露西亜と戦ふの利害
     《牡合腐敗の救治策として》


 平和は進歩の母なりとは世界普通の論、何人も口にする所なるが、戦争
                                     
 は文明の基なりとはモルトケの『戦争哲学』中に説く所、日く『凡そ世
                               
 界今日の進歩は単に平和に由りてのみ来るものにあらず、又た戦争に由
                                  
 りて来ること屡ミなり、試みに上下二千年の歴史を執りて看る、其の三
 かc」が掛軒が鮮iγ軒が抑かが掛かが掛かががが街中和ぐ野付酔い

2b

                                
降るに及び有形無形の進歩に由りて戦争の度数亦た漸次滅ずるは掩ふぺ
                                
からざるの事実たりとはいへ、稀れに起る戦争は文明進歩を促がすに於
                                
 て其の効力尤も大なり、故に戦争は世界の進歩が其の極度に到達するま
              
 では決して絶無に辟すぺからず』と、以上は『戦争哲寧』中に説く所の
一段にして、論の大意は戦争は未開の国に進歩を導き、開明の園に進歩
 を増すといふに辟著す。念ふに薯の利に伴ふもの、覚に濁り戦争にのみ
限るとせん、大凡そ普通に有書物として構せらるゝもの、必ずしも単に
有晋なる物として斥けらるべきに非ず、他の一面に於ては又た必ず多少
 の利益をも含有せざるなく、猶ほ毒の一面に於て亦た薬たるが如き、絶
 ぺてを通じて殆ど常なりといふも妄ならざるに似たり。此に於てか平和
 は進歩の基なりといふと雖も、戦争は亦た平和の本なりといふ者あり、
其の説に日く『〃耶が掛奈が軒掛がか鮮が絆卦いいl仙針が中称が軒
                                
 せざるを得ず、而して此の過大なる人口の繁殖を緩和するもの、戦争実
                                
 に其の一に居る、此の鮎に於て戦争は猶ほ疾疫の如し、大の疾疫や、人
                                
 は観て以て之を災害と為すと雖も、造物圭の眼よりする、即ち過度の人
耶軒軒が抑帥がが」掛が絆絆軒だレで軒慧ハ卦酢がが郁ザが卦軒都か
炉酔絆針l桝が新野が軒下卦排卦l川が仰がぶ酔即断軒がh卦い街軒
                                
 大望野心を有する圭植者若くは政治家は其の有する大望野心を満たさん
                                
 が鳥めに種々の危険なる手段を採り、かくして衆人の生命と財産とを破
酔いが、か抑軒が〃酔卵が掛蔚がが軒掛酢紆群ががが弊がi£ハがかが
                     
 ればなり、戦争宣に悪事とのみ言ふべけんや』と。言ふ所頗る旨ありと
 すぺし。
 我が『日本人』は固より戦争を将護する者に非ざれども、而も亦た腐敗
 せる社会の平和の維持を必要とするものにも非ず、戦争哲畢の上よりし
 て言ふ、戦争は政令の腐敗を矯正するに於て大効あり、之れ有るが故に
 平和の手段を以ては殆ど救治すべからざる腐敗より政令を捧救すること
 少れなりとせず○か卵酔酔即妙中郡ぞ牢押印肘掛舶ル斬新僻即酔h
         
 人を蒼修に誘き、人を虞窮に誘き、人を浬靡に誘き、要するに杜合一般
l榊僻卵廓肘郎いや砕い中卒秤l順野中が舛い卵即蔚抑靡繋即妙が
忘胴貯l仇酢忘旧師f皿州蒜か如いが、針術斯いか紛部桝かぷ芸が
鮮卸中郡ポ酔mr肘舶卵が桝弊l沖卵がぷぐ静か桝新監几が瀞
紳かが如か卵郵むが、カ掛率即新ぷ弊いカ掛率が僻ル卵鮮釦排蔚が
奈が緋幹ぷ靡ザ弐し知新かiい貯如、押印郎ル濫エ釦妙齢即却靡中
尉幹舶敵餅桝鮮貯むl仙中郡桝押掛即僻cr鮮舶がft秤だレ。近かく
 日清戦争の際に之を観る、我が軍隊の海陸並進して朝鮮牛島に入り、更
 に樽じて遼東の野に赴けるまで、一国の人心は専ら国威の宣揚に熱中し、
 爾りしより後約一ケ年の問は情夫も起ち食夫も廉に、老幼婦女に至るま
 で、皆な国威宣揚といふ高尚なる希望に支配せられ、少くとも一時は風
 俗腐敗の進行を中止したるものありき、不幸にして支那人は我が敢に非
 ず、旭旗の指す所皆な悉く風靡し、宛如枯を推き稿を振ふの態ありしか
 ば、容易に戦勝の名著を得て凱旋し、而して一たぴ凱旋する、賭臨り兵
 惰り、朝野を挙げて狩かに戦勝に酵ひ、所謂膨脆主義は朝野を通じて一
                                         
 般の問に行はるゝに至り、然る後上下の腐敗忽ち之に従ひぬ。かく論じ
軒抑や中田が秒針が貯貯監田酔伊野尉h酔iで酔肘ヂが紳だ町a掛か
 h野智慧丁か秒針が厨貯c僻絆ザh俳かがが研かiピ貯が、肘h肝a
                                 
 はもと戦勝の意外に容易にして、恰も小兄を打ちて倒すと同じく、以て
                                
 眞正の戦争として見るぺきの資格あらざりしに因由す。今や政令腐敗は
                                 
 戦争以前よりも一層甚だしく、法律又は教育を以て之を矯正せんとする
                                 
 も殆ど其効なからんとす、かゝる時に嘗りては之を矯正するの手段とし
                       
 て更に眞正の戦争を作こすこと、それ或は必要ならん。
 現今我国の杜合は甚だしく腐敗し、法律又は教育の力を以てするも殆ど
 矯正の効なからんとし、唯だ眞正の戦争を作こすに依りてのみ矯正の功
 を望み得ぺきの時、幸にも我れと東亜に於て相ひ異なる利箸を有する露
 西亜は、遼東の海陸に於て軍隊の活動を始め、宛がら我が日本帝国に向
 ふて戦争を挑まんとするものゝ如く、行動の横暴亡状なる既に恕すべか
 らざるものあり。露西亜の軍隊はこれを支部の軍隊と比覿する、勇怯強

 鶉相距る狗に達しといはる、應さに我が軍陰に取りて好敵手たるを失は
                                
 ざるべし。乃ち此の好敵手の我れに向ひ進前し来るに嘗り、之に應じて
                               
 以て抵敵する、我が戦後に操張せる陸海軍隊の技備を親彰するに於ても
                              
 邁嘗とすぺく、戦技練習の上に於ても亦た通常とすべきにあらずや。況
                                
 や外交上の事歴に於て我が帝国の以て之を傍観すぺからざる関係あるを
                               
 や、又た況や我が帝国の国利国樺を東亜の大陸に維持するの必要よりし
                                
 て露西亜の示威的運動に封抗するは寧ろ自衛の鳥め己むぺからざる所な
                               
 るをや、而して又た況や我が社合の腐敗は眈に甚度に達し復た法律及び
                               
 教育のみを以て矯正すべからざるをや、約するに露西亜との戦争は之を
                  
 刻下の急に應ずる必要の手段と謂ふて可。由来社会の腐敗を矯正するの
 方法たる、必ずしも戦争にのみ限るとせず、戦争以外更に他に之れ有る
 はもと疑なき所たりと雖も、但だ軍隊の腐敗を矯正せんとするに至りて
 は、戦争を以てするの外亦た他に凍るべきの方法之れ有る無し。我が戦
 後に演張せる軍隊は久しく平和の柑璃中にありて醗酵されたるもの、為
 めに言ふぺからざる腐敗を醸生し、而して腐敗の度は歳を経るに随ふて
 益ミ甚だしきを致し、更に延いて政令全般の腐敗をも討助するに至らん
 とするものゝ如し。故に若し政令全般の腐敗を矯正せんとする、先づ
 此の腐敗の源泉を清浮ならしめざるぺからず、而して此の腐敗の源泉を
                                              
 清浄ならしめんとする、這同の事即ち最好の横合たるにあらずや。犬れ
                                
 戦争の無代償ならざるは何人も善く之を知る、我が帝国今日の経済及び
                                
 財政の窮乏せる、亦た何人も善く之を知る、而して朝野一部の人士は此
                                
 の窮乏をロ実として露西亜との戦争を避けんとするに似たり。然るも帝
                                
 囲今日の経済及び財政の窮乏せる、元と牡曾の腐敗より来る、乃ち社合
                                
 の腐敗にして矯正されんか、窮乏亦た立ろに救治せらるゝを得ん、之に
                                
 反し徒らに暫且の安を倫んで断乎たる虞招に出で能はざる、唯だ益王政
    .                           
 合の腐敗を甚だしからしめ、経済及び財政の窮乏を増さしむるを免かれ
                                
 ざるぺし。究衰露西亜は我が祀禽の腐敗を救治すぺき唯一の良剤たりと
 
 す。



 戦争は仁義の道よりして之を言へば確かに盛事たり、然れども不仁不義
 の時代に際しては、戦争は寧ろ善事たるに幾かし。健全なる社会に取り
 ては戦争の如く鍋筈あるは靡し、然れども腐敗せる杜合に向ふては戦争
 は寧ろ華南の基なりといふも妄ならざるなり。我が日本今日の時代は果
 して戦争を悪事とするの資格あるか、日本今日の政令は果して戦争を禍
 害とするの資格あるか、日本今日の政府は果して戦争を避くるのロ実と
 して何物を有するか、詮じて故に到る、即ち進歩の母を以て目すぺきは
 平和に非ずして寧ろ戦争にあるを知るぺし。事物の善悪利害は皆な比較
 的のものに属す、固より絶対的の善事あるなく、又た絶封的の悪事ある
                                       
 なし、構して有利の物といひ有害の物といふも亦た同じく然り。今日は
 撃少尉挙酢絆中和卵卵砕かi少尉で卸抑紳紆新郎押排酔卵酔恕が絆耶
        
 して之を避けんとする者ぞ、特に大の戦争の禍害を口にして暫且の筍安
       
 を計るが若き、眞個に岡理の極、必ずや大なる患を遺さずんば止まざら
 ヤ
          (明治三十六年五月二十日「日本人」(第三次)第一八七戟)