昭和十三年の輝く戦果

 長期建設に向づて、巨きな第一歩を印した昭和十三
年も暮れ、愈々事変第三年の新春を迎へるのであるが
今回は昭和十三年度に於ける、聖戦の跡を回顧して、
皇軍将士の勇戦奮闘を偲び、新しい東亜の建設に対する、
心構への一助としよう。
  昭和十二年十二月十三日に南京が陥落し、戦捷の裡に昭和十二年
 も暮れたが、昭和十三年に入ると、早くも一月十日、我が海軍陸戦
 隊は、一兵も損せずして青島を占領して、輝かしい軍艦旗挽を飜へし
 て山東の要衝青島を確保したのである。.
  越えて三月下旬、我が軍の一部は津浦線に沿つて南下し、四月三
 日には台児荘が陥落して、此処に徐州包囲の体制は成つた。
  次いで五月に入るや、徐州大包囲戦の戦機は漸く熟し、我が精鋭
 北上部隊は、五月五日の端午の佳節を卜して、一斉に進撃を開始し
 徐州会戦の幕が切つて落されたのである。

 先に南に於ては南京を失ひ、北に於ては黄河から北の地区を
失つた敵は、徐州を中心として隴海線一帯に四十数万の大軍を
集めて、防禦を固めると共に、徐州会戦の意義を強調し、列強
い向つて猛烈な戦捷のデマ宣伝を行つたのであるが、北、南、
西の三方から.破竹の勢ひで進撃した皇軍の前には一溜りもな
く潰滅し、五月十九日徐州は完全に我が手に帰した。
 かくて皇軍の戦史は、未曾有の戦果を収め、之によつて北支
那と中支那の連絡も完全に復し、従つて北京の中国臨時政府と
南京の中国維新政府の合流に、契機を与へたのである。
 一方海軍陸戦隊は、福建省の廈門を衝き、五月十一日に完全
に占領するに至つた。
  翌六月六日には、徐州の西方開封を占領したが、敵は我が軍の進
 撃を阻まうとして、黄河の堤防を破壊し、難民は十万人に及ぶと言
 ふ暴挙を敢てしたのである。真に憎んでも余りある非道振りと言は
 なければならない。
  次いで六月十一日には、我が陸海軍の漢口進攻作戦の開始が.堂
 堂と第三国に通告され、爾来安徽の諸領を初めとし潜山、馬頭鎮を
 抜き、湖口を占領し、揚子江を枢軸とする武漢三鎮の攻略戦が、俄
 にその鋭鋒をあらはしたのである。
  かくて陸海軍の緊密な連繋の下に、皇軍は七月二十六日早くも南
 京、漢口間に於ける、揚子江随一の要衝九江を占領した。
  一方満州国とソヴィエトの国境に於ては、七月十一日頃から皇軍
 とソヴイエト軍の間に、所謂張鼓峰事件なる衝突事件が起り、皇軍
 は慎重な態度を以て、ソヴィエト軍にあたつ[ママ]のである。而も皇軍一
 度起つや、一夜にして張鼓峰.沙草峰を占領し、八月十一日遂にソ
 ヴィエトをして、停戦に応ずるの已むなきに至らしめたのである。
  九月に入るや.我が揚子江遡江部隊は、十七日に武穴を陥れ、廿
 九日は田家鎮を占領し、翌十月八日には春を抜き、かくて漢口を
 目指して、一路目覚しい、進撃が続けられてゐた真最中突如十月十
 二日の未明、敵の意表を衝いて、皇軍は香港の東にあるバイアス沖
 に上陸し、更に破竹の進撃を似て、敵の心胆を寒からしめ、早くも
 二十一日には広東を攻略したのである。

 かくて南支那に於ける、抗日の最大拠点広東は、脆くも我が
手に帰し、広東の陥落は武漢三鎮の死守を豪語してゐた敵に、
痛烈な打撃を与へ、武漢三鎮の陥落を愈々早めたのである。
 南支那に於て、広東が陥落したその翌日、我が揚子江遡江部
隊の最前線は、団風水道を突破し、神速果敢な猛進撃を発揮し
十月二十七日遂に敵の心臓部武漢三鎮を完全に攻略したのであ
る。此処に国民が待望した、武漢攻略の輝かしい大業は成つて、
聖戦に一つの大きな紀元を劃したのである。
  然し皇軍は更に戦果を拡大して、敗敵を追つて南下進撃を続け、
 十一月十一日には、粤漢線の要衝である岳州を占領する至つた。
  以上で昭和十三年度に於ける.聖戦の跡を、あらまし辿つた訳で
 あるが、今や皇軍の占拠地域は.十一月未現在に於て、察哈爾、綏
 遠、河北、山東、山西、江蘇.安徽の全省と、湖南省の大部分と更
 に浙江、江西、広東の各省の一部に及び、その面積は約百五十一万
 五千平方粁に達し、我が国全土の二倍強に当り、支那本部の三割二
 分を占めてゐる。その人口は約一億七千万人で、支那本部の総人口
 の約四割を占めてゐるのである。
  又敵軍に与へた損害はどうかと言ふと、事変前の敵の総兵力は約
 二百万人であつたが現在でほ約九十万人と推測されてゐる。その火
 力装備に於ては、敵は我が武漢作戦に依つて、殆んど全滅してゐる
 と見られてゐる。

 占領地域に於ける治安状態に就ても、八月以来、我が匪賊掃
討戦も次第に效果を現はし、武漢作戦中にも拘らず、北支那方
面に於ては、数百回の匪賊掃討戦が繰り返へされ、中支那、南
支那に於ても、治安を維持することに非常に努力し、治安は日
一日に良くなつてゐるのである。

                   (十二月二十九日放送)