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米英撃伏の決意 外務大臣 谷正之

 顧みますれば、昨年十二月八日、米国竝に英国に対する、宣戦の大
詔が渙発あらせられましてから、早くも一年に垂々として、本日ここ
に大東亜戦争一周年記念週間を迎ふるにいたり、かの忘れんとして
忘るる能はざる、感激の日を間近に控へまして、誠に感慨無量なるも
のがあります。
 大東亜戦争の意義と使命とは御詔勅に於て炳乎として明かなると
ころであります。また、その由つて来れる所以は、帝国政府の声明竝
に日米交渉の経過、対米覚書等によつて、既に全世界に徹底されてゐ
ると信ずるのでありますが、ここに開戦の一周年を迎ふるに際しまし
て当時を回想し、改めて大東亜戦争の重大なる意義を強く心魂に刻
み、米英撃攘の憤激を新にいたし、而して米英撃伏の決意をさらに強
固ならしむることが、この記念週間を迎ふる最大の要務なりと信ずる
のであります。
 大東亜戦争は、米英特に米国政府の、計画的なる対日挑発によつて
勃発したといふことは、今さら絮説を要しないところであります。即
ち米国政府は、開戦に先立つ、八ヶ月に亙る永き日米交渉に於きまし
て、帝國が太平洋の平和を維持せんが為に、隠忍に隠忍を重ね、誠意
と努力との限りを尽しましたるに対し、徒らに抽象的原則論を固執し
実現不可能なる要求を提示して、帝國の一方的譲歩を強要し、以て交
渉の遷延を策する一方、その与国を誘ひ、帝國の周辺に於て挑戦的武
備の増強を図つたのであります。
 米国政府が昨年十一月二十六日に、我が方に提示してまゐりました
ところの、帝國の三国同盟よりの実質的離脱、支那竝に仏印よりの全面
的撤兵、片務的なる門戸開放の承認、南京政府の否認、等の諸要求こ
そ、帝國をして東亜に於ける米国の支配権を確認せしめんとするもの
でありまして、これにより日清日露の両役以来幾十年に亙る東洋平和
保持に対する帝國の苦心経営は悉く水泡に帰し、満洲事変及び支那事
変に於ける我が努力と犠牲とは無視せられ、南方に生きんとする我が
民族的要望は蹂躙せられ、東亜の安定と帝國の存立とは正に危殆に瀕
するにいたつたのであります。帝國が断乎これを拒絶し、大詔の下、
破邪顕正の剣を揮ふにいたりましたることは已むを得ざることとは申
せ誠に当然至極のことであります。
 抑も、米国が民主主義擁護といふ空虚なる美名の下に欧州戦争に介
入し、汎米共同防衛に藉口して、中南米に於ける大部分の諸国を対枢
軸国戦争に強要し、さらに前に述べましたる如き、東亜の現実を無視
したる諸要求を提出したしましたることは、何れも、彼が世界制覇の
非望を逞うせんとする企図に出るものでありまして、これを歴史的に
見まするならば、その兆候は既に十九世紀末の米西戦争に於て現れて
をるのであります。即ち米国人と雖も、良心の呵責なくしては語り得
ざるこの無名の戦争によりまして、スペインよりフイリッピンを奪ひ
たるに引続き、支那侵略に割込を企図して門戸開放の提唱、さらに、
帝國に対する劣性海軍比率の強要、九国条約体制の設定による我が大
陸発展の妨害等、東亜諸民族の解放と東亜の安定とを国是とする帝國
と、東亜をもその世界政策の犠牲たらしめんとする米国との衝突は、
早く既に不可避なる運命におかれてゐたといふことができるのであり
まして、前に申述べましたる昨年十一月二十六日の諸要求は、米国の
我に対する決闘状なりと見得るのであります。
 然るに御聖断一度下りまするや、我が忠勇武烈の将兵は陸に海に空
に神出鬼没、未だ半歳ならずして、敵の東亜に於ける拠点は悉くこれを
覆滅し、東亜の全地域は概ねその本然の姿に還つたのであります。即
ち、支那大陸よりは固よりフイリッピン、東印度諸島、ビルマ等より
も敵影は消へ失せ、大東亜の全域は、北方の守り盤石の如きものありま
すると同時に、南の方、マライ、スマトラの関門は、ビルマの堅塁と共
に全く敵の侵入を遮断してゐる状況でありまして、その守りの裡にを
りまする諸国留[ママ]民族は、各々その特性に応じ、帝国と共に大東亜戦争
の完遂竝に大東亜共栄圏の建設に協力邁進することとなつたのであり
ます。先づ開戦当時即ち昨年十二月八日、我が軍の国内通過に応じ、
次で同月二十一日我が方と攻守同盟を結び、相共に大東亜戦争の完遂
に邁進することとなりましたタイ国と、帝國との関係は爾来親善使節
の往来、経済的協力関係の増進等によりまして、愈々親善緊密を加へ
ましたが、最近にいたりましては、大東亜に於ける文化建設に劃期的
な意義を有する日タイ文化協定の調印をみましたることは、御承知の
通りであります。
 また大東亜建設の核心を為す満洲国及び中華民国と帝国との関係は
愈々親善強化せられつつありまして、満洲国に於ては建国十周年を迎
へて、その発展は目覚ましきものがあり、また中華民国に於きましても
国民政府の清郷工作、経済建設等の事業は着々進捗し、満洲国と共に
大東亜戦争の遂行に偉大なる協力をいたしてをるのであります。而し
て前に述べました通り、大東亜全域に亙り、南北の守りは極めて堅固
でありまして、米英等の策動の余地なきにいたりました今日、日支の
関係は、正に一変したることを痛感する次第でありまして、中華民国
の復興と、繁栄とは、大東亜建設の完遂を大戦の目的とする、帝国の
希望と全く一致するにいたつた次第であります。
 一方欧州におきましては、独伊両国は、帝国の対米英宣戦に相呼応
し、対米参戦に決し、客年十二月十一日、三国間に米英に対する、共
同戦争完遂、単独不媾話、及び世界新秩序建設に対する協力を、厳粛
に誓約せる協定が調印されたのでありまして、ここに大東亜戦争は欧
州戦争と一体不可分の関係に立ち、世界的重大意義を有するにいたつ
たのであります。
 飜つて敵国陣営をみまするに、開戦以来の相次ぐ敗戦にも拘らず、
その戦意は尚強固でありまして、就中、米国はその豊富なる資源と生
産力とを恃み、二年後に於ては大攻勢に転ずべきことを豪語し、執拗
なる反撃を企図しつつあるのであつて、ソロモン諸島を中心とする、
南太平洋に於ける我が方に対する反攻作戦を初めとし、中、西、アジ
ヤ或はアフリカに対し侵略を行ひ、遂に最近にいたりましては北阿仏
領に対して、上陸作戦を敢行したのでありますが、国内に於きまして
も従来の対日過小評価を是正し、日本恐るべしとの宣伝を開始し、超
急速度なる軍備の充実を計り、強力なる国内戦時体制を確立し、以て
長期戦に於ける最後の勝利を確保せんと企図しつつある模様でありま
して、その勢、決して軽視すべからざるものがあるのであります。
 而も米国政府は国際ニユーデイルなるものを強調して、戦争に対す
る枢軸国の責任を糾弾すべしと主張してをるのでありまして、その覘
ふところは米国の世界制覇、米国的支配の強化に外なりませぬ、即ち
これによりまして米国は、東亜に於ては、日本を、欧州に於ては、独
伊を、再びヴエルサイユ体制下に、否、それよりは幾十倍するところ
の米国制覇の重圧下におき、以て日独伊をして再び起つ能はざらしめ
むことを期するものであります。これ大東亜戦争が米国の敗退なくし
ては終局なしと強調される所以でありまして、帝國といたしましては
彼が日本戦争を挑発し、全世界を大動乱に陥し、全人類の生活を不安
ならしめる罪悪を断乎として糾弾し、その打倒を期せなければなら
ないのであります。而して豊富なる資源と広大なる領土とを擁しなが
ら、自らその居る所に満足せず、世界いたるところに進出して、他国
他民族の生存を否定し、世界的独存独栄を図らむとする米国否、その
指導者の、飽くことなき非望は、天人倶に許さざるところでありま
して、如何に彼の豊富なる生産を以てしても必ずや行き詰りの日を生
ずべく、全面的破綻の日の来るべきを信じて疑はぬ次第であります。
而して帝國といたしましては何時如何なる場所たるを問はず、悉く彼
の挑戦を撃破するに足る物心両面の準備を怠らず、毅然として彼の敗
退し行くを眺むるのみであります。
 大東亜戦争は我が肇國の大訓に基き、大東亜を米英の桎梏より解放
し、各国各民族をして各々その所を得しめ互ひに共存共栄を計り、以
て世界の平和に寄与せんとするの大精神に出るものなること今更申す
迄もないのでありまして、独伊が欧州に於てその所を得むが為め、新
秩序を建設せんとするところと精神的に相通ずるものが存するのであ
ります。即ち日独伊三国は米英撃伏に共同の努力をいたしますと共に、
世界新秩序の建設に対してもまた協心戮力してをるのでありますが、
既に大東亜に於ても、欧州に於ても、今次戦争の特異なる任務といた
しまして、一面戦争、一面建設の過程が着々と進捗してをりますことは
心強い限りであります。米英的なる旧き秩序に対する大東亜解放の聖
戦は、かくの如く世界的聯繋に於て敢行せられてをるのでありまして
世界は今や重大なる歴史的転換期に逢着してをるのであります。即ち
今次の大戦は単なる武力による争闘でありませずして、実に世界に於
ける新旧二大世界観の衝突であることに想ひをいたしまする時、我々
は我々竝に我々の子孫の担当すべき重大なる世界史的使命を自覚せ
ざるを得ないのであります。而して、この自覚の下に挙国一致、大戦
の完勝に粉骨砕身の誠を誓はねばなりませぬ。

  (十二月五日放送)