昭和二十年
軍事の積極的なるものが漸次消極的に移りつゝ、最後の勝利が保証され、一般に希望を嘱したるに、二十年八月十五日、天皇親らのラヂオ放送にて、普く俄然楽観より悲観に転じ、万事終るの感なきを得ず。全国民を通じての極度の悲観は有史以来最高度と察せられ、一般に万事已むと感ぜられたるが、窮して通じ、絶望より希望の微光を見、其の漸次拡大すべきを感ぜしむ。同時代観は、筆者の生れし年に始めて現在の同時代に入り、稍々、絶望より起りて好望に移らんとし、明年より新たに文化への参照と題して起稿するを期す。
『同時代観』(完)