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融和記念日に当りて     内務大臣 平沼騏一郎

 いまより七十年前、すなはち明治元年三月十四日、 明治天皇に於
かせられましては、群臣百官を率ゐて紫宸殿に出御遊ばされ、厳粛な
る御儀式の下に、親しく天神地祇を祭り給ひ、王政復古の大眼目たる
五箇条の国是を御誓ひ遊ばされたのであります。歴史の上ではこの御
祭りを誓ひの祭と申し上げ、五箇条の御誓文を国是五章とも申し上げ
てをります。
 五箇条の御誓文は御承知のことでありますから、茲に之を捧戴する
ことは差控へまするが、何れの箇条を拝読致しましても、博大雄深、
言語に絶する叡慮が窺はれるのでありまして、御親政の大眼目がはり
きりと現はれてをります。この大眼目は実は肇國以来一貫せる我が国
の方針であり、神州伝統の大精神であると確信致します。
 この国是の発表と同時に賜りました勅語が御座います。すなはち、
 俄国未曾有ノ変革ヲ為ントシ 朕躬ヲ以テ衆ニ先ンシ天地神明ニ誓
 ヒ大ニ斯国是ヲ定メ万民保全ノ道ヲ立ントス衆亦旨趣ニ協心努力
 セヨ
と仰出され、 明治天皇が一大英断を以て王政復古の聖業を御遂行遊
ばされ、斯国是を定められましたのも、万民保全の道を御立て遊ばさ
るる為めであることが、明瞭に窺はれます。而してその実行に当りま
しては、 陛下御自身範を示し給ふとともに、万民の補翼を望ませ給
ふ御趣意であることもまた明らかであります。さらにこの時、国民に
賜はりました宸翰の中には、

 天下億兆一人モ其処ヲ得サル時ハ皆 朕力罪ナレハ

と仰せられ、また

 親ラ四方ヲ経営シ汝億兆ヲ安撫シ遂ニハ万里ノ波濤ヲ拓開シ国威ヲ
 四方ニ宜布シ天下ヲ富岳ノ安キニ置ン事ヲ欲ス

と仰せられてあります。その国民を慈しみ給ふ広大無辺の大御心と、
国家を統治し国威を四方に宣布し給はんとする宏遠なる叡慮とに対し
ましては、何人も感激せぬものはありません。特に『天下億兆一人モ
其処ヲ得サル時ハ皆 朕カ罪ナリ』といふ御言葉を承はるに及びまし
ては、洵に恐懼の至りで、我々国民は何を以てこの大御心に報い奉る
べきや、唯々感涙に咽ぶばかりであります。
 謹んで按じまするに、皇室と国民との関係、即ち君臣の分は開闢以
来儼然として定まつてをります。之と同時に皇室の国民を視給ふこと
は、恰も父母の赤子に於けるが如く、歴代の 天皇は屡々勅語又は詔
書の上にこの御趣旨を御現はしになつて居ります。近く 大正天皇は
即位の大典に当つて「義ハ則チ君臣ニシテ情ハ猶父子ノコトク」と仰
せられました。その国民を慈しみ給ふことは、神代の昔より今に至る
まで、少しも変るところはありませぬ。昨年九月、日独伊三国同盟の
締結されました時、 今上陛下の下されました詔書の中にも、

 万邦ヲシテ各々其所ヲ得シメ兆民ヲシテ悉ク其ノ堵ニ安ンセシム
 ルハ云々

と仰せられてあります。一視同仁の大御心を広く世界万邦の上に及ぼ
されまして、人類全体の福祉を増進し給はんとする叡慮よりして常に
世界の情勢に御軫念遊ばされてゐることが最も明白に窺はれるのであ
ります。是れ亦御誓文の趣意と同様で、結局、神州伝統の大精神を御
示しになつたものと拝察致すのであります。
 かくの如く大御心を世界人類の上にまで注がせられまする結果、国
礎は年を逐うて愈々固く、皇威は四海の隅々まで輝き渡り今や我が国
は大東亜の共栄圏を確立し、世界新秩序建設に協力致してゐるので
あります。然るに一歩退いて国内の情勢を観察致しますれば、総ての
方面が果して悉く深仁なる叡慮に副ひ奉ることに於て遺憾なきや否
や、聊か疑ひ無きを得ないのであります。
御誓文の第四条には

 旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ

と仰せられてをります。この陋習とは武家政治となつて以来、国民の
多くが世界の形勢に疎く、神州の安危を知らず、私見を立て公義を棄
て、天下一新の実効を顧みざりしことを指し給うたもので、極めて広
い意味で御述べになつたものであります。つらつら考へますればこの
陋習は社会の各方面に亙つて存在してをつたのでありますが、就中、
同胞間に於ける差別事象の如きはその最も顕著なものであります。封
建制度の犠牲となつて、久しき間差別されて居つたものが、明治の初
大政官布告により、すつかり解放せられ、一君万民の有難い大御代と
なつてゐるに拘はらず、今日なほその差別が社会生活の上に付き纏ひ
挙国一致、一億一心の実を挙ぐる上に、大なる妨げをしてゐることは
洵に遺憾の至りであります

 我が国は今や開闢以来伝統の大精神を発揮し、 今上陛下の大御心
を奉戴して大東亜の共栄圏を確立し、世界の新秩序建設に協力しつつ
あります。この非常の時局に当つて、御誓文の第二条で御示しになつ
た通り、盛に経綸を行ひ、之を完遂する為めには、老幼男女を問はず、
軍官民いづれたるを論ぜず、各々その職域に於いて奉公の誠を致さ
ねばならね秋であります。その第一着手と致しましては、国内の新体
制を確立しなければなりませぬ。新体制とは旧来の陋習を破り天地の
公道に基づくことが、即ちそれで、別の言葉で申せば、國體の本義を
明らかにし、万民悉く本来の姿に返ることであります。国民の総てが
大御心を奉戴し、日常生活を通して各々御奉公の出来るやうに、国民
組織を一新するとともに一層之を強化することであります。
 大東亜の中には御承知の通り色々異つた民族があります。これがお
互に理解し合ひ、手を握つて行かなければ、共栄圏の確立は不可能で
あります。然るにその中枢として指導的地位に在る我が国民自身が、
生きた一体となり得ず、従前のやうな自由主義、個人主義に囚はれて、
銘々勝手な行動を取り、相剋摩擦を続けてゐたのでは、内に於いて挙
国一致、一億一心の実は挙りませぬ。それでは外に向つて共同一致を
求むることはできません。この重大なる時局に当つて我が国民は深く
これ等の点に反省するところがなければなりませぬ。今日の時局こそ
真に一億の同胞が一致団結して、如何なる困難をも克服し、臣道実践
の実を挙げて、天業の完遂を補翼し、開闢以来の鴻恩に報い奉るべき
秋であると確信致しまして、一層決意を深くする次第であります。
                     (三月十四日放送)