常会の話 − 部落会・町内会・隣組等の −
部落常会とか町内常会、さては
隣組の常会といふふうに、常会は
最近盛んにひらかれるやうになつ
て参りました。皆様おなじみのこ
とで。常会についてはよく御承知
のことと存じますが、それでもま
だ幾分はつきりしないところもあ
るやうですから、先づ常会とはど
ういふ意味のものか、申上げるこ
とに致します。
常会とは
常会とは早く申しますと、寄合
また例会のことですから、部落会
や隣組のやうに何時もある会であ
りません。つまり部落会や町内
会、隣組が開く集りであり、部落
会や町内会または隣組が立派な成
績をあげるためには、どうしても
この常会といふ寄合の力によらな
ければなりません。
隣り近所の人が集つて扶け合ふ
といふのは、我が国の昔からの美
しい風習でありまして、隣り組の
やうなものは、遠い昔の大化の改
新の頃からあり、また徳川時代の
五人組の制度は有名ですが、この
隣り近所の人が集つて扶け合ふと
いふ精神は、今日の隣組や部落
会、町内会の根本となつてゐるの
です。
今日の隣組や部落会、町内会は
銃後の後援にまた防空にまた大切
な農産物の収穫を増すことや、砂
糖やマッチ、木炭等の切符の配給
に当つて、大変活動してをります
から、かうした隣組や町内会、部
落会などの働きがなかつたならば
国の政策はうまく実行してゆくこ
とは難しいことであります。
これと同時にまた部落会や町内
会、隣組は国の政治の一番下の土
台ともなるものでありまして、私
達が先づ隣組や部落会等の一人と
してお国に御奉公するといふとこ
ろから、新体制の運動も一つの大
きな国民としての、まとまつた力
となつて盛り上つてくるものであ
ります。
国民の考へを政府に通じ、政府
の考へを国民に通ずることも、こ
の部落会や町内会を通じて、はじ
めてうまく行くことになります。
このやうに隣組や部落会、町内
会は非常に大きな役目を持つてを
りますが、しかしその作り方や活
動の方法にはうまくいってゐない
ところもあり、なほ工夫の余地が
残されてゐるやうです。
政府でも昨年の九月に部落会や
町内会はどういふふうに整へたら
良いかといふ方針を明らかに致し
ましたが、ともかく隣組やまた部
落会、町内会は、かやうに大切な
役目を果すのであり、それがうま
く行くかどうかは一にこの常会の
働きによるものであります。
常会の開き方
それでは次に常会はどうして開
いたら良いか念の為めに申上げて
見ませう。部落常会や町内会に
は、世帯主は勿論、主婦の方も出
来るだけ出るのを建前とします。
部落会や町内会は、毎月一回以上
必ず常会を開かなければなりませ
ん。隣組も部落町内会と同様の
趣旨の下に、必要に応じて出来る
だけ度々常会を開くことになつて
をります。殊に部落や町内が大き
くて、隣組の代表者だけが部落常
会や町内常会を開いてゐるところ
では、隣組の人たちが集つて月一
回以上は必ず常会をひらかなけれ
ばなりません。
常会を導いてゆく人は申すまで
もなく、部落会の会長とか、町内
会の会長とか、隣組の組長さんで
すが、この常会を開く場所は、常
会を開くに応しい場所だつたら何
処でもよいわけです。部落会や町
内会に学校とか、公会堂、社務所
お寺、教会などをお使になるやう
にすればよろしいと存じます。隣
組では座布団持参で廻り持にする
のが良いと思ひます。
常会には何といつても一軒々々
もれなく出席することが一番大切
です。理想的な常会をつくるとし
ても、欠席者があつては常会の目
的を達することは出来ません。そ
こで会員の人達は催促されて出る
のではなく、自分達の常会と考へ
て足並を揃へて皆出席しなければ
なりません。
座席の作り方などは小さな問題
のやうですが、これは案外注意が
いることでもりまして、出来れば
四角張つた会議のやうたやり方は
やめて、一家が集つて話し合ふや
うな調子で致しませう。そして出
席の順に従つて早く来た人から、
順に席につめるやう、習慣をつけ
ませう。
常会をはじめる時間は.きちん
とまもることが必要です。常会を
ひらく時間としては、まづ二時間
以内とするのが適当のやうです
が、とにかく常会をはじめるにも
了へるにもはつきり時間を守りま
せう。
「常会を始めてから、村の会合の
時間が正しくなつて来た」といふ
ことを近頃方々で聞くやうになり
ましたが、新体制といつても何も
大げさなことをするのではなく、
実はかうした手近かなところから
始まるのでほないでせうか。
常会を活用して
また常会では一人や二人の主だ
つた人だけがお話をして、多くの
人たちは黙つてゐるといふやうな
様子をよく見うけるものですが、
常会はいはば家族の寄合のやうな
ものですから、出来るだけ沢山の
人がお話をされるやうにしたいも
ので「女だから」などと遠慮する
ことは禁物です。
しかしお話は出来るだけ要領を
かいつまんで話すこと、またまる
で演説でもするやうに固くるしく
ないやうに、潤ひのあるなごやか
な会に致しませう。
またこの常会では皆が集つた機
会を利用して貯金を持ちよつたり
兵隊さんへの慰問文や慰問袋を集
めることなどが行はれてゐるやう
ですが、最近では砂糖やマツチ等
の配給券もこの常会を利用して配
られてゐるやうです、このやうに
常会日をうまく利用するといふこ
とも必要なことと存じますが、し
かしこの常会では出来るだけ費用
が要らないやうにしていただきた
いものです。
さてこの常会はさきほども申し
ましたやうに、非常に大切な働き
をするものでありまして、常会は
部落会や町内会、さては隣組の魂
のやうなものであり、新体制はこ
の常会を立派に育て上げてゆくこ
とから始まるとさへいへるのであ
ります。
もしまだ常会をひらいてゐない
ところがありましたならば、どう
か一日も早くこの常会をひらいて
下さい。またもしまだ常会に出席
されない方がありまLたなら、次
の常会には必ず出席して下さい。
そしてこの常会を通じて強く明か
るい日本を作りあげようではあり
ませんか。 (二月十七日放送)