引離ス時ハ直二地上二落下スべシ而シテ其落下スルノカハ則チ
前二之ヲ屋根二上ゲタル時二要セシト同量ノカナリ又草木ノ葉ハ日光ノ
カ′′因テ蛮菊中ノ炭酸ヲ分離シ而シテ共演素ヲ吸収シ酸素ヲ遊離ス他日
此夢木ヲ寧ナ薪炭ノ用′′供シ熱ヲ磯スルヲ得ルハ取リモ直サズ大陽ノ熱
ヲ貯蓄シタルヲ以テナリ其他理学的ノ欒化ハ皆之二基カザルハナシ今我
輩ハ琴−此理ヲ人事二應用シテ以テ共同一ノ結果ヲ得ルコトヲ世間二示
サントス
琴l一例ヲ拳レバ宗教上二於テ古来高僧諸氏ガ大二世人ノ信用ヲ博シタ
ルハ仝夕此道理二基キタルモノ、如シ則チ高僧諸氏ハ肉食妻帯ヲ禁ジ通
常人ノ貴重スル財産ヲモ之ヲ見ルコト塵挨ノ如クス是皆勢力ヲ貯蓄スル
ノ手段ニシテ世間ノ信用ヲ博スル原因ナリ又宗教ノ本旨二於テモ矢張此
道理ヲ離レザルモノ、如シ印チ係数二於テモ此世二於テ美事ヲスレバ極
楽二行キ意事ヲナセバ地鉄工行クト云フモ又同一ノ理ヨリ出タルコト二l
テ是最大愚婦ニシテ宗教ヲ信ズルモノガ極楽二行ンガ為メ極メテ此世二
於テ美事ヲナス所以ニシテ矢張英資本ヲ貯蓄スルニ外ナラズ又道徳上二
於テ杜曾ヲ感動セシメタル彼ノ忠臣蔵ノ一事ヲ探リテ之ヲ讃センニ四十
七士ノ如キ忠勇義烈ノ士ガ千辛萬苦ノ労力ヲ費シ遽二故圭ノ仇ヲ復シ其
結局ハ切腹ヲ申付ケラレタルガ如キモ畢重刑二途ベタル道理二外ナラザ
ル結果ヲ得タリトス則チ先其結果ハ本人等二於テ其心二大二快楽ヲ覚ル
ノ,、、ナラズ後世二至ルマヂ其風ヲ聞クモノヲシテ義二勇ムノ念ヲ起サシ
ムル如キハ皆其費シタル努力ノ結果ナリトス若シ此輩ニシテ切腹申付ラ
ル、ノ代リーニ局位高線ノ身二使用セラレナパ未ダ必ズシモ今日ノ如ク世
間ノ人ヲシテ感動セシムルコト能ハザル可シ又佐倉宗吾ノ事ノ如キモ同
様ニシテ其費シタル勢力ニ相普スルノ結果ヲ得ザリシヲ以テ其死後二於
テ之二相嘗スルノ結果トシテ人ヲ感動セシムルノ勢力ヲ遺セリ夫レ此ノ
如ク勢力ヲ費スニアラザレバ其結果ヲ得ル能ハザルハ猶前二途ベタル如
ク石ヲ星根二上ル丈ノカヲ費シテ然ル後二屋根ヨリ石ヲ落スヲ得べキガ
如シ畢責ズルニ金銀ヲ貯蓄スルモ又石ヲ屋根テ上ル時二異ナラズ
前二途ベタル所ノ事資ハ必ズシモ今日ノ新俊明ニアラズシテ古来支部ノ
書中等ニモ問々散見スルトコロナキニアラズ則チ易ニモ積善ノ家ニハ飴
慶アリ積不善ノ家−二飴決アリ杯土石フ本文モアル位ノコトニテ今更之
ヲ喋々セズトモ誰モ栢ヨリ承知セラル、所ナラン然ルこ此事タル取リモ
瀾岬頂牡サギ敢ノ昇力保存租ノコトテ;其結果ヲ得ント欲こバ之二相首ス
ル」原輌qナカルベカラズ.印チ商業こ於テモ資本ヲ要シ農業二於テモ肥料ヲ
」翠スルガ如ク皆同叫ノ理ニシテ少シモ物理ノ定則ヲ離レザルモノナリ故
こ世間二出デ、苗事都合好ク身ヲ虞スルヲ得ルノ人ハ仮令物理ヲ寧修セ
ザルニモセヨ多年ノ経験二因ルカ若クハ之二相嘗スルコトヲ寧修シテ以
テ其成功ヲ致シタルコトニシテ決シテ此範囲ヲ出ヅルコトナカル可シ若
シ一原因ヨリシテ不相嘗ノ結果ヲ得ルモノアリトセンカ則チ物理ノ定則
ベルベチェアルモーショソ
上二不断運動ヲ生ズルノ理ニシテ物理畢上二一大攣化ヲ起ス可シ成
程或場合二於テハ資本ナクシテ暴富ヲ致ス等ノコトアリテ右ノ定則二取
除ケヲ出シタルガ如ク見ユレドモ是レハ未ダ其原因ヲ充分二研究セザル
ヲ以テ此ノ如ク外面二表ハルヽノ、、、ナリ
叉近来ノ物理ノ定則ニハ波動説ナルモノアリテ几ソ百ノ事件皆其形ヲ論
ズレバ波動ノ象アリト云へり近ク之ヲ例フレバ水面二起ル波ノ如キハ最
モ著明ナルノ例テソテ一高一低一凹一凸ヲナセバ之レヨリシテ他ノ事ヲ
推測スルニ杢気ノ如キモ矢張流動体ノコーナレバ眼ニコソ見へネ其運動
ノ象二到テハ蓋シ水面ノ波卜同一ナルベキハ己二之ヲ敷革的二讃明スル
ヲ得ルコト、ナレリ然ルニ此事モ亦人事二應用スべキモノト見エテ己二
古来之ヲ云フモノナキニシモアラズシテ就中易経全体ハ殆ド此ノ波動説
二基キタルモノ、如シ挽二周易三字ノ訣卜構スル遽カラズシテ復ルノ如
キハ最モ波動ノ意ヲ得タルモノ、如ク又乾ノ卦ヲ見テモ最初ニハ潜寵ノ
如夕未ダ薪ハレザルョリ次ノ見寵二移り漸夕薪ハレ九五二到リテハ飛龍
天二在リトテ最上ノ地位二達シ而シテ其絡リニハ克寵ノ悔トテ下へ降リ
タルノ象ヲ示セリ之ヲ気象章二例フルニ先ヅ春分ヨリ姶メ漸々二夏期二
及べバ其温度ハ漸々二上昇シ七八月ノ際二至リテハ遽二其極度二達シ九
月頃ヨリ.ハ急二其温度ハ低下シ一二月ノ際二至リテハ遽二其極低ノ度二
達ス是レ則チ波動ノ象ニシテ能ク前ノ乾ノ卦卜其象ヲ同フスル如シ近ク
一身ノ例ヲ取ルモ所謂一盛一衰ハ必ズアルモノニシテ一団ノ如キモ亦然
り是レハ歴史上二徽スレバ最モ明瞭ナルモノニシテ其時ノ長短ハ兎モア
レ決シテ姶絡平等ニテ少シモ波瀾ナキハナカル可シ覇絹弓う舞
前陳ノ如ク波動説ハ几ソ天地閏二行ハル、事件二朗スル一大定則′′シテ
之ヲ倍得シ之ヲ應用スルヲ得ルモノハ聖賢ノ流亜テソテ政令ノ争敬ヲ惇
スルニ足ルべキモノナリ印チ周易ノ如キハ聖人ノ作二出ヂタルモノト構
シ其説クトコロ頗ル波動説卜符節ヲ合セタレバ其中二仰ヂ天文ヲ硯僻シ
テ地理ヲ察スル云々卜云フモ今日物理ノ定則ヲ人事二應用セントスルノ
世ノ中二於ケルト殆ド一般ニシテ数千年前ノ作トシテ費二驚タべキ書卜
云フべシ宜ナリ共著者二聖人ノ稀アルヤ我輩曾テ中江藤樹ノ翁問答ヲ閲
スルニ或人同氏二自分義己二老年二及ビタレバ今ヨリ新二勤寧スル詳ニ
モ参ラザル故二何力一部ノ書ヲ研究シテ聖人ノ旨二達シタキ由ヲ語リシ
ニ同氏ハ之二答フルニ周易ヲ畢ブべキヲ以テシテ此書ハ聖人ノ神髄ナリ
ト云へり夫レ此ノ如夕聖人ノ神髄タル周易卜今日西洋哲孝ノ原理トスル
波動説卜暗合スルトコロアルハ決シテ偶掛二′ラザル可シ猶ホ其他支那
ノ書二就キテ之ヲ見ルニ老子ノ如キモ寧ソ盈民ノ理ヲ詳カニセルモノ、
如シ畢責スルニ支那二於テモ人事上二於テハ之ヲ研究セルコト随分深ク
西洋ノ如ク物理学ノ進歩卜並行セザリシヲ以テ或ハ精密ヲ妖クトコロナ
キニシモアラザレドモ兎二角二其大体二於テハ大同小異上玉フテ可ナラ
ン
0 0 0 0 0
抑モ今日理学ノ最モ貴重スベキ一鮎ハ事物ヲ漁知スルニアリテ印チ天文
章二於テハ数十百年ノ後ノ事マデモ漁ジメ之ヲ前知シテ少シモ誤ラザル
ガ如キハ最モ著明ナルノ例ニシテ猶ホ其他敷革ヲ應用シテ研究スルヲ得
べキ拳闘二於テ一原因ヨリ其結果ヲ推測シ得ルコト甚ダ多シ此ノ如ク天
地間ノ現象ヲ前知スルヲ以テ理畢ノ最高ナル目的トナスハ欧州ノ畢士皆
ナ然ラザルナシ成程現今ノトコロニテハ天文物理等ノ寧間ノ外′未ダ敷
革上二之ヲ研究スルヲ得ザレドモ他ノ畢問(先ヅ第一二兎象寧ノ如キ)
モ迫々其方針二向フヤ疑ヒナカルべシ然ルニ古来不思議ニモ支部日本杯
二於テ創業ノ主ヲ扶ケタル謀臣ノ如キハ率ネ皆ナ周易董老ノ寧二通ジ算
数卜占ノ道二達シタルモノ、如シ又別二箕際二政治治乱二関係セザルモ
03
其言ヲ立ツルヲ見レバ矢張活眼家トモ稗スべキ畢士印チ日本二在リテハ
三者清行ノ如キ支那二於テハ郡康節ノ如キハ何レモ多少前知ノ明アリタ
ルハ周易算数ノカニ因ルコト革ソ少カラザル可シ降ツテ今日ノ薯卜者ノ
如キニ到リテモ未ダ曾テ此砕軒ノ分子ヲ含有セズンバ非ラズ犬レ此ノ如
ク地ノ柏去ル数千里世ノ柏後ル、数千年1;テ猶ホ暗合スルトコロアル
カラーニ我輩ハ早晩此波動説ヲ精密二人事二應用スルヲ得ル時アルヲ見
ン
伶ホ此他二顆推スレバ物理ノ定則ヲ人事二應用シ得べキノ場合甚ダ少ナ
カラズ香物理ノ定則ハ義ク之ヲ人事二應用シ得可キモノト信ズルヲ以テ
余ハ宗教ヲ離レテ道徳ノ大本ヲ定メンナスルニハ此類推法二依リテ物理
ノ定則ヲ應用スルヲ以テ最モ官今二邁切ナル道徳主義卜侶ズルモノナリ
然ルニ支那二於テハ数千年前眈二幾分力斯ノ如キ思想アリタリト見エテ
易経ノ如キハ印チ其最モ著明ナルモノナリ金管テ友人高島呑象ノ易断ヲ
讃ミ之ガ許言ヲ為シタレバ琴l之ヲ掲出ス
前暑造士ハ易占ノ的中ヲ驚カズ又夕之ヲ疑ハズシテ何人ニテモ其意ヲ用
フル呑象ノ如キュ到ラバ必ズ的中スル事ヲ得ベキモノト信ズルモノナリ
之ヲ敷革上ノ問題二誓フルり僅々算数寧及ビ代数幾何ノ初歩ヲ畢侍シタ
ルモノガ微分積分若クハ動力畢等ノ困難ナル問題ヲ鰐カント企ツルモノ
アラパ革者ハ必ズ之ヲ嘲笑セン然レドモ敷革ノ経奥ヲ究メタル拳士ガ之
ヲ鰐カバ固ヨリ官然ノ事ナシテ敢テ驚ク事モナタ疑フ事モナカル可シ其
他ノ拳術二到リテモ僅二其初歩ヲ寧ビ得タルモノ1其藩奥ノ問題ヲ解ク
コト能ハザルハ敷革卜一般ナリ然ラバ則チ易二於テ何ゾ濁り之ヲ怪シマ
ンヤ呑象ノ如キハ革ソ易学ノ奥義二通ズルモノニシテ猶ホ敷革者等ノ奥
義二達シタルモノト均シカルべシ
厳二近来西洋ノ寧大工我国二流行セシ以来善意可香ノ差別ナク悉トク西
洋物ヲ探り用フルハ一般ノ風習トナリタレドモ西洋人ノ凌明シタルモノ
モ亦夕人ノ俊明シタルモノナリ必ズシモ東洋人ノ俊明セシ所二劣リタル
々ノナシト云フ可カラズ成程物理季ノ一新二到リテハ賓二卓絶セル所ア
リト錐モ人事上二渉レル「ハ矢張古人ヲ租述スル所ナキニシモアラズ印
チ試ミニ西洋ノ書籍ヲ閲スルニ行文中往々希騰羅馬等ノ格言ヲ符入スル
所アルヲ見テ知ルべキナリ希腺羅馬等ノ格言卜支那古代ノ格言トヲ比較
スルモ人事上二関スル事二於テハ敢テ驚ク可キ差異ヲ見出サヾル可シ然
ラバ人事上二渉レルコトハ東西今日二於テモ物理寧ノ如キ優劣ナカル可
シ造士ガ己二先頃論述シタル如ク易ハ支那聖人ノ神髄卜稀スルモノニシ
テ古来支那日本二於テ人工超ユルノ識見ヲ具へタルノ俊傑ニハ易理二通
ズルモノ多シ斯ノ如キ貴重ノ書ニシテ之ヲ西洋二現レシメバ未ダ必ズシ
モ今日ノ如ク購祀セラレズシテ少クトモI三−トン氏ノプリンスピヤト
並ビ行ハル、コトナラン況ンヤ西洋近時理学ノ世二於テ敷革及ビ物理畢
ノ理ヲ應用シテ易理ヲ類推シ之ヲ研究シタランニハ写l空糾絶後ノ妙理
ヲ教明スルヤモ亦夕未ダ知ル可カラザルヲヤ然ル1二不幸ニモ東洋退歩ノ
図工出デタルヲ以テ今日二在リテハ古本寧l於テ其書ヲ殆ンド紙屑卜同
然工費買スルニ到リタルハ賓工数ズべキノ至リナリ
造土嚢二英国二在リテ理学ヲ研究セシ際1二不囲之ヲ人事二應用センコト
ヲ試、、、嘲力研究セシ所アリシガ常時易ノ事ニモ心付キ居タレドモ該書ヲ
携帯セザリシヲ以テ之ヲ研究スルーヲ得ザリキ辟朝ノ後ハ時々撃l研究
セシ所卜易二説ク所トヲ比較シ梢悟得スルーコロアリタルニ際シ恰モ呑
象ノ易占ヲ得テ遽二其媒介ヲ以テ呑象卜相識ルニ到レリ而シテ共謀ク所
一々相符合セルヲ以テ益々道理ノ譲フべカラザルヲ倍レリ鳴呼東洋軍−
莫邪ノ創ナカランヤ願フニ用英人ヲ得ザルノミ易二到リテハ幸二呑象ノ
アルアリ他ノ賓剣モ亦夕均シク用英人ヲ得ルハ造士ノ希撃l堪へザル所
ナ‖ノ
前述ノ如ク支那ノ聖人ハ数千年前二於テ撃【人事卜物理トノ比喩ヲ寧ソ
タルコトアルハ不思議ノコトテソテ其精密ノ鮎二於テハ盈ハ之ヲ映クト
コロアルべシト維ドモ兎二角其趣キヲ今日ノ孝問卜同フシタリ上古ハザ
ルヲ得ズ故二余ハ我図ノ如夕宗教ヲ以テ道徳ノ大本ヲ定ムルコト頗ル難
カルべキノ固二於テハ物理ヲ準ソテ人事二應用スルヲ以テ好手段トナス
モノナ‖フ決■q ll メゝ
未レ斯ノ如ク自主心眈二立チ道徳ノ基礎確定スル上二於テハ遽二他ノ教
育こ及バザルベカラズ然ルニ我国ノ歴史ヲ徽スルニ今日ノ如ク廣ク世界
卜交通スルニ不通嘗ナル人民ノ養成法ヲ来シタル原因甚ダ少ナカラズ今
立二英一二ヲ拳ンニ係数ノ俸来二因り肉食ヲ衰退セシメシハ大工我園民
ノ体格上二影響ヲ及ポシ随テ精神上ニモ影響ヲ及ボシタレバ蓋シ争フべ
カラザル事箕ナラン今日二在リテハ成ル可夕肉食ヲ奨励スルコト、ナリ
タレドモ吾人ノ体格ハ眈二己二疎食二邁スべキ構造ナレバ急二肉食ヲナ
ストモ英数飴り著シカラザル可シ尤モ此後卜錐ドモ肉食サヘスレバ必ズ
西洋人ノ如キ体格ヲ得ルトモ必ズ可カラズ是レ食物ハ大工気象卜相関係
スレバナリ然レドモ彿敦ノ為メニ柾ゲテ菜食トナシタルガ如キモ頗ル天
然二反シタルノコトナレバ今日肉食ヲ奨励スルハ固ヨリ官然ノコトナリ
第二徳川政府ノ政客二因り土民ヲシテ進取ノ気象ヲ失ハシムルニ到リタ
ルハ今日二影響シタリト云ハゲルヲ得ズ印チ外国二交通スルヲ禁ジ畢問
二於テモ朱子畢ノ如キ謹直ナル風ヲ養成スべキモノヲ抹リテ活撥森落ノ
風アルモノヲ抑へタルガ如キヲ見テモ土民ヲシテ俗ノ所謂内気トナサシ
メタルヲ知ル可シ夫レ斯ノ如ク人心ヲシテ萎徽セシムルノ元素ハナキュ
シモアラザレドモ幸二伺武ノ気風ハ古来ヨリ未ダ曾テ地二墜チズシテ徳
川政府ノ時代二在テモ虜ル之ヲ養成シ現二士農工商土ア士ハ社合ノ上流
二位シ非常ノ権力ヲ有セシメタリシカバ前述ノ二鮎アリシニモ拘ハラズ
伶ホ幾分力清澄ノ気風ヲ一般ノ人民二及ボシタルトコロナキテソモアラ
ズ印チ民間二在テモ所謂男達ナルモノヲ生ズルニ到レリ此時代二寧アハ
今日トハ大工趣キヲ異ニシ武士ハ攣二虞シテ他ノ三民ノ為メニ其安寧ヲ
保護スルノ職ニアリテ養ヒヲ受ルヲ官然ノコト、ナシ居タリシカバ膏二
其武奉ヲ研究スルノミナラズ犬ノ自主心及ビ道徳ヲモ研究シテ以テ一国
ノ精神トナリ居タリシガ明治維新後二到リテハ全夕此制度ヲ鷹シ士族ノ
稗競ハ存在スレドモ常職アルエアラズ其執ルトコロノ業二到リテハ他ノ
三民卜敢テ異ナルトコロナキナリ然レドモ伶ホ従来ノ気風ヲ存スルヲ以
テ今日日本ノ精神トモナルべキ人士ハ多夕此種ノ人エアリトス然レドモ
食ヲ求ルノ衝二拙キハ又自然ノ勢ナリ之二反シテ他ノ三民ノ如キハ生ヲ
営スルノ衝二到テハ益々楕ヲ極ムルト錐ドモ公義心二乏シキハ亦自然ノ
勢ナリ故二今日此鮎二於テノ教育者ノ着目スべキトコロハ此二種ノ人民
ヲシテ平等均一ナラシムルニ在リトス抑モ徴兵令ノ蜃布以来一般人民ハ
平等工兵役二服スルコト、ナリテ幾分力前述ノ目的ヲ達シタリ而シテ近
来二到リテ諸畢枚ニモ体操々練等ヲ正課トシ大工之ヲ奨励スルニ到リタ
ルハ昔三其首ヲ得タルコト、云ハザルヲ得ズ抑モ体育ノコトタル今日二
在テハ最モ注意スべキノ時土石ハザルヲ得ズ何トナレバ前述ノ如夕武士
ハ職ヲ解キ農工商等ノ資業二就カザルヲ得ザルノ場合トナリ蕾風ハ漸次
滑滅シ蕾ノ農商工等ノ人民ハ命ホ幾分力書風ヲ存シ襲二虞スルノ際ニハ
士族二依ルノ有様アリテ饅育ノ極微二達シタル時ナレバナリ
肉食ヲ奨励シ饅育ヲ盛大ナラシムルト共工夫ノ活倍進取ノ気象ヲ養成セ
ザルべカラズ其之ヲナスニハ幼稚ノ頃ヨリ此向キノ書物等ヲ讃マシメザ
ル可カラズ欧州ノ諸国二於テハロビンソン漂流記ナル小説ヲ兄重工讃マ
シムルハ大工後衆ノ気象二関係スルトコロアルべシ故二余ハ我同志ノ小
説家二希望スルハ斯ノ如キ小説ヲ著作セラル、ニアリ膏二小説ノ、、、ナラ
ズ董家ノ如キニ到リテモ亦均シタ此望、、、ヲ属スルナリ
並二序デナガラ記載スべキハ夫ノ美術ノ事是ナリ此事タル菅二道徳心ヲ
撮起シ若タハ資業上二應用スル為メノ、、、ナラズ几ソ此頬ノコトハ人物ノ
品格ヲ高メ幾分力学功競利ノ軋轢二膏スルニ均シカル可シ
借智育ノ鮎二到リテハ優勝劣敗競争日二甚シキノ今日ニアリテハ之ヲ奨
励セザルモ自然卜非常ノ進歩ヲナス可シ然レドモ時トシテハ其方針ヲ誤
り遽二徒労ヲ為スノ場合モナキニシモアラザルべケレバ余ハ鼓二少シク
陳述スルトコロアラントスルナリ借今日ノ智育卜云フハ重工西洋ノ畢衝
技拳ヲ研究スルノ謂ニシテ俗二所謂洋寧ヲ修ムルナリ而シテ此洋寧ノ紳
臆トスルトコロハ全ク理畢二在り成ル程法律政治其他百般ノ事緻密ヲ極
メタリト云フト雄ドモ退テ之ヲ考フル時ハ仝ク理孝ノ進歩シタルヨリ之
04
ヲ致シタリ上宍ザルヲ得ズ理孝ノ人間二影響ヲ及ボスハ第一ハ其智識
ヲ精緻ナラシメ第二ニハ英資業上ノ便益ヲ増スニ在り琴一於テ純正理寧
及ビ應用理畢ノ別アリ固ヨリ此等ノ学科二到リテハ図工因リテ英数投法
ヲ異ニスルノ道理ナキガ如シト維ドモ退テ之ヲ熟考スレバ叉其然ルべカ
ラゲルヲ見ル可シ成ル程一個ノ寧者二於テハ各々其好尚アルべキナレバ
強テ之ヲ束縛スルコト能ハザルべシト維ドモ園ノ全体ヨリ之ヲ見レバ前
二途ベタル如ク我園ノ地理上ノ位置及ビ政治上ノ地位ヲ思考スルーキハ
其方針ヲ定ムルニハ大工関係アルヲ知ルべシ
純心理畢ヲ修ムル上二於テハ其方針ヲ定ムルニ関係相々少キガ如シ然レ
ドモ新事研究ノ如キ高尚ナ〜畢業ハ固ヨリ普通ノ理寧卜維ドモ我国ノ地
理上ノ位置卜政治上ノ地位トニ関シ我国民二可及的辛礪ヲ増加セシムべ
キノ方向二向ハシム可キハ官然ノコトナラン抑モ純正ノ理寧ハ写l智育
ノ中心ニシテ西洋ノ文明開化卜稗スべキノ鮎ハ仝ク琴;レバ最モカヲ
寧/テ之ヲ奨励セザルべカラズ但之ヲ奨励スルトモ俄カニ其結果ヲ見ル
コト能ハズシテ往々俗人ノ嘲リヲ衆スコトアリ然レドモ今日西洋ノ文明
開催タル所以二付キ1三写1幾多ノ寧者ヲ犠撃戻シテ得タルノ結果卜
云ハザルヲ得ズ金管ア日ク
「抑モ海中二台場ヲ築カントセバ非常ノ捨石ヲナサヾルべ.カラズ其他何
事二限ラズ多少ノ捨石ハアルモノナリ又試二南瓜胡瓜ヲ見テモ中lニ冗
花極メテ多シ花ノ吹タルダケ皆資ル上古フ詳ニアラズ此ノゴトキ卑近ノ
例ヲ見テモ分り切タル謡ナリ準−南瓜胡瓜ノ如キハ最初二嗅ハ多ク冗花
ナリ今一二ノ冗花ガ吹タリ土ア眞二貰ガナラヌ杯卜断言スルノ不可ナル
ハ老農工非ザルモ能ク紳ズルーコロナリ若シ冗花ノ吹クヲ厭ハヾ曾テ種
ヱザルニ如カズ成程鎖国撰夷ヲ決行シ武陵桃源ノ昔二立戻ルコトガ出来
ルナラバ西洋ノ畢理工基キタル事物モ不用ナルべケレド是ハ出来ナイ相
談ナリ然ラバ是非共二共用意ヲ為サヾル可カラズ」
犬レ斯ノ如タナルヲ以テ理拳者ノ研究スルトコロ轟ク好結果ヲ輿フルト
期スべカラズ又最初ヨリニュートン及ビラプラースガ牢ソタル如キ饅明
ノ出来ルトモ期スべカラザレドモ然レドモ若シ眞正ノ学士アラバ可及的
之二便宜ヲ輿へ且ツ官該畢士ニシテ必要ナル蜃明ヲナシタランニハ其功
ハ写l政客上若クハ戦署上二於テ功ヲ奏シタルニ均シカル可シ香此教明
ハ膏三園ノ人民工事頑ヲ輿フルノ基ヒトナルノ、、、ナラズ世界ノ人民二
華南ヲ輿フべキ一原因トモナルべキナレバ英人ノ名著ニヨリー三園ノ地
位ヲ高ムルニモ到ルコトアル可シ但シ此等ノ眞正ノ寧士二到リテハ或ハ
脱几ノ所アリテ為メニ俗人ノ意ヲ承クルニ巧ミナラザルべケレバ宜シク
注意シテ之ヲ絆知セザルべカラズ而シテ学術ヲ以テ志トナシ敢テ賞ヲ望
ムニ意ナクトモ之ガ功ヲ安スルヲ忘ルべカラズ夫レ斯ノ如ク眞正ノ寧者
二充分ノ便宜ヲ輿へ新磯明ヲナシテ学問上二功ヲ立テタルニ於テハ充分
二地位ヲ輿へテ之ヲ令崇ス可シ是レ印チ寧問ヲ奨励方ルノ道ニシテ畢者
モ亦一国ノ慣面ヲ保ツ上二於テ間接二大ナル影響ヲ及ボスべキナリ
女工應用理章二到リテハ英一囲ノ利害二関係スルコト頗ル大ナレバ最モ
心ヲ琴−致サマルべカラザルナリ余ハ此鮎二付キテハ常二直詳ヲナサズ
シテ琴フク義詳ヲナスべキヲ以テセリ成ル程或ル場合二於テハ直詳ニテ
モ差支ナシト錐ドモ義詳ヲ要スルノ場合最モ多シトス郎チ農商工等ノ質
料哀リテモ我国ノ地理上ノ位置ヨリ空欧米諸国トハ其趣キヲ異言
ルーコロアレバ應用理畢ヲ教授スルニ於テハ最モ注意セゲルべカラゲル
ナリ試、、、ニ農学ノ一事ヲ取リテ之ヲ見ルモ欧米諸国二於テハ乾田多ク日
本ニハ水田多シ西洋二於テハ家畜顆ヲ飼養スルコト甚ダ多ケレドモ日本
二於テハ之ヲ用ルコト甚ダ少シ余昔テ友人某氏二開クニ日本ノ葡萄ハ葡
萄酒ヲ造ルニ通常セズト是レ膏二日本ノミナラズ日本二類似スル気象ヲ
有スル圃ノ葡萄ハ皆ナ不邁官ナリト夫レ斯ノ如ク気候卜地味トノ性質ニ
ヨリテ英国二生長スル動植物等ノ種類及ビ其生長法等二到リテモ甚ダ相
異ナルコト多ケレバ西洋ノ理学ヲ直詳シテ此ヲ我国ノ賓業二應用セント
スルトキニハ問々失望ヲ来スコト少ナカラズ仮令西洋人ヲ傭ヒ入ル、ト
モ是泣モ我国ノ状況二習熟セザル問ハ失張直詳者卜同様ノ誤謬−−陥ルコ
ト甚ダ多カル可シ故二理寧ヲ我国ノ賓業二應用シテ利益ヲ得ルニハ西浄
ノ畢閏ヲナシタル壮年輩ノ我執ノ賓況ニモ習熟セルモノヲ用ヒテ後進ノ
生徒ヲ蕪陶セシムルハ最モ必要ノコーナリトス現二瞥業ノ如キニ到リテ
ハ日本人ノ体格卜西洋人ノ饅格トハ大二異ナルトコロアリ且ツ平生ノ飲
食居所二於テモ同ジカラザレバ其病患ノ際二宮り之ヲ虞理スルノ造モ相
異ナラザルヲ得ズ其他之ヲ類推スレバ斯ノ如キノ例枚挙二退アラザル可
シ是レ皆地理上卜政治上トノ地位ニョリテ斯ノ如キ差異ヲ致スコトナレ
バ埋草二限ラズ其他百般ノ畢衝技蜃ヲ應用スルニ於テモ常二此鮎二注意
セザル可カラズ余ガ特二理学ヲ推シテ他ノ寧術二及バザル所以ノモノハ
眈二前二途ベタル如ク西洋文明開化ノ紳脇ハ学理エアリテ畢術ニモアレ
賓業ニモアレ皆ナ其應用ニョリテ精密且便宜ヲ得タルコトナレバ今日ノ
普通教育二在テモ特二理学ノ思想ヲ態揮セシムル様注意スルハ教育家ノ
務メ上茶ハザルヲ得ズ印チ此鮎コソ賓二我東洋人ノ西洋人二及バザルト
コロナレバナリ
次二言語文章ノコトニ到リテモ近来頗ル議論多キコトナルガ余ハ昔テ言
へルアリ日タ(前略)抑モ言語文章卜圃基トハ最モ親密ナル関係アルモ
ノニシテ其軽々祀スべカラザルハ誰モ承知ノ事ナラン唯夫レ斯ノ如クナ
ルヲ以テ数年前ヨリ学士杜曾二於テハ種々ノ企テアリテ所謂仮名ノ曾羅
鳥字曾等ノ設立アリ亦夕英語ヲ以テ普通語トナサントマヂ思考スル人モ
アルニ到レリ然レドモ今日二到ルマヂ未ダ曾テ著シキ結果アリタリトモ
開カズ願二此事タル頗ル困難ノ事テソテ一朝一夕ノ能ク攣換スべキエア
ラズ現二所謂改進主義ヲ持ル、人卜錐モ率ネ皆ナ非常二不便ヲ感ズルニ
アラザレバ自在二億名君クハ羅馬字ニテ文章ヲ揺ルコト能ハザルモノ、
如シ且ツ又此等ノ文章ヲ讃ム人工取リテモ賓二不便極マリナク飴程勉強
スルエアラザレバ讃マウト云フ気lニナラヌモノナリ夫レ文章ハ意思ヲ
交換スルノ要具ニシテ可及的便利ナルべキ筈ナルニ反テ不便ナル文章ヲ
用ヒントスルハ唯今ノ虞ニテハ先ヅ行ハレ難キハ無理モナキ話ナリ尤モ
此不便ヲ感ズルノ徒ハ漢字ヲ用ヒテ教育ヲ受ケタルノ輩ナレバ左モアル
べキハ至官ノコトニシテ少シモ怪ムニ足ラズ然ラバ漢字ヲ廃シテ慣名君
タハ羅鳥字ヲ用ルニ到ルハ唯今ノ有珠テナハニ十年トモ三十年−モ年限
ヲ切テ之ヲ賓行スルノ見込ヲ立ツルハ費束ナキコトナルべシ僻令非常ノ
英断ヲ用ヒテ一時二之ヲ決行スルトモ其弊ノミ多クシテ其利ハ極メテ少
ナカル可シ故二少シク思慮ヲ有スル政治家ナラバ決シテ斯ノ如キ失策ヲ
ナスコトアルべカラズ其他ノ方便ヲ以テ一時二之ヲ決行セント欲スルハ
是迄ノ我国ノ経歴二依ル時ハ決シテ行ハルべキ事トモ思ハレズ成程支那
ノ文字ヲ輸入シタルノ例モアレバ随分激攣モ行ハル、べキカー思考スル
人モアルべケレドモ右ノ時代卜今日トハ大工趣ヲ異ニスルトコロアリ即
チ支那ノ文字ヲ輸入スル以前ニハ日本国有ノ著ルシキ文字等モアラザリ
シガ如シ然ルニ今日エアリテハ最早普通ノ文字アリテ西洋ノ語言二此ス
レバ不足スルトコロモアル可シト錐モ世間並ノコトヲ言ヒ顧ハスニハ差
支へナシ斯ノ如キノ勢ヒナルヲ以テ之ヲ鹿シテ他ノ方法ヲ用ヒントスル
ニハ非常ノ便益ナカルべカラズ然ルニ今日マデ吾輩ノ親シク見ル所ニテ
ハ慣名字ニモアレ羅鳥字ニモアレ清爽二於テモ日本人ノ思想ヲ言ヒ顧ハ
ス上二於テ非常二便益ヲ輿フベシトモ思ハレズ縦令ヒ便益アルトスルモ
英資際二行ハル、ハ蓋シ数十百年ノ後ニアルべキコトナレバ吾輩ハ斯ノ
如キ取越シ苦労ヲ止メテ先ヅ今日吾人ノ思想ヲ言薪ハスニ堪ユべキ言語
文章ヲ制定セン事コソ望マシク存ズルナリ其之ヲナスハ只今日吾輩ノ使
用スル新開体ノ文章ヲ可及的平易ニスべシト云フニ過ギズ即チ取モ直サ
ズ談話卜文章卜粗ボ同一体トナランコトヲ欲スルナリ就中戌ル可ク陳腐
漢語ヲ廃シテ世間り通用スル俗語ヲ用ヒ充分二思想ヲ言ヒ顧ハスコト能
ハザルノ場合ノミ漢語若クハ日本製ノ漢語若クハ西洋ノ原語ヲ交へ用フ
可シ夫レ斯ノ如夕日本ヲ精神トシタルノ言語文章ヲ制定スルハ則チ囲基
ヲ筆固ナラシムルノ最大要具ナリ故二吾輩ハ文字文章等ヲ改良セント熱
心スル諸土工望ムトコロハ其金歯スルトコロノ業ノ大工園基卜関係スル
ーコロアルヲ熟知セラルべキニ在り
犬レ斯ノ如ク言語文章二於テモ内外本末ノ別ヲ詳カニシ然ル後英語ニモ
アレ濁逸語ニモアレ悌語ニモアレ入用ノモノハ之ヲ教科二加フルハ固ヨ
05
リ首然ノコトナリ余ガ滋二陳述シタルトコロノ精神ハ膏二畢枚数育ノ、、、
ニ関係スルニアラズシテ几ソ人ノ智徳ヲ養成スルノ具ニハ悉ク之ヲ存セ
ンコトヲ欲スルナリ今日日本人ノ智徳ヲ養成スルハ家庭教育畢校教育ノ
外種々ノ原素アリテ或ハ其影響ノ畢枚数育ニモ擾ルコトアリ郎チ滋二英
一二例ヲ拳レバ寄席、演劇、花柳杜合、角カ、新開、小説等ハ皆大工勢
力ヲ有スルモノナレバ苛モ教育ヲ務メトスルモノハ能ク共闘係ヲ詳カニ
シテ充分二意ヲ用ヒテ之ヲ商量スルエアラズンバ寧校教育ノ如キハ到底
皮相ノ教育タルヲ免レゲルニ到ル可シ若シ夫レ此等各種ノ教育論二到リ
テハ自ラ其人アリテ存スべキナレバ余ハ唯琴−教育ノ盈礎二関シ卑見ヲ
吐露スルノ、、、
(明治二十年二月 金港堂刊)