達見家
惇士になる法
何事も阿堵物の世の中、先づ之を得るの術なかるぺからず、但し人の姓
を冒すの手段もあり、闇粛汲の株守は官世風にあらずと聞く。外園へ往
て拳位を男てなりと蹄るべし、是にて大寧にだに縁を付くれば、博士に
なること掌を反すょりも易し。然る後復姓も勝手たるべし、養家の女子
達見家とは、たとへば富士山願の雀の巣を見て、脚下より飛立つ鳥を見
ず、前山の雷鳴を聞て耳を蜜す蚊の饗を開かず、すぺて遠き者、大なる
者に明かにして、娃き者、小なる者に注意せざる人を云ふ。
(明治二十四年十月十九日「亜細亜」第一七戟)