『國史概説』 1943
緒論
我が國體 国土 国民 国民性 文化 国史の時代区分
我が國體
大日本帝国は、万世一系の天皇が皇祖天照大神の神勅のまにまに永遠にこれを統治あらせられる。これ我が万古不易の國體である。而してこの大義に基づき、一大家族国家として億兆一心聖旨を奉体して克く忠孝の美徳を発揮す。これ即ち我が國體の精華である。
国史は各時代に於いて、常に推移変遷の諸相を呈するにも拘らず、それらを一貫して、肇國の精神を顕現してゐる。国史の神髄は、この精神によつて貫ぬかれたる大なる生命であり、国史の成跡は、國體を核心とする国家発展の姿である。かくの如くして、宏遠なる太古に肇まり、不易の國體を中心として、撓むことなき生命を創造発展せしめつゝある国家は、世界広しと雖も独り我が国あるのみである。
他の国にあつては、建国の精神は必ずしも明確ならず、而もそれは革命や衰亡によつて屡々中断消滅し、国家の生命は終焉して新たに異なる歴史が発生する。従つて建国の精神が、古今を通じて不変に継続するが如きことはない。即ち外国は個人の集団を以て国を形成し、君主は智・徳・武等を標準としてそれらの力の優れたるものが位につき、これを失へば位を逐はれることがあり、或は民衆が主権者となり、多数の力によつて政治が行はれる。而してその拠りどころとするこれらの力は極めて相対的であつて、消長汚隆や衝突を繰返すものであるから、人民をして屡々不幸なる渦中に投ぜしめる。かくて他の諸国は歴史を貫ぬく不動の永遠性を有せず、所謂革命の国柄を為してゐる。
我が国家はこれと異なる。天皇は皇祖皇宗を祭らせられ、これと御一体にあらせられて神ながらに御代治しめし、宏大無辺なる聖徳を具へさせられ、国土・国民の生成発展の本源にまします。国民は天皇の聖徳を仰ぎ、淳美なる良俗に啓培せられ、神皇一体・君民一致の国家を形成してゐる。不動の國體を基幹とし、日に新たなを創造が展開されるのであつて、革命はあり得ない。国家の進展が特に顕著なるときには所謂維新の鴻業が行はれるが、それは同時に復古であり、従つて復古的維新ともいふべきものであつて、國體を特に著しく発揚せしめる政治改革である。
国史は國體を基底とするが故に、各時代の諸事実の中には、時にこれに副はない事件が起り、稀には乱臣賊子といはれる者が出たことがあつても、これらは結局に於いて根本に存する大義によつて克服せられるかである。
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