国民動員の徹底へ 厚生大臣 小 泉 親 彦 1812 01

 毎日の放送や新聞報道によりまして、敵米英があらゆる犠牲をも顧
みず、叩かれても叩かれても後から後からふんだんに部隊、兵器を送
り出し、ここ短時日の間に我を圧倒せんと頻りに反攻を繰り返し、戦
局は日一日と苛烈の度を加へつつあることを痛感する次第でありま
す。と同時に御稜威の下、皇軍将兵が緒戦以来獲得せる絶対有利な戦
略態勢を厳として確守し、日夜あらゆる困難を克服して士気愈々旺ん
に善謀勇戦、寡兵よく敵の大軍を撃砕しつつあることに思ひ及びまし
て、銃後国民たるもの愈々必勝の信念に燃え、戦局の実相を凝視しつ
つ第一線に呼応して、全力を振つてこの際、劃期的なる戦力増強に血
みどろの敢闘を続け、第一繰に些かたりとも事欠かしてはならぬとい
ふ固い覚悟を新たにせざる者はないのであります。
 申すまでもなく敵米英は、彼の誇称する豊富な資源と厖大な生産力
とを唯一の恃みとし、量を以て我を圧倒せんと企図してをるのであり
ます。我またこれに対抗して、三千年来培はれたる日本精神を発揮
し、国を挙げて軍需生産の急速増強を図り、断じて生産戦にも勝ち抜
かなければならないのであります。
 戦争は実に「時」であります。時機を失したる生産は意味を為しま
せん。
 今日ただ今の飛行機一台、船舶一隻は他日の百機、千機、百艘、千
にも勝るものであることを思ひますとき、我等は総てを捧げて、こ
こ短時日の中に急速に戦力を最大強化するといふ固い決意が、国民一
人々々の生活の上に力強く実践されなければならないのであります。
いまこそ一億国民は老若男女をとはず在来のしきたりや行きがかりか
ら離脱し、一切を挙げて聖戦完勝の一点に向つて国民皆働の姿勢をと
らなければならぬ秋であります。何人と雖も戦争の傍観者たることは
絶対に許されないのであります。
 かくして前線銃後一体となつて急速に戦力を増強してこそ初めて勝
利は生れて来るのであります。私共銃後国民は愈々必勝の信念を以て
不屈不屈、尽忠報国の誠を效し生産戦に突進しなければならぬのであ
ります。東條首相が、去る九月二十二日夜放送されました如く、今こ
そ一億国民一人残らず総員戦闘配置につくべき秋がまゐつたのであり
ます。乃ち国民動員の徹底が絶対不可欠の喫緊事となつたのでありま
す。勤労力に関する全国民の人口動態に基き、決戦態勢確保への人員
配備が、速かに整へられなければならなくなつたのであります。即
ち、軍動員同様、量と質との面よりする[国]民動員体制が確立されなけれ
ばならないのであります。それが国民動員の徹底であります。
 嘗ての自由主義時代には人手も極めて豊富であり所要努力を随時随
所に獲得することが出来たのでありますが、当時失業の防止救済とい

 

ふ消極的な見地よりして、市町村主体の職業紹介といふ仕事が生れた
のでありますが、満州事変を契機として、我が国産業の重点が軽工業
から重工業へ移行するに伴ひ、労力の獲得は漸次窮屈となり、中には
労力争奪といふやうな事態までも生じ、国家自ら労務統制に乗り出さ
ざるを得ない状態となりまして、国家は労務動員計画を策定し、これ
に基き労務の需給を統制する一方、国家総動員法に基くいろいろの措
置が相次いで講ぜられまして、嘗ての自由経済の時のやうに職業選択
の自由といふことは漸次影を淡くし、逐次国民動員体制の確立へと進
展してまゐつたのであります。市町村の職業紹介の如きも国営の国民
職業指導所となり勤労配置の第一線的役割を荷負ふこととなつたので
あります。
 かくして多数の青壮年男子は、栄誉ある徴用に応じて勇躍生産第一
線に就いたのであります。又自ら進んで父祖伝来の家業から軍事生産
へと転業されました。更に男女何百万の勤労報国隊は軍需生産へ、石
炭金属増産へ、食糧増産へと挺身されたのであります。
 私はただ今、これ等の方々が今日まで皇軍の後盾となり、軍需生産
に食糧増産に挺身御奉公されました功績を想起し、衷心より深厚なる
敬意と謝意とを表しますと共に、今後愈々第一線に呼応して、戦力増
強に一路邁往せられんことを御期待申上ぐるものであります。
 戦局は愈々深刻となり、総員戦闘配置に就くべき秋が来たのであり
ます。国民動員はこの際断乎として徹底されなければなりません。国
民動員の量と質との両面が活発に平行して推進さるべきであります。
量の根本は人口増強といふことになるのでありますが、今日の場合一
般的なことよりも先づ以て最も有力な動員対象となる青壮年者の健民
修練を普及強化して勤労カへの落伍者たらしめないこと、或は又徴
用範囲を拡大することや、従来自由な気持で選択就職してゐた業種か
ら、直接戦力増強への職業転換、或は無業者の解消等いはゆる勤労
給源の開拓が徹底せられ、質の面からは勤労の適任配置、勤労能力の
増強等に関しいろいろ措置されなければならないのであります。乃ち
将来国民の中枢となり指導者たるべき青年学徒も今や徴集猶予を停止
敢然祖国の難に赴くことになりました。国運の進展の為には最も大切
た学業を一時廃して、直接戦争遂行に参加せしめらるる今日でありま
す。銃後に残つた十四−五歳以上の青壮年男子は、一人残らず皆揃つ
て重要産業へ、食糧増産へ、戦力増強へ真しぐらに飛込んで行かたけ
ればならないのであります0そしてそれがこの銃後馳勧の散開配置に
就く逸であります。
 かくlて総ての苛牡年艶子が職以に馳せた後を、引瞬き守る者は誰
でありませうか0それは申サまでもなく商年齢実子と日本女性の力と
であります0殊に女性の万力性別子と柑蛙んで銃後取壊へと大いに進
出して頂かなければなりよせん。
 アメリカの女、イギリスの女がいかに多数、軍需生産に従卒してゐ
るか、そして彼等勺多くが放拍にエつて兵器製造に徒事してゐきと
は眈に御承知のことと思ひ七与9かくして敵国の女たちは警盤や革
新触や、砲弾や、小銃挿や、それから電気部分品等の製造に、同革何
十萬と一緒になつて、必死のカをしぼつて働いてゐるので島ります。
造船や工作機械の製造に樅つてゐるものも、何萬とゐるのでありま
 す。
 これ等の飛行挺や緋丸ほやが一1前線に撃トあなた方の御主人、兄
さん−弟さん、御子息の頭上に飛来し−更にあわ上くば我が本土を虎
鵡眈キ担つてゐるのであ豊すご」のことは明かに役等敵米英の女性
(2)
があなた方日本女性に敬を挑んでゐるのでなくて、なんモあゎませう
か。日本女性たる者、指をくはえてこれを見てることは断じてないと
樽信するのであります。
 敵の女に為れるヰめがなんで日本女性に出来ないことがあるでせう
か。現に軍幣生壷の各万両に、女子の進出は日ぎましきものがあるの
であわます。
 ぁなた方が噂衣を放つて来られた手で飛行機の翼む縫ふのであbま
ナ。町角に立つて千人針を拙つたあの意琴あの日本女性の庖心で兵
静を逸るのです0弟子に代つて智穎帳彗さばき、型ナの就業禁止敬
毯に赴いていたゞき庇いのであります0
そして臆久喜千年の侍統を誇る日本女性の比類なき底力をそこに蒙
拝するのであむます。今次女子動員の促進は凡て勤労し得る女子を勤
魚としまして、今後「切の女子社休勤労つを解消することを執待して
ゐるりでありますが、日本女性としての特性、情操の向上−風紀保健
等に射しては、政府といたしましても、渦噂監督に蔦全を期し高温撼
なきやう措置いたす所存であわますから、女性の皆様は安んじて勤労
動員に挺身参加せられることを衆心希撃いたします9
 特に新規拳校卒業の方々は拇校の校長先生を中心として女子挺身簸
を轄成せられ、同窓禽等からの通常た指堵者の下に、鞠性的に一年と
かこ年とか長期出勤せらるるやりにいたしたのであります0かくして
芳子も女子も悪くが馳局に印する賊陶配備につき、恰も青年拳徒が革
禁中逸にして勇躍御召に戯じて兵役に就くと同棲に、団塊賓の徹底
へと拙かっではありませんか。
                     ハ十月七日放迭)