満洲建国記念日に当りて 内閣総理大臣 東條英機


 本日ここに満洲国建国十一周年の佳き日を迎へ、聊かお喜びの言葉
を述ぶる機会を得ましたることは、私の洵に欣幸とするところであり
す。
 満洲国皇帝陛下には愈々御康寧にわたらせられ、我が皇室と益々御
親睦を加へさせらるると拝しますることは、洵に慶祝に堪へないとこ
ろであります。
 回顧すれば百年に近き米英の東亜侵略に就し、敢然として反撃の第
一矢を放つたのは、満洲事変を契機とせる満州建国の事実であつたの
であります。爾来満洲国は米英側の執拗極まる妨害にも拘らず官民一
致協力、刻々変転する世界情勢に対処して、克く財政の整備、軍備の
充実、産業の振興等、あらゆる方面に力をいたして、国力の飛躍的強
化を図つたのであります。かくして今や満洲国は、大東亜に於ける近
代国防国家として、厳としてその実力を示すにいたり特に昨年は輝か
しき建国十周年を迎へ、盛大なる祝典を催されたのであります。かく
の如くにして、年と共に挙げられたる国力の充実は着々として列強と
の正式国交を開く端緒となりまして既に承認国は十有余ケ国に達する
にいたつたのでありますっ。ここに満洲国が堅固なる枢軸の一環とし
て国愈々興りつつある現状を見ますることは、満洲国の為め洵に慶賀
に堪へざるところでありますると共に、建前以来終始一貫唇磨輔車の
関係にある帝国のこの上なき喜びといたすところであります。
 満洲事変は支那事変に発展し、支那事変は更に大東亜戦争にまで進
展いたしたのであります。開戦後幾許もなくして米英の頼む東亜の拠
点は悉く皇軍の占拠するところとなり、東亜に於けるその勢力は既に
一掃せられたのであります。今や帝国はこの必勝不敗の基礎に立ち、
愈々雄渾なる作戦な続け、大東亜戦争完勝、大東亜共栄圏建設を目指
して一路邁進いたしてゐるのであります。
 素よりこの大事業の達成には大東亜諸民族の衷心よりの理解と
協力とを必要とすることは申すまでもないところであります。この秋
に当り満洲国は建国以来日満一徳一心の義により終始一貫帝国と提携
協力し支那事変、大東亜戦争を通じ国の総力を挙げて北辺鎮護の任を
分つと共に、我が戦力増強に大いなる貢献を為し、大東亜の兵站基地
としての威力を遺憾なく発揮いたしてゐるのであります。満洲国の寄
せてをらるるこの絶大なる協力に対しましては、帝国は、朝野を挙げ
て感激いたしてゐる次第であります。
 本日満洲国建国十一周年の目出度たき日に当り、ここに重ねて満洲国
の偉大なる発展に祝意を表し、帝国に対する御協力に深甚なる謝意を
表すると共に、愈々今後の隆昌を祈つて已まない次第であります。

        (昭和十八年三月一日放送)