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総力戦と少年保護    司法大臣 柳川平助

一、
本日は少年保護記念日に際しまして所懐の一端を申述べます。
二、
御承知のやうに我が国は今、大東亜新秩序の建設の為めに、国家
 の総力を挙げて戦つてゐるのであります。而して聖戦既に四年に垂
 んとし、宏大無辺なる大御稜威の下に、皇軍は到るところ赫々たる
 勝利を博してゐるのでありますが、併し、前途にはなほ幾多の障碍
 があることを予想しなければなりませぬ。この難局を突破して、国
 運を恢弘し、事変処理の大業を完遂せんが為めには。私ども国民の
 全部が今後一層結束を固くして、御奉公の道に邁進しなければなら
 ないのであります。
三、この御奉公の道に於きましては、国民の中に一人と雖もおくるる
 者があつてはなりませぬ。就中、青少年の自覚と精進とを切望せざ
 るを得ないのであります。青少年は国家の将来を担ふと、いはれる
 のでありますが、現下の時局は、青少年に対しまして、将来の日本
 を背負ふだけでなく、今日の総力戦下にある日本の担ひ手の一人と
 なることを要求してゐるのであります。産業の各部門が、諸君の営
 営たる努力を期待するばかりでなく、学生生徒たる青年に対しまし
 ても、単に明日の為め準備だけでなく今日より既に、総力戦の重要
 なる要素たるべきことを、要望してゐるのであります。青少年は、
 この点につき十分の自覚を以て、日々その本務に精励せねばならな
 いのであります。
四、かやうな立場からこの頃の青少年の生活状況を眺めますると、も
 ちろん大多数のものは、非常時日本の国民たることを十分自覚して、
 それぞれの職域に於いて、緊張した生活を為してゐるのでありまし
 て、私は之を頼母しく思つてゐるのでありますが、併し多くの中に
 は、往々にして、放逸惰弱に流れ、不良の行状を為し、遂には法律
 に触るるやうな者も、少くないのであります。殊に殷賑産業の方面
 に於きましては、青少年工の性行の不良化といふことが相当顕著な
 事実となつてをり、而もそれが次第に深刻の度を加へつつあるやに
 見受けられるのであります。国民の緊張と努力を最も切実に要求す
 るところのこの総力戦の下に於きまして、このやうな現象を見ます
 ることは、国家の為めに洵に憂慮に堪へないのであります。
五、これに就きまして私は、青少年の一層の自粛自戒を要望しまする
 とともに、一般国民諸君の深甚の御留意を煩はし度いのであります。
 青少年が不良の行状に陥り、遂には犯罪にさへも陥るといふことは、
 もちろん種々の原因に基づくものではありますが、孰れの場合に於
 いても畢竟それは指導訓練の宜しきを得なかつたことも、またその
 原因の一をなすものでありまして、このことは、青少年を指導監督
 すべき立場にある人々、例へば家庭、学校、工場、商店等に於いて
 十分考慮しなければならぬことであると考へます。青少年が、不良
 の行為を為し・或ひは罪を犯すといふことは、その無自覚は固より
 之を責めなければなりませんが、その指導監督の任に在る者も大い
 に省みるところがなければなりませぬ。而して是等の青少年をして、
 臣民本然の道に帰らしむるやう、努力すべきものであります。
六、洵に国家の将来は青少年の上に存するのであります。国家を愛す
 る者は、青少年を愛護しなければなりませぬ。健全なる青少年をし
 てその健全性を確保せしむることの必要は、申すまでもありませぬ。
 既に不良の性行に堕し、或ひは罪を犯したところの青少年に対しま
 しては、適切なる保護と錬成を加へて、之を国民たるの正道に引戻
 さなければなりません。かくして青少年の健全なる成育を確保する
 ことは、即ち国民の福祉を確保する所以であり、国力の充実と発展
 とを招来する所以であり、実に皇国を護持する所以であります。ま
 たかくして年少の同胞を、堕落から救済し、之をして臣民の本分を
 恪守せしむることは、同胞たる私共国民の義務でもあると考へるの
 であります。
七、政府に於きましても、かやうな事情に鑑みまして、極力少年保護
 制度の強化に努め、愈々本年度に於いては、この制度を全国に実施
 することと致したのであります。少年保護の制度は従来に於いても
 相当の実績を収め、多数の青少年を堕落から更生せしめて、或ひは
 大陸の第一線に立たせ。或ひは銃後の産業に参加させて、それぞれ
 職域奉公に邁進せしめてゐるのであります。併し、本制度が完全に
 その目的を達しまする為には、国家機関の努力のみを以ては足りま
 せぬ。どうしても国民全般の御協力を必要とするのであります。ど
 うか国民諸君に於かれては、現下の時局に於いて青少年の健全なる
 育成を確保することが如何に重要であるかといふことに、深く思を
 致されまして少年保護事業の目的達成の為め一層の御理解と御協力
 とを与へられ度いのであります。
                       (四月十七日AKより放送)