北支の時局に
躍る宋哲元


 北支の時局線上に踊る最
も重要な人物は宋哲元であ
る。
 彼は現在、冀察政務委員
会委員長であると同時に、
第廿九軍の軍長でもある。冀察の冀は、河北省、察は察哈爾省の
別名であり、冀察政務委員会とは冀東を除く河北省と察吟爾省
と、北平、天津の政務処理のため一昨年十二月に設けられた政
務諮詢機関であつて彼はその委員長である。而してこの冀察政
務委員会なるものは北支の特殊性に即応し、日満支間の円満な
る疎通と共栄を計るために生れた組織である。
 彼は今年五十三歳、山東省楽陵に生れ長じて軍籍に入り、排
日抗日の巨頭馮玉祥の腹心の部下として多年その薫陶を受け
て居たが、昭和四年馮玉祥が蒋介石打倒の戦ひに敗れるや馮玉
祥の軍隊を整理して第三十七師(馮治安)第三十八師(張自忠)
及び劉汝明や、張人傑等を麾下に収める、暫編第二師を編制し
たのであつた。次いで昭和八年三月全軍を河北省に移しのち熱
河戦争に参加して日本軍と一戦を交へ、之を機会に勢力を増大
しその後察哈爾省にあつて抗日運動を継続して居たのであつ
た。昭和十年六月梅津、何應欽協定に基いて中央軍が河北省か
ら撤退した後、彼も察哈爾を追はれて河北に留まり、のち平津
衛戍司令となり次いで現在の重要任務に就いたのである。
 かやうに彼は抗日の波
に乗つて擡頭栄達した人
である為、今日の如き重
大な時期に於て、果して
時局収拾に任じ得るや否
や、将又帝国が、多年要
望し又北支民衆の待望す
る「北支明朗の新天地建設」に向つて如何に邁進するか。今後
の動向こそ最も注目を宰する所である。(七月二十二日放送)