足尾銅山鉱毒事件
吾人常に謂へらく政府の第一務は行政に在り、行政にして其務を充たさ
ん乎、其政府は善良の政府たをを失はず、政略の奈何の如きは抑ミ未な
りと、然るに何時の政府も動もすれば其の第一務を怠慢し、所謂政略の
未に日も亦足らざるの状あり、近敷年の政府は毎に此病弊に落つ、昨今
世上の一間題となれる足尾銅山錬毒事件に就きても亦其の然るを見
る。
抑ミ錬山開掘の如き営業に在りては、其影響の地方の山林河川及田園等
に及ぷもの鮮少ならざるは、営業の性質初より然る所、従て管轄の官局
に於ては之が許香に慎重を加ふ可きは固より論なく、「旦之を許したる
後ちは、常に其晋毒を他に及ぼさしめざるだけの防備を取らざる可なら
ず、然るに政府が足尾銅山に封する過去十年の監理は則ち如何、吾人を
して幾ど無政府に近きの感を抱かしむるものあり。天れ十年の事業とい
へば其歳月短かしと為さず、此間其山下に出でたる所謂渡瀬川治岸の人
民が瀕毒の大晋を鳴らして之を管轄の官局に訴へたる幾同なるを知らず、
又現に其地方選出の義貝より政府に質閏を出したるも一再にして己まず、
雨して政府の之に封して為し〜所の措置たる一も覿る可きものあらず、
其の男間に封する答締の如き畢責一時逃れの言前とより外は受取れず、
二囲の政府たるものは果しで斯くの如くなるを許す可き欺。
厳ふに錬山菜者と地方の住民とは各ミ利筈の異なるが馬に相得て相書き
ものは太だ稀なり、従て地方人民の口にするが如く錬業者濁り非理なる
ものにも非じ、共錬毒の影響の如きも人民のロにするが如く太甚しから
ざるものも或はこれあらん、又地方人民と錐も悉く醇良の民のみならず、
或は間ミ姦講の徒の之を口にして非義の財を食らんと欲する者これ無き
を必せず、又地方選出の代議士と錐も、或は為にする所ありて唱造賓に
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過ぐるの嫌なきをも保す可からず、然れども形なきに影を見ず、火なき
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に爛を見ず、十年の久しき彼が如く嘆然として唱へ、秋然として訴ふる
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もの、登賓の存するものこれ無くして然るを得んや。
今ま此地方人民及其代表者が唱造する十分の一にても其費ありとせば則
ち如何、掛」弊卦弊が抑村む酔徴レγ水酔針朴軒レ、静卦む酔砕レで水
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族を殺蓋し、井して相未の態育を茶毒すと聞かば、山林錬山の監督上及
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農産水産の保護上農商務省は十分之が梢査を加へざる可からず、第二其
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事業が沿岸の塊防を壊ち、生民の健康を書し、地方の安寧を奪ふと聞か
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ば、治水上衛生上及保安上内務省は特別に之れが硯察を馬さゞる可から
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ず、第三其の事業の為に地方の田園漸次其膏映を落し、一反の地費式囲
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に償するに至りしと聞かば、収税上大蒋省は之を等閑に附するを得ず、
而して三省貌然之を軽成し、甚だ意に介せざるの妖あり、一囲の政府た
るものは然く不用意なる可きもの欺。
咋者之を道途に聞く、渡瀬治岸敷十里の人民は二千飴人窮苦を中央政府
に訴へ、保護の志に穎らんと欲し、老を扶け幼を携へ首里此東京に出で
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たりと、願ふに彼れ塞々の民、其土を土とし、其郷を郷とし、税を貢し
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租を納る1の飴、一杯の濁醍に秋茸を硯するの外、叉飴念を留めざる者
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なり、斯くの如き良民二千飴人、嚢底飴す無きの零財を揮ひ、糧を裏み
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鞋を穿ち、百里の路を遠しとせず、衆りて中央政府の前に旬伏する所以
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のもの、宜窮苦の己む可からざるものこれあるに由らずばあらず、其情
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も亦眞に悲む可からずや、両して明治の昭代斯くの如きの現象を皇京の
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閑下に見はすに至らしめたるもの、果して誰の罪とか為す、之を政府の
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本分に省みなば、宝深く大に映焉たるものあらずや、但し是れ過去数者
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の政府が粗醸積戌せし所、必らずしも濁り現政府を尤めず、如今吾人の
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期待する所は、現政府の之に封する善後の虞置如何に在り、現政府にし
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て萬一猶ほ前政府のごとく冷々澹々此の事件を貌硯せば、吾人も亦二千
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人の先頭香群馬栃木埼玉茨城四騒教官萬人の先頭に立ち、鼓を鳴らして
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之を中央の政府に間ふ所あらん。
(明治三十年三月五日「日本」)