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年頭の辞  内閣総理大臣兼陸軍大臣 東條英機

 昭和十八年の元且を迎ふるに当り、謹みて聖寿の万歳を寿ぎ、彌栄
えます竹の園生の御繁栄を祝賀し奉る。
 畏くも 天皇陛下に於かせられては曠古の大戦争に際し格別御多端
なる政務軍務に御精励あそばされ、曩には忝なくも戦争遂行の途上に
於て神宮を御親拝あそばされ 皇祖大御神の大御前に於て御親ら御告
文を奏せられ御拝あらせ給うたのである。この御事たるや、有史以来
未だ曾てこれあらざる御事と拝承いたし、聖慮の程を拝察し奉り寔に
恐懼感激の極みである。我等臣民は今次戦争の持つ未だ曾てみられざ
る重大性に想ひをいたし、益々報效の誠を竭し、宸襟を安んじ奉らん
ことを深く期する次第である。
 顧みれば、大東亜戦争は既に一周年を迎ふるにいたつたのであるが
その間帝国は御稜威の下、皇軍将兵の善謀勇戦と、銑後国民の総力
発揮とによつて、世界歴史に比類なき大戦果を挙げ、米英屈服の最後
の日を目指して、堂々の歩武を進めつつあるのである。
 私はここに、諸君と共に、第一線に於て、日夜を分たず、決死の激
闘を続けてをらるる皇軍将兵に対し、満腔の謝意を表明すると共に、
護国の礎となられたる英霊に対し、謹みて敬弔の誠を捧げ、同時に傷
病将兵の再起奉公の日の一日も速かならんことを願つて已まない次第
である。
 今や帝国は戦争第一年に於て、早くも大東亜に於ける米英蘭の兵力
を一掃し、広大なる地域に亙る数多の戦略要点を攻略すると共に、正
に戦力化し得べき巨大なる重要資源を確保し、ここに、大東亜戦完
遂の基礎を確立し、万邦共栄の肇國以来の大理想実現の足場を固むる
を得るにいたつたのである。而して帝国は、今後飽く迄もこの必勝の
基礎を強化拡充しつつ、盟邦諸国との提携を愈々積極化し、相呼応し
て米英に対し益々攻勢を持続し、以て窮極の勝利を獲得せんことを期
してをるのである。
 この秋に当り、独伊等欧州に於ける盟邦諸国は帝国との結束愈々堅
く、あらゆる艱苦を克服して、依然として世界を驚倒せしむる大戦力
を随時随所に発揮してをるのである。また満洲国は国礎愈々固く北辺
の鎮護の任を分つと共に、我が戦力増強に多大の貢献をいたし、而し
て中華民国は日に日にその力を育成強化して着々として帝国に対する
後方補給の責任を果しつつあるのである。タイ国また既に日タイ攻守
同盟一局年を迎へ、帝国と歩調を合せて、共同目的達成に邁進してを
るのである。
 私はここに盟邦諸国の今日までに挙げられたる偉大なる成果に深甚
の敬意と祝意とを表し、帝国に対する絶大なる協力を感謝すると共に、
これ等諸国の今後の御健闘と御成功とを心より祈つて已まない次第で
ある。
 飜つて皇軍の占拠せる地域に於ける各住民は、皇軍の整々たる軍政
の下に、帝国の真意を諒解し、共同の目的達成の為に、着々として帝
国に積極的に協力し来つてゐることは、洵に力強き限りである。而し
てその地域に於ける豊富な物は、その活用を待つてゐるのである。
 以上の如き情勢に臨み、敗戦に次ぐに敗戦を以てせる敵米英も、最
近にいたり漸く反攻の挙に出でんとしてをるのである。蓋し世界に富
強を誇り、その生産力を恃む米英のこの趨勢は、軽視すべからざるも
のである。併しながら、前述の如く、我が必勝の基礎は出来上つてを
るのである。ここに於てか、我々銃後国民に残された問題ほ、如何に
して大東亜十億の人々の中核となつて、大東亜に於けるこの多数の人
と豊富なる物とを活用して、作戦の要求に即応し得る如く、戦力を増
強するかに在るのである。国内施設は挙げて勝たんが為のこの戦力増
強の一点に集中してをる所以はここにあるのである。
 而してこの重大なる戦局に対処し、同胞は真に、日本人たるの本領
を愈々発揮し、如何なる困難をも克服し、如何なる障碍をも排除し、
如何なる犠牲をも忍んで、戦力を増強せんとしてをるのである。これ
が現在一億国民の覚悟である。しかも政府は燃え上る国民のこの力を
彌が上にも完全に発揮せしむる如く施設に万全を期せんとしてをるの
である。かくして一億同胞真に火の玉となつて戦力を増強し得ば既に
約束せられたる大東亜戦争の勝利の栄冠は必ずや、我等の頭上に輝く
のである。
 本日ここに昭和十八年大東亜戦争第二年目の新春を迎ふるに際し、
この日もまた或は厳寒或は炎暑の第一線に戦塵を排して初日出を拝す
る皇軍将兵に想ひをいたし、一億同胞相携へて益々必勝の信念を新に
し戦力増強の完遂を誓ひ、第二年目の栄ある戦捷を衷心より祈念する
と共に、重ねて盟邦諸国の帝国に寄せられたる絶大なる協力に対し深
甚なる感謝の意を表し、今後さらに緊密なる提携の下に相倚り相扶け
飽くまでも共同の目的達成の為め戦ひ抜き勝ち抜かんことを深く期す
る次第である。
                      (一月一日)