新しく生れた
内閣情報部

 二十五日から内閣の中に
内閣情報部といふ新しい役
所が設けられたことは、既
にニュースで放送された通
りである。この新しい内閣
情報部とはどんな役所で、又どんな仕事をする所か、今回は之
について簡単に解説を述べることにしよう。
 凡そ一国の政府が外交に国防に内政に凡ゆる部門に於て、正
しく力強い政策を樹てて、之を最も適切に実施して行くには、
どうしても内閣の中枢機関が国の内外に於ける、各般の情勢に
ついて正鵠(せいこう)誤りない而も綜合的な情報を十分持つてゐなければ
ならないことは勿論の事である。而して之等の情報について
は、十二の政府の各省が夫々の所管に応じて夫々の機能を発揮
してゐるのであるが、之を総合統一して世界の動きを正しく認
識して、国家の進路を正しく指し示すことは、極めて重大な国務
である。このやうに政府部内の情報の綜合統一を行ふことは、
内閣情報部の第一の職務である。又政府が国策を行ふに当つ
ては、宜しく国民と共に力を合せ、声を一にして朝野一体同心
となつてやるのが現代の政治である。従つて政府が行はうとす
る政策を正しく国民に伝へて十分な理解を求め、徹底をはかつ
て民意を暢達し正しい輿論を作興して官民共に行くの土台を築
くことが又極めて大切である。これが情報部の第二の職務であ
る。
 内閣情報部の職務は之を要約すると、以上の二つの点に帰着
するのであるが、然らばこのやうな職務はどんな組織で行はれ
てゐるであらうか。
 内閣情報部は内閣総理大臣に直属する内閣の一部局で、毎日
内閣情報部に勤務してゐるものは情報部長の外に情報官が約二
十名ある。この情報官は情報部に専属する書記官五名の外に、
各省から派遣された十数名の高等官が同じく情報官を命ぜら
れ、毎日内閣情報部に勤務してその職務に当つてゐるのであ
る。之等の職員の外更に委員と各省にゐる情報官がある。この
委員は各省の次官をはじめとして、特に情報、報道及び啓発宣
伝の事務に関係の深い、各省の局長、課長など四十五名が任命
され、内閣書記官長が委員長としてこれを主宰してゐるのであ
る。
 以上述べた通り内閣情報部は、政府の各官庁が常勤の高等官
許りでなく、次官以下幹部級の委員を出してゐるのであるか
ら本当に政府総掛りの役所と言へるのであつて、政府部内の全
智全能がこゝに集り、この力が総動員されて、上述の如き国家
重大の職務に当つてゐるのである。このやうな仕組みは今迄の
官庁には余り例のない所で、政府の情報、報道及び啓発宣伝事
務の綜合統一が如何に、重大な国務であるかを示してゐるので
ある。更に又内閣情報部の組織には大きな特徴がある。それは
民間に於けるその道の権威者十名が参与になつてゐて、その学
識と経験とを国家のために提供するやうになつてゐることであ
る。以上で大体内閣情報部の職務と組織について述べたのであ
るが、この役所は全然新しく設けられた役所ではないのであつ
て咋年の七月に設けられた情報委員会(政府発行の「週報」でよ
く知られてゐる)が今度拡大強化されて内閣情報部と言ふ新し
い看板を掲げ時局重大国務多端のこの際に、更に一段とその内
容を充実発展して、非常時打開のため大いに建設的貢献を期待
されて、新しい内閣情報部が設けられた次第である。

(九月二十五日放送)