四、政治的文化闘争に於ける宗教
政治的文化闘争は時々宗教闘争として行はれ、教会が民族の政治闘争中に取り入れられる。宗教上の争は政治的意義を有する宗教闘争とは別のものである。或る民族の宗教心を破壊することは此の民族の文化的解消と自民族への同化を目的とする。かくの如き宗教闘争は自民族と少数民族が異つた宗教を奉じてゐる揚合に行はれる。例へばローマ旧教を奉ずるポーランド人の宗教闘争はギリシャ統一教を奉ずるウクライナ人及びスラブ正教を奉ずるロシア人に対して行はれる。かくてワルソーに在るロシア人の正教伽籃は土木監督局の命令で取り壊された。
政治的意義を有する未曾有の宗教圧迫はロシア及び赤色スペインに於ける反宗教宣伝及び教会破壊である。無神運動及び反宗教闘争は民族闘争の政治的手段であつて、国際的妥当性を有するかの如く見せかけてゐる所謂「世界観」の闘争手段ではない。
政治的権力を伸張する為に屡々宗教的手段が用ひられる。世界に於ける伝道事業が政治的権力拡張の為に利用されるのは周知の事実である。伊太利は一九二八年にヴァチカンと協定を結び、自ら世界教会の保護者を以て任じ、旧教を通じてパレスチナの聖地を獲得し、非旧教徒たる従つて聖地を所有する資格無き英国人を退去せしめんとの政治的意図を有してゐる。