一三 健忘性の国民   文学博士 建部遯吾

 我が国民は、誠実を忘るゝものなり。一時熱するも、忽にして冷す。所謂其の日暮しに終るの民か。
 夫れ政治に最も禁物なるは、其の日暮しに在り。吏僚、政治を知らず、党人、政治を解せざるは、其の日暮しの病弊、彼等の膏肓に入れるあればなり。
 国策といひ、国是といふ、これぞ政治の根柢なる。日本帝国の国是は、予が嘗て所謂党人連が『憲政擁護閥族打破』の絶叫に耽溺せし時代にありて、万斛の冷水を大将劈頭の国民の熱し且つ殆ど狂せる頭上に注ぐべく、天の一方より高唱せらるゝ警告として、聊か提唱を試みし所なり。今や時日は能く此の熱此の狂を冷却し、国民の頭脳をして其の常に復せしめ、朱をして朱に、紫をして紫に復らしむるを致せり。而して遺る所の問題は実に国策是れなり。国是是れなり。
 日本帝国の国是は、真の一等国たるに存す。真の一等国は強国なり、強国の外あ
るべからす。強国とは、自而に於て自国存立の究竟保障を有する国のことなり。自
国の存立、他国の恩恵に頼らず、他の数国の恩恵に頼らず、他の数国の間に於ける
葛藤紛争の為に僅に自国の存立を僥倖(けうかう)せす、強国の存立するや。必す自国のカに頼りて立ち、他国の如何は必しも之を問ふを要せざるの地歩を十分に占有す。
 強国たらんことを以て国是となし、国家社会経営の第一義ととなすの主義をば、名
づけて強国主義といふ。強国主義は主義として、炳として日星(じつせい)の如く、何人も之に
向ふて争ひ且つ反(そむ)くを容(ゆる)さず。而して強国主義を国策とするに於ける附帯事項の詮
議尋(つ)いで来(きた)る。
 今の人、政党内閣を高唱す、是れ極めて可なり。政党に三種あり、一は宗教的政
党といひ、二を形而上的----俗に所謂哲学的----政党といひ、三を実理的政党とい
ふ。

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 宗教的政党には専制首領あり、英雄神首領あり従つて首領崇拝あり、首領専制あ
り。宗教的政党には理性なく、打算なく、感情がるのみ、崇拝あるのみ、信仰ある
のみ。節制行はれ、統一容易なり。而して時代に残存すること難し。
 哲学的政党----形而上的政党は、稍進めるもの、其の真面目(しんめんもく)は批評的なり、破壊
的なり。哲学的政党は、議会に於て蛙鳴蝉噪(あめいせんさう)し、怒罵咆哮(どばはうかう)し、不信任案を決議する
を以て其の能事了れりとするを妨げす。是れ哲学的政党の任務は、批評的、破壊的
に存すればなり。
 実理的政党は、斯く批評と破壊とに耽溺するを腐しとせすして、舶姦ルと瞥
 じつりてきせい半フ      七んてき いさ首よ
で経給建設を以て能率と程L舵軒となす0
 けいりちけ・dゼつ もつ のうじ
今央れ薫内閣とは、何ぞや0薫のカを以て内観羞恥る意味せすや0欝
 い重 け√音ないかく   なん   せい育 ちからもつ ないかく のつと  いみ
   ひきう          せ_・モ‡かく つく   せい青  けんせつて▲言いたう
るは、引受くるを卦射せすや0政集内因を作るべき政集は、建設的改蕉ならぎるベ
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   けいり⊥ニ」きせい半フ        ひ・やうてきけ−いムケフ      はくわいてきけ】′h.・’
からす。符姶的政尭ならざるべからす。批評的政義なるペからすっ破顔的政賞なる
    ・・・きうてきトこいdう        ど、血 はうかうて与け−いtう      あ ヽノせんさ・フ
ベからすハ■研究的改質たらざるべからすC怒最嶋嘩的改煮たるべからす、蛙鳴蝉晩
てきけ−いtう
的政菜たるペからす。
 じ 七うないかく へうはう    けいりちぎ ゐん ぎくbい おく   けんせつけ.い甘 か ぎくbい おく
 改築内儀を標梯しっ1、経線議員を試合に造らす、姪設政治家を譲合に法らす、
ち めいけ∵∧1−うご ゐも  ど は はうかうぎ ゐん  ひ、やうぎ ゐん  弦くbい写 ゐん  虫く    とく▲く・・   せいたう  こくみ人
蛙鳴畔喋議員、忍渇喝埠議員、批評議員、破壊議員を送りて得々たる政寒、国民あ
 ・・くしやくいい そ こ  てつがく けいしじやうがく か}             こ けう
る同社曾・其虞には常挙−形而上学を講じて、邸剛ぶが紆ポのガ料a橿切込む散
じゆけ−んけ▼い いう  だいがく  てつがくぎくbい くに         しか  与P〜・−く
指先生を有する大挙あり、膏畢譲合ある囲には新郎ぷポ軒あり、而して強固たらん
   ▲す  がた
ことを期す、難いかな。
 くう与こ・   ろんり  ぐbんぎ   Jいじじやうじ γい  ふ つう     いl よ  こh もっ  せいしんくbつどう甘ん
 卒虚なる論理の玩戯は∵形而上時代に普通なb。今の世、之を以て精細活動の仝
・一′、,ソ  ニれ もつ くいつけい ∵こd、 いちじろ          べんこ し    ほ・−りつ
暗に充て、之を似て活計を螢むの著しきものを斬新割となし、粁護士となし、法律
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什立の史僚となすっ而して形式主義乃ち流行す。形式主義の人間を請合に透ること
おェ     首くり、. けいし亨丁く巾い       これ け∴・が  を盲      な.●     せい甘  けいLきせい首
多きやC試合は形式試合となる。之を政府に収むること多きや、政治は形式政治と
I健忘牲の組長