(八) 大正初期

(大正の初より欧州大戦の起るまで)

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 斯る間に我国民は、悲むべき一大事件に逢着せり、明治天皇の崩御之なり。 国を
挙げて悲哀に沈めり。 慈父を失へるが如く慟哭せり。 其悲痛の熱情迸発到る
所に目覩せられたり。 国民は今更の如く皇室の尊厳に思ひ及び、此民情を見たる
外人は今更の如く驚歎の目を瞠りぬ。 爰に