日満支経済ブロックとは

 聖戦第三年の新春を迎へ新東亜の建設も、愈々本格
的な段階に入つた。新東亜建設の土台とも言ふべきも
のは、日満支経済ブロックであるが、この日満支経済
ブロックとはどう言ふものか、次に之に就て解説を試みよう。

 漢口、広東の攻略を一段階として、我が国は満洲国や更生し
た支那と手を携へて、新東亜の建設に向つて、輝かしい第一歩
を踏み出したのである。
  新東亜建設のためにはどうしたならば良いかと言へは、それには
 先づ日本、満洲国、支那の三国が相扶けて、その経済を一に合せ、
 三国を一体とする自給自足の目的を達することが必要なのである。
 かやうにして三国全体の国防を安全なものとし、共産主義の侵入を
 防がなけれはならない。
  このやうに日満支経済ブロックを作ると言ふことが、最も大切な
 事なのであるが、此処で注意しなけれはならないのは、日満支経済
 ブロックの、ブロックと言ふ考へが、従来の経済ブロックと言ふ考
 へとは、全く違ふことである。

 つまり之迄の経済ブロックと言ふのは、昭和四年に始まつた
世界的な経済恐慌を切抜けるために、列強が持つた一種の経済
政策で、自国本位の立場から、その属国とか、植民地の負担を
増しても、自分の国の不景気を切抜けたり、栄えるのを図つた
りしようとしたものである。
 然し日満支経済ブロックのブロックとは、日本だけが栄えよ
うと言ふのではなく、支那を興隆させ、之と力を合せて、真に
安定した東亜を築き上げようと言ふのである。
 この日満支経済ブロックを実現するためには、何が最も必要
かと言へば、第一に必要なことは、支那の民衆を救ふことであ
る。幸ひ支那には非常に豊富な資源があり、而も産業は余り発
達してゐないから、この支那の持つてゐる資源と労働力に、我
が国の資本と技術とを結びつけて、支那の資源を開発すること
が、支那民衆を救ふ道ともなるのである。而も之等の資源には、
日満支三国を一体とする、国防上洵に重要なものが多いのであ
る。

  では支那にはどんな資源があるか。支那の資源としては、鉄、マ
 ンガン、タングステン等の鉱石その他鉛、亜鉛、錫等の非鉄金属や
 石炭、塩、棉花、羊毛、麻、皮革、毛皮等が挙げられる。又満州国
 には鉄、石炭、人造石油、アルミューム、マグネシウム、鉛、亜鉛
 硫酸アンモニア、パルプ、棉花、羊毛、麻、大豆、高梁がある。
  我が国は之等の重要な資源の供給を受ける訳であるが、之に対し
 て一方満州国や支那に対して、供給しなければならないものが少く
 ない。現在でも棉製品、毛繊物、絹織物、人絹糸布、鉄器類、機械
 器具類、車両船舶、自転車、海産物、小麦粉、砂糖、化学製品、薬
 品等の満洲、支那両国の住民の生活に、欠くことの出来ない品物を
 供給してゐる。

 かうして日満支三国の、緊密な提携を中心として、自給自足
の経済を実現することが出来た暁には、どんな長期の戦ひに対
しても、ビクともしない構へが出来るのである。
 それではこの目的に向つてどんな歩みを続けてゐるのであ
らうか。経済ブロックを実現する中心は、お金と金融の問題で
鉱山を掘るにも、鉄道を敷くにも、一番必要なのは通貨である。
そこで満州国や北支那方面では、日本の円を中心にして、新し
い健全な貨幣制度を布く必要があり、円ブロックが結成された
のである。
 先づ第一にこの円ブロックに参加したのは蒙疆地方で、一昨
年の十二月一日に蒙疆銀行が創立され、その業績も非常に順調
振りを示してゐる。
 次に北支那に於ては、中国聯合準備銀行が、北支那に於ける
通貨、金融の統一と言ふ使命を担つて、昨年の三月から開業し、
その後着々と效果を挙げてゐることは周知の通りである。
 更に満州国に於ては、満州国の金融機関は、今ではもう殆ん
ど整備され、満洲中央銀行を中心に、満洲興業銀行、普通銀行、
金融合作会社、質屋等が、夫々の分野に従つて活動を続けてゐ
る。

  次に資源の開発は、どういふ風に進められてゐるかと言へば、前
 に解説した様に、北支那に於ては北支那開発株式会社が、中支那に
 於ては中支那振興株式会社が設けられ、この二つの会社の下に、夫
 夫多くの子会社があつて、既に活動を始めてゐるのである。


 以上で日満支経済ブロックについてあらましを述べたが、日
満支経済ブロックを作り上げるには、我が国が中心となるので
あつて、我が国の後押がなければ、日満支経済ブロックも実現
せず、新東亜の建設と言ふ目的も達せられないのである。其処
で我が国は先に設けられた興亜院を初め、東亜研究所、日華経
済協議会、東亜農林協議会、日満支経済懇談会等を設けて、綜
合的な計画を立てることから、之を調整し、実行することは勿
論、資金関係から第三国との交渉や斡旋に至るまで、非常な努
力を払つてゐるのである。
 而も一方に於ては、戦は尚続けられてわるのであつて、漢口
は陥落し、蒋介石政権は一地方政権と堕しても、尚その背後に
はソヴイエト聯邦を初め、諸外国の影が動いてをり、之に対し
ては充分な用意が必要である。この用意に対して、万全を期す
ると共に、吾々は新東亜の建設に向つて、飽く迄も全力を挙げ、
挙国一致邁進しなけ灯ばならない。

                      (一月四日放送)