大政翼賛会の青少年組織方針について

 文部省の大日本青少年団は二月十六日華々しく発会式を挙げ
たが、之に呼応して大政翼賛会ではかねて文部省、陸軍省、海
軍省の各関係方面と協議して、凡そ七百五十万人に達する全国
青年及び壮年層を大政翼賛体制に組織することについて案をね
つてゐたところ、今回その根本方針を決定発表した。
 青少年組織といつてもそれは国民組織の一翼でしかない事は
周知の通りである。併しながら二十才前後から三十五才迄を包
容する青、壮年層をその属する地域或は職域の如何を問はず、
之を一元的の指導系統に整備して訓練し、統制して行くといふ
ことは、国家が之等国民の中堅層に負はした任務の重大さを考
へるとき。この青少年組織こそ国民組織の中核体であり、国策
推進の前衛部隊であると言へるのである。大政翼賛会の「全国
青少年組織」の根本方針も実にここにある、即ち

  青少年組織は国民組織の独自なる一翼として、一元的に之
 を統合する目標の下に其の属する地域、職域の如何を同はず、
 大政翼賛会組織局を中心とする、一元的指導系統に整備し行
 かんとす。

といふ事を組織方針の第一に謳つてゐる。第二に青少年の年齢
の段階によつて青年初期、青年中期、青年後期と三段に分けて
ゐる。
 青年初期とは廿才以下の者を指すので。之は前述の如く先頃
発足した大日本青少年団(文部省が主としてその指導統制に当
る)の構成分子と成るのである。そしてこの青年初期には専ら
修養、訓育に重点が置かれて政治性は一切持たない事になつて
ゐる。大日本青少年団が「純修養団の本質を堅持する」といふ
のはこの点に触れてゐるのてある。青年中期といふのは廿一才
から廿五才迄で、この中期は前期に引続く訓練と、之に加へて
例へば増産とか防空とかいふやうな政治的中味を織りまぜた活
動を行ふ組織である。そして青年後期は年齢的に漸く完熟して
来た廿六才以上卅五才前後迄を包容し、専ら国策遂行に推進す
る政治的組織をもつことになるのである。
 然らば、以上述べた如き青少年組織方針によつて既存の各種
団体との閑係は如何といふに、之については、いま強ひて之等の
団体の統合強化を図るといふ方針を採つてはゐないのである。
之について大政翼賛会の青年部では次のやうに言つてゐる。
「各種の団体はそのままにしておいて、その各種青年団体の指
導者系統中に、漸次大政翼賛会の推進員を発見獲得し、之を錬
成し又之を各団体中に配置して学生と一般青年との有機的なる
連絡提携を計ると共に、一方農業とか工業とかに従事する各職
域内の青少年に対しては各々の職場に大政翼賛会の組織が出来
上るのに呼応して、その中の指導的分子を推進員として獲得し、
之等の人々中心として各職域に於ける一元的青少年組織を確
立する」
 このやうに育つてゐるのである。そして行く行くは青少年組
織は「大政翼賛会組織局を中心とする一元的指導系統に整備し
て行くこと及び青少年の指導者は青年たることを原則とすると
いふ『大政翼賛会本来の青少年組織理念』を中心とする国民青
少年組織の誕生が必要となる様に指導し工作する」
とも言つてゐるのである。この青少の指導者は青年たる事を原
則とするといふのは、青年運動及びその組織の指導者は青年運
動の中より盛り上るものたるを要すといふ意味で、必ずしも年
齢を限定したものではないのである。又、大政翼賛会組織局青
年部が活動の範囲とするところは青年指導者組織であり、従つ
て青年中期及び後期にその組織活動の重点がある訳で、之は前
記文部省の大日本青少年団とこの翼賛会の青少年組織活動との
関係を示唆するものとして注目に値する。

(昭和十六年一月廿八日放送)