銃後の士気昂揚 情報局総裁 伊藤述史

 事変勃発満四周年日も、いよいよ明後日に迫まりましたので茲に事
変記念の行事の一として情報局と日本放送協会が共同して「銃後士気
昂揚の夕」を開催致し、今度の事変を銃をとらない戦士として御活躍
になられた方々やその家族をお招き致し、四周年を記念致したいと存
じます。
 事変四周年に当りまして、この期間を回顧致しますと感慨無量なも
のがあります。私達日本国民は先づ以て、靖国の神となられた数万の
英霊に対し、心からの感謝げる[ママ]次第であります。また、白衣の勇士の
方々に対し、恢復の一日も速かならんことを祈るるものであります。同
時にまた、大陸の山野に、南北の海上に、現在も戦ひを続けられつつ
ある皇軍百万の将兵に対しまして、武運長久を祈り、また遺家族の方
方に御辛棒[ママ]を御願ひする次第であります。
 期[ママ]かる犠牲を払ひつゝあります我国民は、支那事変の処理には万難
を排して邁進する決心であることは今更申す必要もありません。蒋政
権に於て之れを理解せず不相変抗日を継続しますれば、益々支那民衆
を塗炭の苦に呻吟さすばかりでなく同時に我方としましては蒋政権を
潰滅する外撫いのであります。他方南京政府は厳として存在致しまし
て東亜新秩序建設の為に協力致してをるのであります。先般汪主席の
来朝を見たのは其具体的な表現であります。我々としては此政府を援
助強化する覚悟でありまして、先日限度三億円の借款供与方を承諾し、
又我が斡旋によりまして独伊等十ケ国以上の承認を見たことも其証拠
であります。要するに大東亜新秩序の樹立は我国不動の方針でありま
して、之れか肇國の大精神によつてゐると云ふ意味で聖戦であると云
ふことになるのでありまして。我国民の牢固たる決意を皆様と共に天
下に示したいのであります。
 事変以来時日は短い様でありますが、其間世界の状勢は非常なる変
転を見ました。此四ケ年は昔しの数十年にも相当する、否其れ以上の
大時期を劃するのであります、欧州に於きまして戦が勃発し、我々が
歴史で学んだ様な幾多の国家の興亡を現に眼の当り見てゐるのであり
ます。戦争は独蘇間にも波及しまして我国の直接関係ある地域に迄及
ぶかも知れない状勢になつて来たのであります。欧州の諸国は勿論米
大陸の国々も此欧州戦乱につれて動揺する様な形勢になつて参りまし
て、世界を挙げて動乱の巷と化さんとしてゐるのが現実であります。
其間各国の態度を見ますと、今日の友は明日の敵となると云ふ様な世
相を示しまして、私共静かに考へますと、結局頼りになるのは自分の
力、御国の力ばかりだと云ふ結論に達するのであります。我々日本国
民は自分の力だけで自分の将来を考へ、動かなければならぬ様になつて来たのであります。
 外国との交通は遮断され、各国との貿易は杜絶し。各国は自己防衛
に一生懸命になつて居り而も何時我々も世界動乱の渦中に捲き込まれ
るかも知れない状況であつて、どの国も自国の国力よりしか頼りにな
らない時代に生活してゐると云ふことを国民が良く理解したなれば、
今は世間で良く言ひます一億一心等では不十分です。国民が一ツの火
の玉の様になつて国力の増強を計らなければならない時であることが
明白になるのであります。而も目標は我国を守る国防体制の完備と云
ふことが現下の緊急事であります。
 政府は此難局を良く認識してをります。其れに必要な国策は現に決
定されました。只現在の様な国際状勢では国民に其の内容は申し上げ
られないのであります。而し政府は毅然として其の実行に当つてをり
ますから国民は政府を信頼せられて協力して貰ひたいのであります。
国民に之れだけの犠牲忍耐を要請しますが、而し政府は国民の生活、
更生等につきましては十分に注意を致します。又長期建設であります
から、其間働く国民に対しましては健全娯楽を提供することも忘れて
はをりません。今夜の催しもその意味であります。
 事変第四周年に当りまして時局の重大性と政府の決意を述べまして
各位の奮起と政府に対する信頼を希望する次第であります。

(七月五日放送)